パリ五輪まもなく!世界が注目「セーヌ川」開会式の粋な演出と残される課題

パリ五輪まもなく!世界が注目「セーヌ川」開会式の粋な演出と残される課題 CBCテレビ:画像『写真AC』より「セーヌ川とエッフェル塔」

「ミラボー橋の下、セーヌは流れ、僕たちの恋も流れる」。
フランスの詩人であるギョーム・アポリネールによって、情感たっぷりに謳われたセーヌ川が、五輪の開会式会場になる。2024年7月、パリ五輪が近づいてきた。フランス革命記念日の7月14日から、いよいよパリでの聖火リレーが始まった。

100年ぶりの開催

フランスのパリでのオリンピック大会開催は3度目になる。前回は1924年(大正13年)だったので、ちょうど100年、実に1世紀ぶりの開催だ。7月26日に開幕し、8月11日までの17日間、パリを始めフランス各地で32の競技329種目が予定され、アスリートたちが真夏の戦いに挑む。世界中に感染が拡大した新型コロナウイルスの影響で、2021年の東京五輪は無観客だった。今回は2大会ぶりに、観客を入れての“全面開催”となる。

パリの歩みを辿る

パリという町の歴史。紀元前300年頃、ケルト人のパリシイ族が、ヨーロッパ大陸にあったシテ島に住むようになった。このシテ島は周囲を川に囲まれていて、移動するのに便利だったこともあり、町は栄えていった。その後、カエサル率いるローマ軍によって征服され、道路が作られ、水道が引かれ、町は都市へと発展していった。パリシイ族が暮らしたこの町は、やがて「パリ」と呼ばれるようになった。そこを流れていた川こそが「セーヌ川」である。

開会式会場はセーヌ川

CBCテレビ:画像『写真AC』より「パリの風景 セーヌ川」

そのセーヌ川が、大会では大きな注目を集める。開会式の会場となるからだ。東京五輪が新しく作られた国立競技場で行われたように、過去の大会での開会式はスタジアムで行われてきた。しかし、今回のパリ五輪の開会式会場は、セーヌ川。大会のスローガンである「Games Wide Open(広く開かれた大会)」、まさにそれを象徴する式典となる。発表によると、選手たちは100隻以上の船に乗って、セーヌ川およそ6キロを航行する。入場“行進”ではない、入場“航行”である。その後、エッフェル塔近くでのセレモニーにのぞむ。セーヌ河岸や数々の橋の上から、一般市民も無料で水上パレードを見ることができる。とにかく粋でセンスもあるフランスという大国がどんな開会式を披露するのか、世界中の人が注目している。

テロへの厳戒態勢

しかし、この開かれた水上開会式で、大きな課題となるのがテロに対する警備問題である。米国では前大統領のトランプ氏が銃撃される事件があった。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとパレスチナの衝突など中東情勢、世界には不穏な緊張が続いている。パリ警視庁は、過激派組織「イスラム国(IS)」や、テロ組織「アルカイダ」などによるテロへの警戒を強めている。セーヌ川の開会式パレードも、当初は観客60万人想定だったが、それを半分の30万人にした。当日は、4万人を超える警察官や兵士を投入して、厳戒態勢を取る。

観光名所も競技会場に

CBCテレビ:画像『写真AC』より「競技会場のひとつ、ベルサイユ宮殿」

今回のパリ五輪は、新たな競技場ではなく、既存の施設を競技の会場として有効活用する。エッフェル塔やコンコルド広場など、多くの人が訪れる観光名所も、熱戦の舞台となる。警備は、もちろん開会式だけでなく、期間中は連日5000人もの兵士が、パリ市内に常駐するという。そして、市民には、大会期間中、夏のバカンスや、コロナ禍で導入したリモートワークを活用するなど、パリを離れるよう呼びかけもされている。パリはいつもの夏とは違った姿を見せることになる。

セーヌ川の水質問題は深刻

セーヌ川で課題になっているのは、開会式の警備問題だけではない。水質の問題は深刻だ。かつては泳ぐことができたが、下水道施設がなかなか整備されず、雨が降ると大量の汚水が流れ込んだ。20世紀初めからは、ついに遊泳禁止になった。今回の大会で、セーヌ川はトライアスロン競技の会場などとして使われる。6月に1週間行われた事前の水質検査でも、大腸菌の濃度が基準値を上回り続けた。大会期間中に大雨が降ると、その汚染が進む可能性もある。

猛暑の中での大会

さらに、猛烈な暑さという問題もある。2023年は“世界で最も暑い夏”と言われた。地球温暖化の中、その暑さが1年だけで収まるとは思えない。大会期間中は、1年でも最も暑さがきびしい時期である。2019年の夏には、パリで気温42度が観測された。東京五輪の際も、参加選手や観客を暑さから守るため、マラソンなどの会場を東京から、北海道の札幌に移す対応が取られた。猛暑の中での大会、対策も必要である。

フランスでは、先に行われた国民議会(下院)の決選投票で、マクロン大統領の与党連合など、どの勢力も単独過半数に達せず、政治も混迷の度を深めている。世界が注目するセーヌ川の開会式から始まるパリ五輪。国内政治、テロ対策、環境問題、さらに温暖化による暑さと、様々な課題を抱えたまま、いよいよ開幕を迎えることになる。

          
【東西南北論説風(507)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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