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あなたの知らない森田芳光監督。『39 刑法第三十九条』再評価

あなたの知らない森田芳光監督。『39 刑法第三十九条』再評価

2月16日、映画プロデューサーで故・森田芳光監督夫人の三沢和子さんがCBCラジオ『小堀勝啓の新栄トークジャンボリー』に出演しました。3月15日に名古屋ミッドランドスクエアシネマで開催される「あなたの知らない森田芳光監督~そして千変万化の作品世界~『39 刑法第三十九条』上映&トークイベント」で対談する三沢さんと小堀勝啓が、あらためて森田監督の作品を振り返ります。小堀勝啓と共に森田芳光監督の映画について熱く語りました。

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森田監督が亡くなって13年経ちます。

小堀「森田芳光監督はキャンペーンの度にお会いしてて、とても丁寧にお話をしてくださるし、しかも天才なのにものすごく繊細なんです。『どうだ?』じゃなくて、『どうでした?』みたいな」

三沢「監督って公開するのは心配なんですよね。小堀さんのことは全面的に信頼させていただいてて、自分の羅針盤みたいにいつも気にしてました」

三沢さんはプロデューサーとしても多くの森田監督の作品に携わってきました。

フィルムだった作品がデジタル化されたことでさまざまな形で上映されるようになり、世界で再評価が進んできているそうです。
黒澤明、小津安二郎という日本の名匠に「森田芳光」の名が加わったという三沢さん。

出てきたカレーは美味かった

三沢さんが、森田映画のすごさを改めて実感した海外でのエピソードを語りました。

南フランスのトゥールーズで『黒い家』(1999年)を上映していたところ、映写事故で途中で止まってしまい、その後の『阿修羅のごとく』(2003年)も上映できなくなったそうです。
唯一上映できたのが『39 刑法第三十九条』(1999年)でした。

三沢「観に来たのとは違う『39 刑法第三十九条』を見せられたわけですが、皆さんがすごい感動してくれたから、この映画はすごいなと思いました」

小堀「うなぎ食いに行ったらカレーライスが出てきて、これは美味えなあというパターンですね」

イベントあり

その『39 刑法第三十九条』ですが、3月15日に名古屋ミッドランドスクエアシネマにて上映会とトークイベントが開催されます。
トークイベントで対談するふたりが、そのプロローグとして森田作品の魅力を語ります。

この上映会には「あなたの知らない森田芳光監督~そして千変万化の作品世界~」とのタイトルが付けられています。

小堀「森田芳光監督の作品は、作品によって全然違うので同じ人が作っているとは思えないんです」

三沢「ジャンルも違うし、ジャンルによって作り方も変えるので。本当にこのタイトル通りです」

そして上映作品『39 刑法第三十九条』は1999年5月に公開されました。
主演は鈴木京香さんと堤真一さん。

タイトルにもある「刑法第三十九条」は、心神喪失者の行為は罰せず、心神耗弱状態の行為はその刑を軽減。つまり心を病んだ人の犯罪は裁かれないという内容。時折社会問題にもなる精神鑑定を扱っています。

東京で起きた凄惨な夫婦殺人事件について、被疑者である劇団員の男の精神状態をめぐる法廷サスペンス映画です。

こういうのがやりたかった

『39 刑法第三十九条』を振り返る三沢さん。

三沢「自分で言うのもなんですけど、オリジナルにしてはすごいドラマチックですごい良くできた話になってますよね」


現在も脚本家、監督として活躍する大森寿美男さんが新人の頃のシナリオだったそうです。

若い頃から松本清張さんの推理小説を映画化したいと話していたという森田監督、この脚本を見つけた時は飛び上がって喜んだとか。

三沢「最初は完全に法廷劇だったんです。法廷だけじゃ映画にならないからって、海のシーンとか森田が全部入れたんですよ。だからバランスも良くなったんじゃないかなと思うんです」

絶妙な俳優陣

小堀「びっくりしたんですけど、裁判の再現映像だと裁判官が起訴状を朗々と言うじゃないですか。この映画では面倒くさそうに言っています」

三沢「裁判見に行くと朗々と読み上げてる人なんかいなくて。そこを現実に忠実に再現しています」

ちなみに刑事役の岸部一徳さんは、沢田研二さんが主演を務めた森田作品『ときめきに死す』(1984年)にも出演していました。

三沢「その時に、俳優をやるつもりがあるとお聞きしてたんで、森田としてはいずれどこかでと思っていたみたいです」

小堀「今は大変な俳優ですが、元ザ・タイガース。GSの人気のベーシストだったって若い人は知らない」

三沢「私たちはタイガース世代ですからサリーですけどね(笑)」

当時まだ30代の鈴木京香さんと堤真一さんのダブル主演に加え、岸部さん、
樹木希林さん、吉田日出子さん、江守徹さん、岸部一徳さんという個性的なベテラン俳優陣が脇を固めます。


三沢「今となっては大変な俳優さんです。 森田ってキャスティングのひらめきがありますよね」

名古屋大好き

この作品では福岡県の門司港、新潟県の他、愛知県犬山市でもロケ撮影されました。
特に作品中の重要シーンはこの犬山市で撮影されています。


三沢「本当に森田は名古屋が好きで、毎年キャンペーンにも、そうじゃなくても来てました。ロケさせていただいたのは唯一この映画ですよね。雰囲気出てますでしょ?それも楽しんでいただければと思います」

小堀「知ってる場所が、こういうふうに切り取られてるんだなとかありますもんね」

『39 刑法第三十九条』の後の『黒い家』『模倣犯』でも名鉄のカットがあり、森田監督の名古屋好きが垣間見えます。

心の闇を描く

『39 刑法第三十九条』では映像処理に「銀残し」と言う特殊な加工をしているそうで、画面に真っ白な色彩がなくなり、ざらついた感じになるんだとか。

三沢「真っ白がないから心の闇を描くにはぴったりです。35ミリのフィルムで見るからこそ、デジタルよりも深いと思うので是非ご覧になっていただきたいと思います」

小堀「トークは上映後なのでネタバレしても大丈夫。いま同じような事件がいっぱい起きています。優れた映画は現実の先を行ってるんだなと思いました」

3月15日に名古屋ミッドランドスクエアシネマの「あなたの知らない森田芳光監督~そして千変万化の作品世界~『39 刑法第三十九条』上映&トークイベント」へぜひ足を運んでみてください。 
(尾関) 

 

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