2年目の立浪ドラゴンズ「こんなはずでは?いや予想通り?」前半戦を斬る!

2年目の立浪ドラゴンズ「こんなはずでは?いや予想通り?」前半戦を斬る!

甲子園球場で3連勝したかった。やはりここ一番で勝てない。そんな残念な思いと共に、2023年シーズンも前半戦が終了。立浪和義監督が率いて2年目の中日ドラゴンズは、ここまで84試合を戦った。34勝48敗2分の負け越し14で、2年連続の最下位での折り返しとなった。(成績は2023年7月17日現在)

「誤算」と戦った前半戦

「サンデードラゴンズ」より田中幹也選手©CBCテレビ

思えば、シーズン前から誤算の連続だった。スタメンへの新風を期待されたルーキー田中幹也選手がケガによって離脱した。昨季の最優秀中継ぎ投手だったジャリエル・ロドリゲス投手が開幕直前になっても来日しなかった。エース大野雄大投手が登板1試合だけで左ひじの手術をした。立浪監督自らが獲得に動いた外国人“助っ人”はいずれも戦力にならなかった。

しかし、ペナントレースには“誤算”が付きものであり、それを踏まえて、シーズンオフ、春季キャンプ、そして、オープン戦と戦う準備を進めるのである。それは、どのチームも同じこと。厳しい言い方をすれば、現時点最下位のドラゴンズ、チーム作りの失敗だろう。

余儀なくされた方針転換

立浪監督は「若手にチャンスを与えたのは去年まで。今年は勝てる選手を使う」と決意を語っていた。しかし、ベテラン、中堅、そして新たな外国人選手、いずれも調子が上がらない中で、前半戦は、いつのまにか若手中心の戦いになっている。「世代交代の元年」という言葉を目にすることがあるが、それは、岡林勇希選手や高橋宏斗投手(「高」は「はしごだか」)らが飛び出した2022年シーズンのことだった。

今季は「とにかく勝ち優先」を目ざしたはずなのだ。しかし、余儀なくされた方針変更、結果としての固定できない打線も、その表れだろう。ファンとしても、この“現在地”はしっかり見つめたい。

龍空を外したあの試合

「サンデードラゴンズ」より龍空選手©CBCテレビ

前半戦のポイントは、開幕早々の東京ドームでの2戦目にあったのではないだろうか。立浪監督は、開幕戦にショートとしてスタメンで起用しながら、三振含む2打数ノーヒット、さらにエラーをした龍空選手を先発から外した。昨シーズンの後半から、京田陽太選手(現・横浜DeNAベイスターズ)に代わって、ショートを守り続けた龍空選手。開幕からレギュラーとして活躍することが期待された。それがわずか2戦目でベンチスタートとは・・・。

もちろん、本人の力が、ベンチが期待するレベルまで達していなかったのだろうが、まだ3年目の21歳である。しっかり育てる責任もベンチにはある。その後、龍空選手は2軍落ちも経験した。夏の訪れと共に、龍空選手は、毎試合ショートのスタメンとして登場し続けているが、今季のチーム作りの“揺れ”を象徴する出来事だった。

目を見張るトレード成功

「サンデードラゴンズ」より細川成也選手©CBCテレビ

立浪監督の下で、大幅にチーム改革が進む中、トレードは大成功と言える。初の「現役ドラフト」でベイスターズから移籍してきた細川成也選手は、今や竜打線の主軸である。チーム待望の“ホームラン打者”でもある。「4番」にも座った。三振もあるが、勝負強いバッティングにファンは魅了される。自身初のオールスターゲームにも出場する。

もうひとり、シーズン途中のトレードで、北海道日本ハムファイターズからやってきた宇佐見真吾捕手。当初は30歳という年齢が、代わりにファイターズへ移籍した郡司裕也捕手の25歳という年齢と比較されたりしたが、ヒットを量産し続ける巧みな打撃術によって、今や欠かせない存在になった。立浪監督の“目利き”が見事に発揮されたトレードだろう。

有望な若手選手の“宝庫”

「サンデードラゴンズ」より小笠原慎之介投手©CBCテレビ

そんな細川選手と宇佐見捕手だけではない。野手では、12球団最速で100安打に達した岡林選手、ケガから復帰して4番に座る石川昂弥選手、ルーキーの福永裕基選手と村松開人選手、そして龍空選手。

投げる方では、今や“エースの風格”が出ている小笠原慎之介投手と、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)最年少出場の高橋投手を双璧として、清水達也投手や育成ルーキーだった松山晋也投手。

投打それぞれに、これだけ楽しみな、それも力のある若手選手が揃っているチームは、ドラゴンズだけだろうと、胸を張りたい気持ちである。立浪監督が語った「勝てる選手」が、着実に「若手選手」とイコールになりつつある。

後半戦、2勝1敗の勝ち越しペースを続ければ、何かが起きる可能性も十分にある。ようやく、打線の顔ぶれも落ち着き始めてきた。ここまで来たら、中途半端に“先祖帰り”するのではなく、若竜を中心とした戦いで突き進んでほしい。それは、ファンとしての願いであり、希望である。立浪竜“その先にあるもの”を見せる戦いに期待したい。
                          
  
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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