さあ初陣!立浪ドラゴンズの戦闘態勢を検証~それでも足りない“課題”とは?
これほど待ち遠しいシーズン開幕も久しぶりである。13年ぶりに竜のユニホームに身を包んだ立浪和義監督率いる中日ドラゴンズ。就任以来、ファンのワクワク感が高まりつつある中、いよいよ“立浪野球”がベールを脱ぐ。開幕直前のチームを検証する。
先発陣は力強く揃った!
毎年恒例の球団『ファンブック2022』、立浪監督の巻頭インタビューに続く記事は、大野雄大投手と柳裕也投手の対談である。ドラゴンズが誇る左右の両輪である。この2人を筆頭に、12球団でもトップクラスと言える投手陣は、おおむね順調な仕上がりと見る。2021年シーズンで初の規定投球回数を投げた小笠原慎之介投手が続き、期待の2年目、オープン戦の最後に11奪三振と圧巻のピッチングを見せた高橋宏斗投手のデビューも注目である。勝野昌慶投手と松葉貴大投手に加え、これまでリリーフだった岡田俊哉投手や鈴木博志投手らが先発へ配置転換、先発陣は顔ぶれが揃った。
新「勝利の方程式」も確立
この2年間コロナ禍で影響を受けた延長戦も、従来の「12回まで」が復活。継投できる投手をいかに数多く持っているかがポイントとなる。背番号も「29」に替わって進境著しいジャリエル・ロドリゲス投手を先発から中継ぎに回すことによって、福岡ソフトバンクホークスから又吉克樹投手に替わってやって来た岩崎翔投手、そして“守護神”ライデル・マルティネス投手、この3人で、7回、8回、そして9回を締めるリレー“勝利の方程式”が確立したことは大きい。肩の不調から出遅れた祖父江大輔投手もいずれ戻ってくる。あとはそれぞれの投手が、期待通り働いてくれることだけである。ただひとつ、梅津晃大投手が肘の手術を受けて、しばらく投げられなくなったことだけは残念。背番号が「18」に替わってから活躍できていないことは本人が最も無念であろう。しっかり治した上での復活を期待したい。
打線には“新しい風”が吹く
「打てない」が代名詞になっている昨今のドラゴンズ打線。チーム打率はリーグ最下位、
ホームラン数と得点はリーグ最下位どころか12球団最下位だった2021年シーズン。
「チームは変わらないといけない。スタメンには新しい顔を使う」
こう明言している立浪監督。オープン戦でも1番に座って結果を出した岡林勇希選手、将来の主砲として春季キャンプでも大きな注目を集めてきた石川昂弥選手、この2人に加え、ドラフト2位のルーキー鵜飼航丞(こうすけ)選手のスタメン出場もあるだろう。ファンが待ち続けた“新しい風”が打線にも吹くシーズンになる。
川上憲伸さんの注目とは?
ドラゴンズ応援ムック本『DRAGONSぴあ2022』(ぴあ株式会社・全国発売中)で、かつてのエース、OBで野球評論家の川上憲伸さんと対談した。本に掲載されなかった会話の中で、川上さんはこんなことを語ってくれた。
「立浪監督はもともと二遊間の人。セカンドに誰を入れるのか、これに注目している」
そのセカンドには高橋周平選手が想定された。サードを石川昂弥選手に譲ってのコンバートなのだが、立浪監督の真意は同時に「セカンドありき」だったのかもしれない。残念ながら、直前のコンディション不良で高橋選手は開幕戦には欠場するが、キャンプからめざしてきたセンターラインの確立に向けて、早期の復帰を待ちたい。もちろん競争、代わりの選手らには大きなチャンスである。
欲しい!強打の“4番打者”
オープン戦は7勝8敗2分、残念ながら2012年以来10年ぶりの勝ち越しにはあと一歩及ばなかったが、シーズン青写真を見据えた戦いだった。しかし、いよいよ開幕に向かうチーム全体を見渡した時、やはり足りないと思うひとコマがある。それは「4番打者」、ホームランの打てる大砲。ドラゴンズで7年目を迎えるビシエド選手だが、2018年に首位打者を取ったように、実は“巧打のアベレージバッター”なのである。「4番」に座ると、つい一発を期待したくなるが、ビシエド選手を3番や5番に起用できるような、代わりの4番打者がほしい。「現有戦力の底上げで戦う」立浪新監督の気概には十分期待したいが、この課題は2022年シーズン、ずっと続くような予感がする。ビシエド選手の打撃が他球団に恐怖を抱かせるか。または石川昂弥選手が大活躍して覚醒してくれるか。この予感が杞憂に終わることを願いたい。
新庄剛志BIGBOSSの登場でプロ野球にも新たな時代の訪れを感じる春。「ミスター・ドラゴンズ」立浪和義の采配によって、球団創設86周年を迎えた竜の長い歴史に新たなページを刻むことだろう。思いきりのワクワク感、そして温かい目で、その初陣を見守りたい。
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。