なぜ山にむき出しの遺骨が?許可のない「自然葬」に住民が憤り “森のお墓”の実態に迫る

2024年7月9日(火)放送
なぜ山にむき出しの遺骨が?許可のない「自然葬」に住民が憤り “森のお墓”の実態に迫る CBCテレビ:画像『チャント!』

墓石ではなく、木を目印に遺骨を土に埋める樹木葬などの「自然葬」に関心が高まっています。しかし、付近住民とのトラブルの原因になることも。自然葬の現状について取材します。

「勝手に遺骨なんか置いてもらったら困る」 トラブルの火種は「自然葬」

CBCテレビ:画像 『チャント!』

町内の90%を山林が占める三重県南部の大台町。自然葬によるトラブルは、川に沿って走る道路脇の斜面で起きていました。トラブルの火種は、木の根元に置かれた桶のようなもの。表面にむき出しになっているのは、火葬された“人の遺骨”です。

(地元住民)
「勝手に遺骨なんか置いてもらったら困る」「墓地の許可がない」

木の幹には、手書きの筆文字で人の名前があちこちに。合わせて12人が眠っているといいますが、実はこの場所は、墓地としての許可や届け出がないとのこと。問題が明らかになったのは、2023年12月の町議会でした。

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(大台町 町民福祉課課長(当時))
「町としては、取り扱い要領にのっとった正式な手続きをふんで、墓地としての許可をとるよう促していきたいと考えている」

法律(墓地埋葬法)では、遺骨を埋葬できるのは墓地に限定され、墓地経営には自治体の許可が必要と定められています。

自治体からの許可を得てオープンの樹木葬専用墓地には50件の申し込み

CBCテレビ:画像 『チャント!』

管理や維持のしやすさなどから、“樹木葬”をはじめ、「自然葬」への関心は高まっています。2024年3月、三重県熊野市には、大規模な樹木葬専用の墓地「GOSHIKI」がオープンしました。こちらは熊野市から墓地の経営許可を正式に取得しています。

(GOSHIKI・大塚武志さん)
「しがらみの少ない形で、安心してずっと預けていただけるというコンセプト。今、樹木葬という形が求められている」

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高台にあり、熊野灘が見渡せるこの墓地には、すでに50件の申し込みがあったといいます。しかし、熊野市から経営に関する許可を得るまでには、約2年かかったそうです。

(GOSHIKI・大塚武志さん)
「間違いがあったら困るので、司法書士、行政書士、弁護士などに自治体と交渉してもらった。かなり大変でした」

森のお墓でも「墓地には当たらない」 山の持ち主に取材

CBCテレビ:画像 『チャント!』

骨を自然に還す葬り方でも、慎重に進められる墓地の開設。なぜ、大台町の山では、遺骨が置かれるようになったのでしょうか。

山には樹木葬についての説明と思われる立て看板があり、そこには宗教法人の名前が記されています。登記簿などで確認したところ、山を所有し、管理しているのは「自然宗佛國寺」という宗教法人と判明。法人の代表を務める黙雷住職に取材を申し込みました。

2006年、住職は木材を使ったバイオマス発電などの事業を始めるために、過疎化が進むこの地域の山を購入。遺骨の受け入れは、事業費の一部をまかなうために始めたもので、永代供養なら1人21万円だといいます。

CBCテレビ:画像 『チャント!』

(自然宗佛國寺・黙雷住職)
「遺骨の下に土があって、自然に還る」

自然葬だという遺骨は、上から土をかぶせておらず、「埋められた」状態ではありません。住職は「森のお墓」と銘打って遺骨を受け入れていますが、「墓地にはあたらない」と強調します。

(自然宗佛國寺・黙雷住職)
「(墓地としての認識は)ないです。墓地埋葬法には、ひっかからない。申請は必要ないと三重県に言われた」

CBCテレビ:画像 『チャント!』

住職は、三重県の担当者(当時)から「遺骨が地表にみえている状態は“埋葬”ではなく、法律が禁止していない“散骨”にあたり、私有地に散骨をしているという解釈をすれば、墓地として許可申請の必要がない」と言われたと主張しています。

(自然宗佛國寺・黙雷住職)
「悪者扱いされている。裁判沙汰にするなら、受けて立つ」

三重県に確認すると、「20年近く前のことで、記録も残っていないため、そのようなやりとりがあったかの確認がとれない」といいます。

厚生労働省では、あくまでも一般論としながらも、「遺骨が土に埋まっていなければ墓地ではない」との見解でした。つまり、熊野市の施設は、遺骨を埋めているから墓地。一方、大台町の山は、埋めていないから墓地ではないと解釈できます。

散骨だとしても「ルールが必要」 条例制定を訴える声も

CBCテレビ:画像 『チャント!』

住職の主張に、大台町は苦慮しています。現在、墓地の経営に関する許可の権限は、三重県から委譲されています。2023年の町議会では、墓地としての申請を出すように求めていくとしていましたが、県に判断を委ねたいという意見も。

(大台町・大森正信町長)
「相手方との話し合いは続けて行く必要がありますが、三重県が(権限を)受け取ると言ってくれたら、それが一番かなと思います」

地表に遺骨が置かれた状態が、埋葬ではなく散骨だとしても「ルールが必要」と、条例制定を訴える町議会議員もいます。

(大台町議会・元坂正人議員)
「早いこと条例でも作って。町の幹部もそうですけど、他人事みたいなことを言わんと、しっかりとやってほしい」

静かな山の中で眠りについたはずの故人にとっても、安らかとは言えない状況が続いています。

CBCテレビ「チャント!」7月9日放送より

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