アライバの2人が新・竜の二遊間について語る「ボールは捕るんじゃない、入れる!」
「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム
史上最強の二遊間の2人が見る、現在の二遊間
荒木コーチとの不仲説について、「結婚して喋ることなく、意思疎通ができる関係性になるのと同じだよ」と深い理解のある関係を自身で主張する井端さん。「はやく入りなよ!」呼び込むと、荒木コーチが「新型コロナに感染して一番最初に連絡きたのが井端さん」と話しながらニコニコと入ってきた。歴戦を共にしたパートナーが、現在のドラゴンズ二遊間を徹底分析する。
京田陽太選手、阿部寿樹選手がトレードで球団を去った二遊間。ルーキーまでもがレギュラーを狙うチャンスがある現状を、『史上最強の二遊間』と称された2人はどう見るのか。
井端「二遊間の働き、ここまでのシーズン振り返ってどうです?」
荒木「経験の浅い子達が結構出てましたよね。やっぱり前半はエラーも続いてという中でやってきましたけど、だいぶ落ち着きましたというか、まあ細かいミスとか記録に表れないミスとかはありますけど、あとカットプレーで中継する場所だったりそういう細かいミスはまだまだたくさん出ている。ちょっとずつですけど勉強してできるようになっている」
「不要なステップ」をなくしていきたい龍空選手
今シーズン二遊間で起用されているのは、主に龍空選手、村松開人選手、福永裕基選手の3人。そして、候補としてあげられるもう1人は、オープン戦で起用されていたが怪我で離脱してしまった田中幹也選手だ。現状の二遊間候補の4人にフォーカスして分析していく。
―まずは、現状で一番プロ経験年数が長い龍空選手について
井端「まあちょっとね、無駄な動きが多いよね。なんかちょっといらないステップ入れて。いらないステップ入れたおかげで、肩が入らなくなって角度が甘くて小手先でひっかけて、ファーストへの送球が逸れる」
荒木「無駄な一歩が多い。でも、入れないといけないときに入れなかったりとか。話をしたら龍空はまだわかる子なので」
井端「でも二遊間側のことに関してはまだまだ課題があるよね。特に難しいときはいいんだけど、まあまあ簡単なとき。特に打球が弾んでいるときとか、昨日(8月29日、3回表・長岡選手のセンター前)も、ああいう飛び方じゃないよね。半歩でも後ろ行って捕って回転して投げるとか。打球によっての変化、あれじゃ飛ばない方が良いよね」
荒木「という話を昨日したんですよね。よくあるんですよね、龍空選手は、特に軽い感じでプレーするときがあるので、みんなは褒めるけど『さすがに怒られた』とか、それは要らんかったよねとか」
井端「どこが上手いのかって言ったら、基準はエラーしないような捕り方がベースになっているだけで、どんな捕り方でもアウトにすれば良いけど、(軽い感じで)やることによってミスを引き起こしているかなと思うから」
荒木「もし、今の打球がもっと跳ねていたら捕れなかったよね今の、と思うんですよ。今跳ねなかったからいいけど、それが捕れたかもしれないなっていう守備をして欲しいんですよ」
素直な練習からの応用を!村松選手の課題
―村松選手について
井端「昨日(8月29日、3回表・青木選手のセカンドゴロ)の村松のセカンド守備、回り込んで無理矢理正面に入っている、ああいうのは、俺の中では必要ないかな」
荒木「そのまま打球へ真っ直ぐ行ってシングルキャッチ」
井端「無理矢理正面に入ったせいで、これぐらい(10センチくらいを指で示す)グラブが浮いているんだよね。グラブの先に引っ掛かっただけ、あれがもう少し自分のグラブが浮いていたら、多分トンネルしているんじゃないかな。」
荒木「あそこは今まで後ろに追いかけて横で捕っていた。なので、今後のためにも足をもっと動かそうということで、練習で全部正面に入らせていたので、それで昨日(8月29日)の試合でも正面で捕ったんでしょうけど、まあこれからですね」
肩の強さがショートで魅力的な福永選手
―現在はファームで実践経験を積む26歳のオールドルーキー福永選手について
荒木「肩強いんですよね。ショートでやらせると面白いんですよね。今年も何回かやりましたけど」
井端「いけそうなの?」
荒木「動き的にはあの肩をもってすれば面白いなっていう。捕るのもしっかりとりますし、ただ細かい動きがまだできないというか、ゲッツーの、ショートスローができないとか」
井端「学生野球感が抜けていないよね、まだ守備に関しては。何とかしてというのが強すぎる」
荒木「年数が経ったら抜けていくのかなと」
井端「だけどはやく取り除かないといけないよね。俺はエラーしても良いと思うの。だけど、練習でやっている捕り方と違う捕り方で試合でエラーするよりは、練習と同じ捕り方でエラーした方が次に進めそうだよね。やっぱり次に進むことが大事で、いくら練習で良くても、試合でその捕り方ができずにアウトにしたところで、次に行けないじゃん。そこは強く言った方がいいと思う。」
―春のオープン戦で頭角を現したが怪我のリハビリで戦線離脱しているルーキー田中幹也選手について
荒木「(亜細亜大学の)後輩でしょ?どう足の動きを使っていくか」
井端「まだちょっとガツガツ系。あれがとれてこれば良いよね」
荒木「足が速いんですけど、その速さが守備に活きているかと言ったら、春のキャンプの時にはまだこれからだなと思った。あの速さのまま守備に活きてきたら面白い。そこを指導していかなきゃいけない」
荒木コーチの指導方針と井端氏の守備の極意
―荒木流の指導方法について
荒木「自分の感覚では全く教えない。僕、横から見ていて井端さんがいて、周りには久慈さん、宮本慎也さんがいて、いっぱい上手いショートの人を見ていてみんな共通しているところってあるんですよね。僕、横から井端さん見ていたじゃないですか、ボール捕りに行ってないんですよね。横から見て、捕りに行ってるんじゃなくて、先に行ってボールが入ってくるんですよね。そこの場所に足を持っていって先に用意して、そこにボールが入ってくるのが良い選手」
井端「これは、僕の表現を使って明日から言ってみてください。『ボールは捕るんじゃない、入れる』」
荒木「今村松に言ってるんですよ。とにかくボールを持ってこいと、その形になるところに足を持っていく練習をやっている」
井端「これはグラブじゃない、カゴだ、網だ。多分今荒木コーチが散々『基本が大事だ』って言っていても多分響いていない。僕らもそうだったでしょ?」
荒木「結果自分ですもんね」
井端「僕らも『分かってます』って頭で思いながらやってきて、それがある程度やってきて30歳すぎて『何が大事?基本だったか…』と気付くときがこれば上手くなる」
荒木「これ僕選手に言っているんですよ。どうせお前ら今これ言っても絶対思ってないだろうけど、頭のどっかに入れといてくれと。お前らが野球辞める手前くらいでこれが大事だって気付くから」
井端「荒木さんやっぱり『若い頃の基本』あれだけで十分ですねって言ってきたときが、最強の二遊間になるんじゃないかな」
荒木「それを信用して自分を信じてやっていきます」
筆者の感想まとめ
コーチとして選手を詳細に観察してコミュニケーションする荒木氏、鋭いセンスと豊富な経験で、客観的視点から読み解く井端氏のどちらの視点も面白く、特に福永選手のショートとして面白い選手に育つ可能性と、学生野球が抜けていない点を徹底指導した方がいいという2人の意見は、経験からの説得力がある見方で興味深かった。
まだまだエラー数なども多く不安に思うファンも多いと思うが、対談を見ると、この優秀で熱意を持ったコーチが育ててくれているなら、信じて応援するほかないという気持ちが湧き上がる。数年後、いやもっと先かもしれないが、荒木氏の伝えた基本が同じ地平で理解できた選手が活躍するのが楽しみでならない。
澤村桃