お立ち台に4選手が集結!立浪ドラゴンズが本拠地で魅せた“お盆の正夢”

お立ち台に4選手が集結!立浪ドラゴンズが本拠地で魅せた“お盆の正夢”

なかなかお目にかかれない光景だった。勝ちゲームの後のヒーローインタビューに、次々とドラゴンズの選手が呼び込まれる。岡林勇希選手、石川昂弥選手、そして、宇佐見真吾選手、これまで多くても3人だったと記憶するのだが、もうひとり忘れてはならない選手の名前が呼ばれた時、バンテリンドームは地鳴りのような歓声に包まれた。トリは柳裕也投手だった。2023年8月13日の日曜日。お盆最中のデーゲームは、4人の竜戦士がお立ち台に立った。

岡林~安打で球団新記録!

「サンデードラゴンズ」より岡林勇希選手©CBCテレビ

岡林勇希選手は普段通りだった。毎試合ヒットを打ち続け、25試合という連続試合安打の球団記録に並んだのが、前日のことだった。初代「ミスター・ドラゴンズ」西沢道夫さんが、1949年(昭和24年)に作った記録である。74年ぶりに肩を並べたほぼ24時間後に、あっさりと歴史を塗り替えた。

タイ記録達成も初回の第1打席、そして、新記録達成も初回の第1打席だった。応援するファンをまったくヤキモキさせることのないところが、いかにも岡林選手らしい。お立ち台の上でも、淡々としていたその表情は、すでに次のヒットを打つことに向っているようだった。

柳~9回をノーヒットノーラン

「サンデードラゴンズ」より柳裕也投手©CBCテレビ

柳裕也投手は饒舌だった。先発したこの試合、1回に1死1、2塁のピンチを迎えたがダブルプレーでしのぐと波に乗った。「初回の失点」が多い今季だが、それを乗り切ったことから、投球は冴えた。スコアボードには、毎回のように「0」が並び、ヒットの表示も「0」のままだった。ゲームが終盤に入ると、ドラゴンズファンは心から祈った。「どうか1点を取ってくれ」。

脳裏には1年前の2022年5月6日、大野雄大投手が9回をパーフェクトに抑えながら、味方の援護がなく、完全試合を達成できなかった記憶が鮮明に蘇っていた。しかし、柳投手が121球で、9回を1本のヒットも許さず投げ終えた時、ドラゴンズのスコアボードも方も「0」のままだった。「皆さんの応援のおかげで、ノーヒットノーランを達成できました!」。悔しさを見せずに、こんなジョークによって、選手会長である柳投手はドームを沸かせた。

石川~起死回生の同点本塁打

「サンデードラゴンズ」より石川昂弥選手©CBCテレビ

石川昂弥選手は照れくさそうだった。柳投手が9回を投げ終えた後、相手の広島東洋カープが、この試合で記録した最初の安打は、延長10回表ツーアウトからの堂林翔太選手によるホームランだった。

打たれたのは“竜の守護神”ライデル・マルティネス投手。ここまで36試合を投げて、防御率0.00。この記録が、どこまで伸びるかという矢先の一発だった。柳投手による快挙がなくなった直後の悪夢、応援席は悲鳴に包まれた。

しかし、それを吹き飛ばしたのが、4番の石川選手だった。10回裏の先頭打者として打席に入ると、高めのボールをフルスイング。カープファンで赤く染まるレフトスタンドに、打球は吸い込まれていった。こんなバッティングができるのだ。乱暴でいい、豪快であれば。何より、お立ち台での、無邪気な笑顔に、いよいよ動き出した“竜の4番”の胎動を見た。

宇佐見~竜党歓喜サヨナラ本塁打

「サンデードラゴンズ」より宇佐見真吾選手©CBCテレビ

宇佐見真吾選手は破顔一笑だった。目の前で4番の石川選手が起死回生の同点ホームラン。5番の宇佐見選手が、この勢いをどう繋いでいくかと注目したが、ライトスタンドへのサヨナラホームランで、マスクをかぶって柳投手をリードした試合を、自ら決着させた。

4番と5番によるアベックホームランによる逆転サヨナラ勝ち。この試合をドームで観戦したドラゴンズファンは幸せだったことだろう。テレビ観戦したファンも興奮した。ラジオ視聴のファンも歓声を上げた。何より、これまで黙々と試合を締めくくってきたマルティネス投手を、敗戦投手から一転して勝利投手に変えたことが大きい。そんな明日に向けての一撃となった。宇佐見選手は、最後まで笑っていた。

忘れないで!選手こそが“主役”

“お盆の正夢”に酔った本拠地でのデーゲーム。自力優勝も消え、自力でのCS(クライマックスシリーズ)出場も消え、最下位に低迷する立浪ドラゴンズ。ファンのストレスもヒートアップし続けていたが、そんな嫌な暑さを吹き飛ばしてくれた爽快なゲームだった。

ファンから見ても、決してうまく機能しているとは言い難い、今季のベンチ采配。しかし、野球をするのはグラウンドに立つ選手たちであり、それぞれが、プロとしての技と力を発揮すれば、こういう勝利が刻まれるということを、あらためて見せてくれた戦いでもあった。監督でも、コーチでもない。試合に出る選手たちこそが、もっとも輝くのである。

竜党の間でも、このゲームの興奮は語り継がれるだろう。そして、ドラゴンズの選手たちにも、このゲームで見せた心意気を忘れずに、シーズン残り試合に立ち向かってほしい。
                          
  
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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