「早く投げてや」祖母の思いに応えられるか!?ウエスタンリーグ9勝 竜希望の星・松木平優太
【ドラゴンズを愛して半世紀!竹内茂喜の『野球のドテ煮』】CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日12時54分から東海エリアで生放送)
ありがとうミッキー!
「終わり良ければすべて良し」という言葉があるが、6月最後の試合、30日のベイスターズ戦でなんとか勝利を収めた(この言い方が正しい)ドラゴンズ。いやあ本当に良かったというか、ほっとした。それまで10試合連続2得点以下という相も変わらない貧打ぶり。3連敗を喫し、借金は今季ワーストの7まで膨れ上がっていただけに、今シーズンもこれまでかという危機を田中幹也選手がよく打ってくれた!助けてくれた!ありがとうミッキー!
7月は借金返済月間と名付け、まずスタートとなるジャイアンツ地方球場2連戦をスカっと連勝し、週末首位カープを地元バンテリンドームに迎え、おいしい鯉料理を頂きたいものだ。
さて今週のサンドラは、育成ドラフト指名されてから4年、今では2軍で無双状態のピッチングを繰り広げている松木平優太投手の特集。支配下選手登録期限まであと1か月。そして残す枠はあとひとつ!今、一番輝きを見せる若竜右腕の偽らざる心境を聞いた。
最後の椅子は誰にも譲らない
2020年育成ドラフト3位指名されてから2024年で4年目のシーズンを迎えた松木平優太投手。残りひとつとなった支配下登録の枠を勝ち取るべく、6月30日現在、ウエスタン、イースタン両リーグトップとなる9勝をマークするなど、ファームで圧倒的なピッチングを見せている。ただ松木平投手は現状にまったく満足していない。逆に焦る気持ちをなんとか抑えては次の登板に向け、調整しているようにも見える。
松木平投手「もう崖っぷちなので、必ず支配下登録を勝ち取りたい思いは誰よりもあります。4年目になったので、一日一日無駄にしたくないです」
祖母に恩返しをしたい
“世界中に「松木平」という珍しい名前を知らせたいです”
入団会見で口にしたこの言葉を今でも印象に残っているファンは多いことだろう。
世界中にとは、将来の目標はメジャーリーグなのかと考えてしまうのが一般的だ。しかし松木平投手の思いは違った。両親がいない子供たちの希望の星になりたい一心に、その言葉を選んだ。
インドネシア人の父と日本人の母の間に生まれた松木平投手。2歳の時に両親が離婚。ひとつ上の姉とともに母の実家で祖父母と暮らした。小学2年の時、松木平投手に悲劇が襲った。
母親の死。
何をしても許してくれては遊んでくれた。今でも優しかった思い出しか残っていないと語る。
そして追い打ちをかけるように、高校時代には祖父も事故で他界。悲しみにくれる松木平投手を支えたのは祖母だった。
松木平投手「おばあちゃんひとりで僕とお姉ちゃんを支えてもらったので、一番恩返しをしたいですね」
現在、老人ホームに入所しながら松木平投手の支配下選手登録を一日千秋の思いで待ち続ける祖母。なかなか会えることもできない中、電話をかけるたびに祖母が口にするのは“早く投げてや”の言葉。そんな祖母の思いに応えるためにも残るひと枠となった支配下選手登録は死に物狂いで奪い取る気持ちでいっぱいだ。
落合コーチと取り組んだ反復練習
悲願の支配下登録へ。
4年目となった今シーズン、松木平投手は躍動した。開幕から2軍で先発ローテーションを守り続け、自身初となる初完封勝利も記録している。その裏には落合2軍投手兼育成コーチと取り組んだ基本動作の反復練習があった。その結果、安定性が増し、無駄のないフォームを身に着けることができた。
落合コーチ「とにかく数をこなして、勝手に体が動くくらいまでやらせています。相当キツイことを松木平に関しては(練習を)やりながら、試合にも出ているので、本当にここまで頑張っているなと。これを1年間しっかりやって身に付けば大丈夫かなと思っています」
そしてドラフト同期で同学年、高橋宏斗投手(※「高」は「はしごだか」)の存在からもおおいに刺激を受けている。
松木平投手「今は雲の上のような存在。ずっと良い状態をキープして成績を残しているのですごいなと思います」
だが負けず嫌いの顔を見せる。
松木平投手「すごいなで終わったら、僕も負けてばかり。“必ず宏斗を超える”っていう意味でも良いライバルだなと思います」
ライバルだと口にした同級生。しかしプライベートではサウナや食事に出かけている大の仲良しである2人。笑いが絶えない会話にリラックスさせてもらっていると松木平投手は話す。高橋投手も松木平投手のハードワークぶりには一目置いているようだ。
高橋投手「たぶんドラゴンズの中でも1、2を争うような練習量をこなしています。決めたことは必ずやり抜く、そういうやつだと思っています。1軍の舞台でお互いが活躍できるようにしたいですね」
今に見とけよ
登録期限は7月末。松木平投手の人生をかけたひと月が始まった。
松木平投手「期限が残り少ないので、諦めずに最後まで全力でやって、この好調を切らさずに良い結果を出し続けて支配下登録を勝ち取りたいなと思います」
最後に本音を口にした松木平投手。好投を続け、結果を残しても他の選手に先を越された支配下登録。それは痛いほど共感できる言葉だった。
松木平投手「結果を出し続けていて、正直悔しい思いしかなくて。必ずここで投げたら抑えることができる強い気持ちもあります。“今に見とけよ”っていう感じです」
それは誰よりも活躍を願う祖母のために。そして天国から応援してくれる母親と祖父のために。思いよ届け!と言わんばかりに固い決意を口にした。松木平という名を世界中に轟かせるために、これからも右腕を振り続ける。
吉報よ、届け!松木平!
がんばれドラゴンズ!
燃えよドラゴンズ!
竹内 茂喜