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由来も発祥も誰も知らない 隠れ(すぎている)名古屋めし「志の田」とは?~大竹敏之のシン・名古屋めし

由来も発祥も誰も知らない 隠れ(すぎている)名古屋めし「志の田」とは?~大竹敏之のシン・名古屋めし
CBCテレビ:画像『デララバ』

老舗うどん店も首をかしげるそのルーツ

「志の田」(しのだ)というメニューをご存じでしょうか? 白醤油ベースの透明感のあるつゆに、具は油揚げ・かまぼこ・ネギ、麺はお好みでうどんかきしめんを選べるシンプルな麺料理です。

この志の田、自宅や勤務先の近所に行きつけの昔ながらのうどん店がある、という人にとってはおなじみのものでしょう。しかし、うどん店をあまり利用しない人はおそらくピンと来ないはず。味噌煮込みうどんやきしめん、(名古屋流)カレーうどんのように、スーパーなどで販売する中食用商品としてはお目にかかれないのです。

「志の田」は出自もはっきりとしません。いつ頃から食べられているのか?名前の由来は・・・? 当のお店に尋ねても返ってくるのは決まってこんな返事。「自分が物心ついた頃にはもうあったから、どこにでもある当たり前のものだと思っていた。名前の由来も、聞いたこともないし気にしたこともなかった」

志の田一択!の常連も。「川井屋本店」

大正10年(1921)創業の「川井屋本店」(名古屋市東区)の3代目、櫻井太郎さんも「名古屋以外にはないだなんて思ってもいませんでした。名前の由来も、先代の父も多分知らなかったでしょうね」と苦笑いします。味付けしていない油揚げにネギ、そしてふちの赤い名古屋かまぼこを使うオーソドックスなスタイルは代々受け継がれているものだそう。つゆは上品ですが塩味はしっかりあるので物足りなくはなく、常連の中には志の田しか食べない、というファンもいるそうです。

「さっぱりしているからか、どちらかといえば女性の方が注文は多いですね。玉子とじにして、とおっしゃる方もいますよ」と櫻井さん。名古屋のうどん店は基本的に溜まり醤油ベースの「赤」、白醤油の「白」と2種類のつゆを用意していて、麺の上にのせる具によって使い分けます。多くの人がきしめんと聞いて思い浮かべる濃い茶褐色のつゆは赤。白つゆは、志の田の他に、天ぷらうどんや玉子とじなど、“種(たね)もの”と呼ばれる、具が主役の麺類に使われるので、志の田×玉子とじも当然、相性はいいわけです。

オリジナルのあんかけ志の田が人気。「手打めん処 三朝」

古くからの定番ながらちょっと地味な存在である志の田、そのイメージを変えようと取り組んでいるうどん店も。昭和6年(1931)創業の老舗にして創作意欲旺盛な「手打めん三朝(さんちょう)」(名古屋市千種区)です。

「平成の初めまで出前をやっていて、その頃は天ぷらうどん、志の田、あんかけが3本柱だった。それがいつしか人気が下がってきてしまって、志の田をイチから変えてやろう!と思ったんですよ」と3代目・佐枝慎一さん。その名も「白いあんかけ志の田」は、白醤油もカツオダシも使わず(代わりが何かは企業秘密)、片栗粉でとろみを加えて天かすでコクを出しています。つゆのとろみのおかげで麺との一体感が出て、志の田本来の優しい味わいに包容力がプラスされた印象です。

「あんかけにすることで玉子とじや天ぷらとの相性もよりよくなる。今じゃあ、カレーうどん、幅広きしめん、台湾まぜうどんなどと並ぶ人気メニューだよ」と胸を張ります。

陰陽師ゆかりの白狐伝説が由来・・・との説も

さて、志の田という名前の由来についてはこんな説も。

大阪・信田(しのだ)の森を舞台に陰陽師の祖・安倍晴明の母が白狐だったとする説話があり、江戸時代にはこれが浄瑠璃などに作品化されて人気を博しました。白いつゆと狐の好物とされる油揚げを使う麺料理を、白狐が住んでいる信田の森にあやかって「しのだ」と名づけ、あえて「志の田」と別の字をあてた、というのです。昭和以前は浄瑠璃が今よりずっと大衆的な娯楽だったため、白いつゆに油揚げが浮かぶ「志の田」から、信田の森を連想することも容易だったと考えられます。

こう推察するのは、名古屋文化に詳しい東海学園大学客員教授・安田文吉さん。関東でよく見られるおかめうどんも、おかめの顔に見立てて具を盛りつけたものだといいますから、見立てや言葉遊びを楽しむ庶民のセンスから生まれたネーミング、と推察するのもまさに粋なものといえるんじゃないでしょうか。

濃い味揃いの名古屋めしの中にあって、見た目も味わいもさっぱり上品な志の田。他府県の人にアピールするにはちょっとインパクト不足かもしれませんが、地元の人が愛することで、ひそかに、でもしっかりと受け継がれていってほしいご当地麺です。

※記事内容は配信時点の情報です

#名古屋めしデララバ

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