ついに借金20!ドラ1ルーキー初勝利の陰で見せた立浪監督の“意地采配”に思う

ついに借金20!ドラ1ルーキー初勝利の陰で見せた立浪監督の“意地采配”に思う

東京ドームで讀賣ジャイアンツに3連敗。後半戦に入って、まだ1勝の中日ドラゴンズだが、その1勝は竜党を歓喜させた、ドラフト1位ルーキー・仲地礼亜投手のプロ入り初勝利だった。2023年7月26日、新たな“希望の星”の本拠地デビュー、しかし、その試合では、立浪和義監督が、ある“揃い踏み”を行なっていた。(成績は2023年7月30日現在)

驚きのクリーンアップ

「サンデードラゴンズ」より細川成也選手©CBCテレビ

スタメンが発表されて驚いた。4番を打っていた石川昂弥選手が、脚の張りを訴えて欠場したこともあるが、この試合で、立浪監督が組んだ中軸打線は、仲地投手の初見参と共に、注目すべきものだった。

3番・川越誠司、4番・細川成也、そして、5番・宇佐見真吾と3選手のクリーンアップ。「おそらく」どころか「120%絶対に」、開幕前には誰にも予想できなかった顔ぶれだった。なぜなら、現役ドラフトで移籍してきた細川選手こそ開幕からの1軍メンバーだが、宇佐見選手は1か月前、川越選手は1週間前に、トレードでドラゴンズにやって来たばかりなのだ。

今季の移籍メンバー揃い踏み

「サンデードラゴンズ」より立浪和義監督©CBCテレビ

細川選手の活躍は、オールスターゲームに初出場して、ホームランダービーでも決勝に進んだことからも、すっかり定着している。

宇佐見選手は、同じキャッチャーだった郡司裕也選手らと交代に、北海道日本ハムファイターズから移籍してきた。初のスタメンだった6月29日の甲子園球場で3安打、その後も、コンスタントに打ち続けて、先発マスクを続けている。

川越選手は、オールスター休み中の緊急トレードで高松渡選手(※「高」は「はしごだか」)に代わり、埼玉西武ライオンズからやって来た。早々に代打で初ヒット初打点も記録した。この3選手は、まさに立浪監督が“選んだ”メンバー、指揮官はその名前を、竜打線の中心に“揃って”書き込んだのだった。

全員がヒットを打った!

立浪監督の起用に応えて、3選手はいずれもヒットを打つ。初先発の仲地投手を励ます、貴重な先制タイムリーは細川選手だった。5回裏に、川越選手が四球で出塁すると、代走には後藤駿太選手が送られた。

実は、後藤選手も、昨シーズン途中にオリックス・バファローズからトレード移籍、このところ、後半の守備固めなどで重宝されている。その後藤選手はそのまま守りにつき、回ってきた打席で二塁打を打ち、自らも追加点のホームベースを踏んだ。打の移籍メンバー、全員が存在感を見せた。

“変わりゆくドラゴンズ”の姿

投げる方では、宇佐見選手と共にファイターズからやって来た齋藤綱記投手が、6回を無失点に抑えた仲地投手からリリーフ登板。2三振で7回表をピシャリと抑える。

9回には、シーズンオフに京田陽太選手とのトレードで仲間入りした砂田毅樹投手が、ゲームを締めた。先発要員である涌井秀章投手だけは、さすがに出番がなかったが、立浪監督が就任して以来、他球団から獲得した6人の選手が、本拠地のドームに登場したのだった。

残念ながら、獲得した外国人の打者たちは、いまだに助けにならない“助っ人”だが、この試合での、国内移籍の6選手の活躍は、まさに“変わりゆくドラゴンズ”の姿だった。

立浪監督が感じた手応え

「サンデードラゴンズ」より高橋周平選手©CBCテレビ

既存のメンバーにも、当然のように火が点いた。12球団で最もヒットを量産している岡林勇希選手はこの試合も3安打だったが、6番の大島洋平選手、7番の高橋周平選手、それぞれ2安打ずつの活躍。

新旧メンバーを取り混ぜた新打線は、見事に機能して、先制、中押し、そしてダメ押し、合わせて11安打で7得点を挙げた。投手陣も、強力ベイスターズ打線を1点に抑えた。

立浪監督の心中を察すれば、仲地礼亜という新たな先発投手の手応えと共に、嬉しいゲームだったに違いない。試合後の監督インタビューで、仲地投手について「兄弟と思われるほど顔が似ている」と、明るいジョークが飛び出したことも、選手起用が当たった喜びの表れだったと想像する。

いつまで続く!日替わり打線

「サンデードラゴンズ」よりダヤン・ビシエド選手©CBCテレビ

しかし、快勝の次の試合では、また先発スタメンの顔ぶれが変わった。日替わり打線が続く。驚きの「1番・ビシエド」もあったが、東京ドームでは、育成ドラフト3位から支配下登録したばかりのルーキー・樋口正修選手が「1番」に起用された。

鵜飼航丞選手や村松開人選手の「1番」もあった。しかし、目立った結果は出ていない。チームには、岡林選手や大島選手という、まさに「1番打者」にふさわしい2人がいる。借金はついに20になった。相変わらず、走塁や守備での凡ミスも多い。それでも、ドラゴンズファンは応援を続ける。だからこそ、そろそろ“日替わり”ではなく、立浪ドラゴンズがめざす野球、その打順の姿を見せてほしい。

日本列島は連日の猛暑が続く。毎試合のスタメン発表で、ドキドキしたり、驚いたりすることは、この暑さ以上に、実は私たち竜党の心身に堪えてもいる。“暑さ”はグラウンドでの“熱い”プレーだけで十分である。明日への希望あふれる選手起用による“涼風”を待っている。                          
  
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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