「サード石川昂弥」起用で深層が見えた!立浪竜のセンターラインついに確立へ
立浪和義新監督が率いる新生・中日ドラゴンズのペナントレース開幕へ向けての戦いが続く。若い選手たちがスタメンに起用されて躍動する姿に、多くの竜党はワクワクする春を迎えているが、新チームの象徴はやはり「サード石川昂弥」だろう。
星野監督「立浪を使いたいから」
前年までサードのレギュラーだった高橋周平選手をセカンドにコンバートして、3年目を迎えた石川選手を高校時代から慣れ親しんだ3塁にスタメン起用した立浪監督。誰もが思い出すのは、その立浪監督自身の選手1年目、1988年シーズンである。ドラフト1位でPL学園高校から立浪“選手”が入団すると、当時の星野仙一監督は宇野勝選手をショートからセカンドに異動させて、この高卒ルーキーを開幕スタメンのショートに抜擢した。宇野選手は前年130試合すべてに出場して、ホームラン30本を打ち、ショートのベストナインにも選ばれていた。その選手をコンバートしてまで空けた遊撃のポジション、理由は「立浪を使いたいから」だった。
「サード石川昂」で開幕か?
2022年シーズンに向けての石川選手のサード起用と高橋周選手のセカンドコンバートは、細かい事情など違いはあるものの、かつての星野采配を彷彿させる。当時も、そして現在も、竜の指揮官には「低迷するチームを変えなければならない」という使命感が垣間見られる。石川選手も沖縄での春季キャンプを1軍で“完走”、朝から夕方までよくバットを振り、よく守備練習に打ち込んだ。キャンプ打ち上げ直後にアグレスタジアム北谷で放った特大ホームランの後も、オープン戦でコンスタントに打ち続けている。このままいけば、開幕戦の東京ドームでは「サード石川昂弥」の先発スタメンが実現しそうだ。
竜のセンターライン完成
実は、ここからが本題である。センターラインに話を転じたい。「キャッチャー・セカンド・ショート・センター」この4人の“センターライン”は野球の中枢と位置づけられる。過去の強豪チームは、このラインがきちんと整備されていたことが多い。ドラゴンズにおいても、星野仙一監督は宇野選手をセカンドに回して「中村武志・宇野勝・立浪和義・彦野利勝」というセンターラインを築いた。黄金時代を築いた落合博満監督の初年度2004年は「谷繁元信・荒木雅博・井端弘和・アレックスオチョア」、ドラゴンズ球団史で最強とも言われる2006年は「谷繁元信・荒木雅博・井端弘和・福留孝介」だった。そして、2022年シーズン、立浪監督は「セカンド高橋周」を決断、それによって「木下拓哉・高橋周平・京田陽太・大島洋平」という“安定した”センターラインができ上るのである。
若竜が活躍するためには?
立浪新監督は「チームを変えるために若手を起用する」と明言している。実際オープン戦では、石川選手に加えて、同じ3年目の岡林勇希選手、ドラフト2位ルーキー鵜飼航丞(こうすけ)選手も連日スタメンで起用され続けている。勝負の4年目、根尾昂選手も虎視眈々と外野のポジションを狙う。しかし、これまで実績を残していない若竜たちが羽ばたくためには、逆に既存のレギュラー陣がしっかりとチームを支えることが条件になる。センターラインに入る木下・高橋周・京田・大島に加えて、ファーストを守るダヤン・ビシエド、この5人の選手こそが、ドラゴンズが立浪新監督の下で生まれ変わるための重要なキーマンなのだ。谷繁捕手の引退後、長きにわたって課題だった“竜のセンターライン”が、「サード石川昂弥」という英断によって、どうやら解決しそうな“春の予感”である。
強いチームは、ベテラン中堅と若手、その双方が切磋琢磨して刺激を与え合う。1軍も2軍もそして育成も、選手が一丸となってペナントをめざす。ここまでの立浪采配は、ここしばらくドラゴンズになかった、そんな胎動を感じる。だからこそ、私たちファンも胸をときめかせて、近づく開幕を待ち望んでいる。
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。