非常に厳しい買収監査。心折れた売手社長が選んだ選択は?

非常に厳しい買収監査。心折れた売手社長が選んだ選択は?

昨今少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者不足などが大きな経営課題のひとつとなっています。承継する人がいない場合は廃業するしかないと考える経営者もいます。CBCラジオ『北野誠のズバリ』のコーナー「カイシャのシュウカツ」では、事業承継について、専門家をゲストに多方面から学んでいます。6月26日の放送では、東北にあるインテリア企画販売会社の承継事例を北野誠と松岡亜矢子が、三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援・はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。

承継の理由は「自分の能力は限界」

今回藤原さんが紹介したのは、東北のインテリア企画販売会社の事例。

藤原「年商は7億円、資本金は3,000万円、従業員は16名。社長さんは30代で起業しました」

関東の大手不動産会社を主要取引先として、新築マンション購入者に対してインテリアの提案販売を行っていました。
年商7億円なので経営は順調のよう。なのに「なぜM&Aをしたの?」と疑問を持つ北野。

藤原「事業は順調に拡大して従業員も増えましたが、社長は『自分の実力は限界だ』ということで、大手企業の傘下にはいって内部を強化したいとのこと」

そしてもう一つ社長には「セカンドライフも謳歌したい」との思いもあったそうです。
ちなみに、後継者はいなかったのでしょうか?

藤原「お子さんが3人いらっしゃったんですが、誰か1人を選ぶと不公平が生じて、後々揉めてしまうと」

北野「拗ねたりしますからね。揉める元になる」

そんな社長の判断から親族内承継はしないことになりました。

200以上の質問や面談が必要

どのような流れでM&Aを進めたのでしょうか?

業績もよかったので、手を挙げたのは3社。各社の特徴を次のように説明する藤原さん。

1社目は、M&Aで会社を成長させたいと意欲旺盛な社長で、良い条件を提示しそうな感じ。
2社目は、上場企業でインテリア業界では有名な会社。 
3社目は、若手社長なのですが、わりと慎重派でM&A後も売り手の社長に5年間残ってほしいと要望。

北野「売り手の社長さん、大手の傘下に入りたかったんですよね?だから(2社目の)上場企業?」

藤原「はい。上場企業を優先的に交渉したいと話は後半まで進んでいた」

ところが、最終段階でストップがかかりました。

M&Aでは、買い手が売り手を調査する「買収監査」というプロセスがあるそうです。
そして、今回の覚えてほしいポイントはココだと藤原さん。 

上場企業による買収監査はとても細かくて、法務面、会計・財務面の質問項目が、なんと200問以上あります。その他にも、経営者への面談などもあります。

北野「むっちゃ大変や。でも、上場企業はのちにかぶる損害とかもあるよね。なぜその会社を買ったんだとか財務調整やったのかとか…弁護士さんもついて法務的なものも整えなくちゃね」

捨てる神あれば拾う神あり?

その後、どのような結果になったのでしょう?

藤原「2週間後に、まさかの『見送り』と」

見送りの理由の詳細は語られませんでしたが、監査の結果、管理体制が上場企業の基準に満たないというのが大きな要因でした。売り手のビジネスが魅力的でも管理体制の問題でこのような結果になる場合もあるそうです。

藤原「最終監査まで進んでいて、またゼロからっていうと、社長もくじけちゃって…」

北野「心折れる!最終監査まで半年かかって、最終面談までいっているのに。就活の若いころ思い出すわ」

売り手社長は心身ともに疲弊してしまって、M&Aを中断したそうです。
その後、売り手の社長はどうしたのでしょうか?

藤原「数ヶ月後に(M&Aを再開して)3社目の若手社長と面談を実現すると、上場企業ほど厳しくなかった」

さらに3社目の要望は「社長として、承継後5年間残ってほしい」だったのですが、交渉の結果、残るのは半年間ということで合意したとのこと。

売り手社長は半年間の引継ぎを経て、⻑期旅行など第二の人生を謳歌中だそうです。
(野村)
 

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