謎多き静岡・南伊豆の廃隧道を調査!竣工年・名称不明の廃隧道の歴史を紐解く旅

ミキの昴生と亜生がMCを務める、全国の道に特化したバラエティ番組『道との遭遇』。今回は、全国800か所以上の道を巡ってきた道マニア歴20年の石井あつこさんが、静岡県・伊豆半島にある“廃道”を巡ります。 ※廃道は危険ですので、むやみに立ち入らないでください。
竣工年・名称不明の廃隧道を調査!妻良と子浦を結ぶ廃道

(道マニア・石井あつこさん)
「伊豆半島のこの地の廃道は、すべて解明されつくしたと思っていたが、実はそうではないらしい」
静岡県伊豆半島南西部に位置する妻良(めら)地域。このエリアには最近、石井さんが発見したという未知の廃道があり、ぜひ紹介したいとのこと。
(道マニア・石井あつこさん)
「妻良から子浦(こうら)に行くまでの道のりが山続きで険しいということで、大正3年に出版された『南豆風土誌』の中に、西洋の技術で道普請をしてこの難所を突破したいという思いが綴られている」

妻良と子浦(こうら)の区間には現在、国道136号が通っていますが、かつて“妻良の七坂(ななさか)、子浦の八坂(やさか)”と呼ばれるほど急峻で険しい山が連なる難所でした。
「西洋普請という当時の最新技術を用いてでも道を造りたいと、地元の人々は願っていた」と石井さんは言います。
(道マニア・石井あつこさん)
「先月その場所に行ってきて、想像し得なかった光景を目にすることができた。廃道に隧道が一本残っているが、いつ竣工なのか分からなかったので知りたい」
目的の廃道には竣工年不明の廃隧道があり、どうしても調査したいという石井さん。さっそく国道136号沿いから目的の廃道へ向かいます。
山中に眠る素掘りの廃隧道

妻良地域から北上し、「東條(とうじょう)トンネル」に続く「田面(たづら)トンネル」手前には、妻良と子浦を行き来するのに使われていた廃道への分岐があります。
その道を奥へ進むと古い石積みが現れ、「石段が横にあるので、畑な気がする」と石井さん。上には平場があり、「おそらく、2世代の道が交差しながら続いていると思う」と言います。さらにその先には…

(道マニア・石井あつこさん)
「言葉にならないぐらい立派な切り通しがある。なるべく平たんに攻略したかったんだと思う。少なくとも、『南豆風土誌』が書かれた大正3年よりあとに造られたのでは」
西洋技術を取り入れた土木・建築工法“西洋普請”で開削したいと願っていた道は、幅が狭く険しい廃道だと思い現地を訪れた石井さん。

ところが、前月に探索したところ、その開削後に造られたと思われる幅広い別の道も見つかり、思いがけない発見に興奮を抑えきれなかったそうです。そして、この廃道の先に前回の探索以来、疑問に思っている場所が。
(道マニア・石井あつこさん)
「ここで道が分岐して、右側の土砂のところに隧道があったんじゃないかなと。この道が旧道で、もう一つの急に狭くなる道の方が、旧道よりもさらに古い旧旧道なのでは」

一見土砂崩れのように見えるこの場所には、かつて隧道が存在し、通り抜けられたのではないかと考察する石井さん。さらに探索を続けると、石井さんが「先月まで知らなかった」と言う隧道が姿を現します。
(道マニア・石井あつこさん)
「竣工名も名称も不明の隧道。上と下で地質が違うように見える。銘板こそ無いけれど、往時の姿と変わっていないと思う」

隧道の中はノミなどで削った跡が残る素掘りで、昭和初期に書かれた落書きの痕跡も。その奥は埋もれており、行き止まりになっています。
一体、この隧道はいつ造られたのか?さらに、土砂で崩れ旧旧道と交わる土砂の場所に、石井さんの推測通り隧道は存在したのか?謎を解明するため、近くの集落で聞き込みすることに。
廃隧道はいつ造られた?石井さんが辿り着いた答えとは

この地で生まれ育った地元の方の話によると、かつてこの山には多くの畑があり、麦やサツマイモ、みかんなどを栽培していたそう。この一帯には平地が少なかったため、石を積んで畑を作り、石井さんが探索した廃道は畑を行き来するのに使っていたとのこと。

また、「田面トンネル」のすぐ北にある「白崎トンネル」ができる前、使っていた海側の道が土砂崩れで崩落。「白崎トンネル」が完成するまでの間、廃道となった山側の道を再び利用したと言います。
竣工年も名称も不明の廃隧道は、妻良から子浦の中学校へ通う生徒たちの通学路としても使われていたそうで、土砂で埋まりかけていた坑口を、這いつくばりながら通っていたと言います。

さらに、土砂で崩れた場所には石井さんの推測通り、かつて短いながらも確かに隧道があったことが判明しました。

大正15年の地形図の道が、今回巡った廃道であると石井さんは推測。そして、西洋普請で開削したいと記された大正3年にはその道がなかったことから、“大正3年から15年の間に隧道が造られたのでは”と考えます。
(道マニア・石井あつこさん)
「廃道の世界は奥深い。今後も探索を続けていきたい」
CBCテレビ「道との遭遇」2025年7月22日(火)午後11時56分放送より
番組紹介
