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懐かしき流行語「巨人・大鵬・卵焼き」、令和ではどうなる?「大谷翔平」そして...

懐かしき流行語「巨人・大鵬・卵焼き」、令和ではどうなる?「大谷翔平」そして...
CBCテレビ:画像『写真AC』より「野球」

ご存知の方も多いことだろう。「巨人・大鵬・卵焼き」というフレーズ。昭和時代の高度成長期、1960年代の流行語である。そして、その後の時代にも、こんな3つの言葉の組み合わせが登場した。

大衆人気のベスト3

「巨人・大鵬・卵焼き」は、子どもたちが好きなものを3つ並べたという流行語なのだが、もう少し広い意味で、当時の“大衆人気”を表したとも言える。一説によると、この言葉の生みの親は、作家の故・堺屋太一さんと伝えられる。通産省(現在の経済産業省)時代に、記者会見の席で、「子供は皆、巨人、大鵬、卵焼きが好き」と話したことがきっかけだったとか。

王と長嶋を擁した巨人

まず「巨人」である。あらためて、プロ野球のチームである讀賣ジャイアンツのことだ。川上哲治監督の下で、王貞治と長嶋茂雄という2大スーパースターを擁して、1965年(昭和40年)から1973年(昭和48年)にかけて、リーグ9連覇、同時に日本シリーズ9連覇を成し遂げた。「V9」と呼ばれる黄金時代を築いた。王選手は、シーズン55本でホームラン王になるなど“世界の王”と呼ばれた。長嶋選手は、天才的なプレーと勝負強い打撃から“ミスター・ジャイアンツ”と呼ばれた。人気野球漫画『巨人の星』の中にも、2人は実名で登場していた。筆者が暮らす名古屋でも、当時店頭に並ぶ野球帽は巨人の「YG」マークばかりだった。中日ドラゴンズファンだったので、母親に頼んで「CD」マークに付け替えてもらったものだ。

昭和の大横綱だった大鵬

次に「大鵬」である。大相撲の第48代横綱だ。本名は納谷幸喜(なや・こうき)。1956年(昭和31年)に初土俵を踏むと、恵まれた体格と柔軟な体で、一気に番付を駆け上がった。1961年(昭和36年)9月場所で優勝して、横綱に昇進した。当時のライバルだった柏戸も横綱に昇進し、両者が競い合う「柏鵬時代」を築いていったが、何といっても大鵬には華があった。その取り口は、しなやかで力強かった。幕内優勝32回は、白鵬に破られるまで前人未踏の大記録だった。45連勝という記録もあり、映画にまで出演するスター力士だった。“昭和の大横綱”と呼ばれても納得である。

何といっても卵焼き

CBCテレビ:画像『写真AC』より「卵焼き」

そして「卵焼き」である。高度成長期から「物価の優等生」と呼ばれて、愛されているのが鶏卵である。それを使った卵焼きは、お弁当の必需品でもあった。子どもたちにとって、好きなおかずは沢山あるが、食卓でも、行楽でも、そして遠足などでも「卵焼き」は必ず登場した。やはり、最も人気のある“家庭の味”だった。
そんな3つを並べた「巨人・大鵬・卵焼き」は、戦後の復興を歩みながら、高度成長期でさらに加速する、そんなニッポンを象徴する流行語だった。

1970年代に続いたのは?

これほど世に知られた流行語が登場すると、やはり“もじって”みたくなるのが人情というものだろう。1970年代には「江川・ピーマン・北の湖」という流行語が登場した。ジャイアンツで活躍したが、入団の際には“ひと騒動”もあった江川卓投手。大相撲の第55代横綱であり、幕内優勝回数24回、「憎らしいほど強い」と言われた北の湖さん。実際そうだった。そして、多くの子どもにとっては苦手な野菜であるピーマン。この3つが何の共通点かは、あえて省略させていただく。ちなみに、この当時の筆者はと言えば「中日・貴ノ花・海老フライ」だった。「中日」はドラゴンズ、「貴ノ花」は、若貴兄弟の父親にして“名大関”だった人気力士である。「海老フライ」は名古屋めしの代表格である。

流行語は時代を映す

CBCテレビ:画像『写真AC』より「ドジャー・スタジアム」

1960年代が「巨人・大鵬・卵焼き」、1970年代が「江川・ピーマン・北の湖」とすると、1980年代は何だろうか。ちゃんと見つかった。「おしん・家康・隆の里」、これは「我慢強いもの」を3つ並べた流行語だそうだ。毎朝の国民的な人気ドラマだった故・橋田壽賀子さん脚本による『おしん』、大河ドラマで滝田栄さんが主役を演じて評判だった『徳川家康』、そして、病気に打ち勝って、30歳にして遅咲きの横綱に昇進した第59代横綱、隆の里。誰かがちゃんと共通点を巧みに見つけるものだと感心した記憶がある。

時代がめぐり令和の時代になった現在、こうした流行語を作ろうとすると、当然真っ先に思い浮かぶのは、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手だろう。では、残り2つはどうしようか。世の中が多種多様化、価値観も幅広くなった現在、かつてのように3つを選ぶことは困難な時代となった。そして、同時にそれは、大谷選手がそれだけ稀有な超スーパースターであるという証しなのかもしれない。

          
【東西南北論説風(484)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※『北辻利寿のニッポン記憶遺産』
昭和、平成、令和と時代が移りゆく中で、姿を消したもの、数が少なくなったもの、形を変えたもの、でも、心に留めておきたいものを、独自の視点で「ニッポン記憶遺産」として紹介するコラムです。

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