未成道のまま“廃道”に!?移設されるはずだった火薬製造所跡も 群馬県の軍用道路の廃道を巡る旅

ミキの昴生と亜生がMCを務める、全国の道に特化したバラエティ番組『道との遭遇』。今回は、全国800か所以上の道を巡ってきた道マニア歴20年の石井あつこさんが、群馬県にある“廃道”を巡ります。 ※廃道は危険ですので、むやみに立ち入らないでください。
断崖を貫いた廃隧道 未完成の切り通しも

石井さんが訪れたのは、群馬県沼田市付近。俳優の保志健斗さんを旅のお供に迎え、一緒に道を巡ります。
(道マニア・石井あつこさん)
「今日は、廃道となってしまった軍用道路を訪ねたい。島根にあった部隊が、昭和16年に沼田に移動してきた。軍用道路が目指した地下工場の名残があるらしい」
群馬県沼田市周辺にはかつて、軍用機の製造工場や滑走路、火薬製造工場など、数多くの軍事施設が存在し、それらにアクセスするための軍用道路もありました。
戦時中に軍用道路として整備されたルートは、今もなお現役で使われている区間もありますが、今回はそんな軍用道路の中でも、今は使われずに山奥で眠っている廃道区間を探索します。
まずは、沼田市の西に位置するみなかみ町へ。廃道区間があるとされる名胡桃(なくるみ)台地方面に向かいます。

(道マニア・石井あつこさん)
「群馬県の高崎市岩鼻(いわはな)に、『岩鼻火薬製造所』という場所があった。日本初のダイナマイトはそこで作られた。戦争末期になって移転の計画があがり、その工事に合わせて今から行く軍用道路も整備された」
明治15年に操業を開始し、明治38年に日本初のダイナマイト製造工場が完成した岩鼻火薬製造所。敷地面積はなんと32万坪、従業員は4000人にのぼる、当時としては大規模な火薬製造所でした。

第二次世界大戦末期、空襲の被害を避けるため、防空仕様の地下工場を新たに沼田市上川田(かみかわだ)に建設し、移転する計画が立てられました。
現在町道になっている道も、元々は火薬製造工場へアクセスするための軍用道路として整備されたと言います。しかし…
(道マニア・石井あつこさん)
「断崖に挑んだところで終戦となり、未完成のまま使われず未成道の廃道になった」
昭和19年に工事を開始するも、昭和20年8月の終戦により工事も中止となり未成に終わりました。完成には至らなかった軍用道路ですが、今も未成廃道の痕跡が残っていると石井さんは言います。

2人は廃道区間に入り、草木が茂る道なき道を進むと、急崖に土砂で埋もれた隧道の入口を発見!わずかな隙間から隧道を覗くと、中には広い空間が。狭い入口から寝そべって入っていく、果敢な石井さん。安全を確認し、保志さんも隧道の中へ。
(道マニア・石井あつこさん)
「地図に載ることもなく、使われた記録もない隧道。意外と幅も広くて地面も平らで、車1台通れそうなゆとりがある」
反対側も開いており、隧道の抜けると利根川に架かる「月夜野大橋」が真上を通っています。
(道マニア・石井あつこさん)
「川沿いに全然平場がないから、ここを越えるには隧道を掘るしかなかった場所」

さらに、藪をかき分けて進むと…
(道マニア・石井あつこさん)
「未完成の切り通しがある。多分、掘ろうとしたけど終戦になって作戦中止の号令が出て、途中だけれどもやめることになった。この切り通しが(道路が)未完成であることの証左」
火薬製造工場の痕跡 2階建ての構造だった横穴

その廃道の先に存在したとされるのが火薬製造工場で、その痕跡を探したいという石井さん。
(道マニア・石井あつこさん)
「岩鼻にあった火薬製造所を空襲に脅かされない地下工場に移設するということになった。利根川べりの右岸段丘崖に12箇所横穴が開いている、と沼田市史に書いてある」
それが火薬製造工場の痕跡のようですが、詳しい場所が分からないため、今回突き止めたいとのこと。地元の方に詳しい場所を聞いて行ってみると、山の斜面に穴が空いているのを発見!

幼少期に工場の建設現場を見たことがあるという地元の方によると、横穴は12箇所ではなく13箇所あり、進むと左右にのびる通路に繋がっていたそう。さらに、いくつかの横穴は2階建ての構造になっており、上下も行き来できたのだと言います。
現在もその横穴を近くで見られる場所があるということで行ってみると、穴は水没しているものの、奥まで続いていることが分かります。
(道マニア・石井あつこさん)
「奥行きあるね。これがもし完成したらもっと拡幅されて、巨大な完全防空工場になっていた。自然豊かな小山の段丘面にあったっていうのが感慨深い」
CBCテレビ「道との遭遇」2025年7月1日(火)午後11時56分放送より
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