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立浪竜の初陣を東京ドームで目撃!長嶋茂雄さんとの因縁そして今季への希望

立浪竜の初陣を東京ドームで目撃!長嶋茂雄さんとの因縁そして今季への希望

東京ドーム近くの桜は少しずつ開き始めていた。JR水道橋駅から球場へ歩きながら、胸の高まりを抑えきれない。2022年3月25日。立浪和義新監督率いる、新生・中日ドラゴンズは初陣を迎えた。そして、その初舞台を目撃しようと歩みを早める。

竜ナインにファンも勢いづく

東京ドーム(C)CBCテレビ

レフトスタンドに近い3塁側内野席に着いた時、ちょうどドラゴンズナインがグラウンドでウォーミングアップ中だった。真っ先に目についたのは入団3年目の2人、背番号「60」の岡林勇希選手、次に背番号「2」の石川昂弥選手。特に岡林選手は直前に右手指を傷めただけに、出場が心配だったが大丈夫そうだ。敵地での開幕戦、でも、立浪監督の初陣としては、それが相応しいように思った。相手が宿敵・讀賣ジャイアンツだからである。このアウェーの逆風の中から、竜は力強く一歩を踏み出すのだ。グラウンドに下りて行って、ひとりひとりの選手を激励したいほどに思いは募る。練習後に3塁ベンチ前で円陣が組まれた。「おー!」という掛け声は外野席まで届くほどの勢いだった。

ミスタージャイアンツとの因縁

開幕セレモニーに続き、もう一つのセレモニーが用意されていた。2021年11月に文化勲章を受章した長嶋茂雄さんの祝賀セレモニーである。ジャイアンツ終身名誉監督の長嶋さん。この春から、国内スタジアムで最大規模となる横幅125メートル余りの大型ビジョンに、長嶋さんの選手そして監督時代の歩みが映し出さる。1974年(昭和49年)の感動の引退試合、1994年の同率最終戦で優勝を決めた「10・8決戦」、メークドラマという流行語を生んだ1996年の大逆転優勝、そして最終回に4点差を逆転しての2000年の優勝、実はその相手チームはすべてがドラゴンズだった。セレモニーの最後に、ドラゴンズを代表して花束を贈ったのは立浪監督だった。「10・8決戦」激闘の主役のひとり。新監督として長嶋さんと向かい合う立浪さんの姿がファンとして感慨深い。

岡林の躍動と福留の沈黙

「サンデードラゴンズ」より岡林勇希選手(C)CBCテレビ

さて、ゲームである。いきなり躍動したのは“立浪野球の申し子”とも言える岡林選手。
20歳になったばかりの若竜が2打席目でライト前タイムリーを打って、立浪ドラゴンズ初の得点をたたき出した。岡林選手はこの試合3安打の大活躍だった。一方でブレーキになったのは、3番に入った大ベテランの福留孝介選手だった。ファンとしてこれまで幾度、その開幕スタメン姿を見てきたことだろう。44歳10か月、開幕戦史上の最年長スタメン記録を塗り替えた。福留選手の契約更改の際、立浪監督は起用についてこう語っていた。
「外野で出てもらいたいのはあるけれど、チームは変わらないといけない。代打の切り札として使う」
その弁を覆してのスタメン起用には、立浪監督なりの思慮があったはずだ。岡林選手のヒ
ットの直後の2三振を含め4打数凡退だった福留選手。しかし、立浪采配の思惑もいずれ
実ると信じている。

立浪采配の“勝負勘”に満足

「サンデードラゴンズ」より鵜飼航丞選手(C)CBCテレビ

その立浪采配が一気に“開花”したのは、2点リードされた8回表の攻撃だった。2死1、3塁で8番の京田陽太選手に代打・山下斐紹(あやつぐ)選手を指名。相手が左投手にチェンジすると、すかさずドラフト2位のルーキー、右の大砲候補である鵜飼航丞(こうすけ)選手を“代打の代打”に起用した。選手会長である京田選手への代打起用は、3戦目でも見られたが、この積極的な采配は、前シーズンまではほとんど見られなかったものだ。鵜飼選手はライトフライで無得点に終わったが、勝負への執念と“勝負どころ”と見れば一気に動く采配は、これからのシーズンで力強く開花するはずである。観戦した開幕戦では、残念ながら初陣を飾ることはできなかった。しかし、試合後に東京駅に向かうJR車内、たまたま向かい側に座っていたドラゴンズブルーのユニホーム姿の4人は、いずれも敗戦には不似合いの、どこか満足した表情を浮かべていた。おそらく、自分自身もそんな顔をしていたのだろう。手応え十分の開幕戦だった。

続く2戦目は、先発の勝野昌慶投手の劇的なホームランもあって「勝った」と思ったら、まさかの逆転負け。そして3戦目、今度は柳裕也投手が初回に4点を失い「3連敗」を覚悟したら延長での逆転勝ち。東京ドームの初陣3連戦で、ワクワクする立浪野球の醍醐味を感じたドラゴンズファンは多かったはずだ。舞台は本拠地バンテリンドームへ。名古屋の街の桜もいよいよ本格的に開き始めた。ひと足早く、ドームで満開の“竜桜”に酔いしれたい。
                                   
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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