今注目「糖尿病の学習入院」…血糖値の上昇を緩やかにするコツは?専門家に学ぶ“血糖値管理術”

身近な健康問題とその改善法を、様々なテーマで紹介する番組『健康カプセル!ゲンキの時間』。
メインMCに石丸幹二さん、サブMCは坂下千里子さんです。
ドクターは、朝日生命成人病研究所 附属医院 糖尿病内科部長 医学博士 大西由希子先生です。
今回のテーマは「〜糖尿病のある人も ない人も必見!〜密着!糖尿病の学習入院」
糖尿病の予備軍を含めた患者の割合は、日本人の6人に1人と言われています。もはや国民病ともいえる糖尿病の対策のため、今注目されているのが全国の病院で実施されている「糖尿病の学習入院」。学習入院は、糖尿病やその予備軍の人たちが糖尿病を深く理解し、自己管理スキルを向上させるための入院プログラム。医師・看護師・管理栄養士・理学療法士など、それぞれのスペシャリストが患者をサポートし、ひとりでは難しい生活習慣の見つめ直しができるそうです。そこで今回は、糖尿病の学習入院に密着。日々健康に過ごすための血糖値管理術を専門家に教えてもらいました。
糖尿病とは?

糖尿病は、細胞に取り込まれるはずのブドウ糖が取り込めず、血糖値が高くなってしまう病気。初期は自覚症状がほとんどありませんが、血糖値が高い状態が続くと全身の血管にダメージを与え、心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる合併症を引き起こす危険があるそうです。
<糖尿病の診断基準>
糖尿病診断に使われるのは、健康診断の時にも測る「空腹時血糖値」と「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」。空腹時血糖値は、空腹時の血液中に含まれるブドウ糖の濃度を計測した数値。HbA1cは、赤血球中のヘモグロビンと結合したブドウ糖の割合で過去1〜2か月の血糖値の状態を示す数値。空腹時血糖値が126mg/dL以上、もしくはHbA1cが6.5%以上の場合、糖尿病と診断されるそうです。
糖尿病の学習入院について
糖尿尿の学習入院は、糖尿病のある人が各分野のスペシャリストから生活改善を学ぶ入院プログラム。保険適用で受けられ、費用は約12〜16万(※入院期間や施設によって異なります)。全国の糖尿病専門医がいる施設などで実施されているそうです。
<学習入院のスケジュール(一例)>
8:00 朝食&食事指導
9:00 体温・血圧測定
10:45 糖尿病教室
12:00 昼食&食事指導
13:30 運動教室または糖尿病教室
18:00 夕食&食事指導
19:00 自由時間(運動など)
22:00 就寝
各食事では管理栄養士からの指導、糖尿病教室や運動教室では医師や理学療法士から病気と運動療法についてレクチャーが行われます。症状などに合わせて最長14日間入院できるそうです。
糖尿病の学習入院(1)身体測定
まずは身体測定。身長・体重・体温・血圧・血糖値を確認します。この検査結果によって入院中のプログラムや食事内容が決まるそうです。
糖尿病の学習入院(2)糖尿病教室
糖尿病教室では、専門の医師による糖尿病についての講座が行われ、病気への理解を深めることができるそうです。
<糖尿病で血糖値が上がる原因は?>
食べ物が腸で消化されると、糖となり一時的に血糖値が上がりますが、糖尿病の場合は血液中に糖が取り残され、常に血糖値の高い状態が続いてしまいます。その原因は「インスリン」。インスリンは、血糖値が高くなると分泌されるホルモンで、筋肉や肝臓などに糖を取り込むよう促す働きがあります。インスリンがほぼ分泌できない人は「1型糖尿病」、インスリンの分泌量が少ない場合や効きが悪くなっている人は「2型糖尿病」で、日本人に多いのは2型糖尿病だそうです。
<インスリンの効きが悪くなる原因は?>
インスリンの効きが悪くなる原因は、肥満。先生によると、太れば太るほど脂肪細胞からインスリンの効きを悪くする物質が分泌されるとのこと。食事や運動療法が大切なのは、インスリンの効きを良くするためなのだとか。日本人のインスリンを分泌する能力はアメリカ人に比べるともともと低く、標準体重であっても栄養バランスの崩れなどによって2型糖尿病を発症してしまう可能性があるそうです。
糖尿病の学習入院(3)食事
学習入院で出された昼食は、和風おろしハンバーグ・カボチャのサラダ・カブの漬物・十八穀ご飯・キウイフルーツ。これらのメニューには、血糖値を上げ過ぎない様々な工夫がありました。
<(1)和風おろしハンバーグ>
肉類に含まれる動物性脂肪を過剰に摂ると、体脂肪が増加し、インスリンの働きを妨げる物質が増加する要因になってしまうそうです。そこで病院食の和風おろしハンバーグに使用しているのは鶏・豚のひき肉合わせて50gのみ。ボリュームを出すために木綿豆腐と刻んだ玉ねぎや長ネギを加えているのだとか。また、大豆に含まれる不飽和脂肪酸には、インスリンの働きを促進する効果が期待できるそうです。
<(2)カボチャのサラダ>
カボチャは炭水化物が多く含まれる野菜の1つ。そのため、カボチャの量は少なめにし、ボリュームが足りなくならないようにエノキを入れてかさ増しをしているそうです。
<(3)十八穀ご飯>
十八穀ご飯は、糖質の量を減らしつつ、豊富な食物繊維により血糖値の上がり方を緩やかにする効果が期待できるそうです。
血糖値を上げる日々の食事の落とし穴

<(1)朝食で主食を抜く>
朝食をしっかり食べない生活は、血糖値が上がりやすくなり、太りやすくなる原因にもなるそうです。
<(2)ダブル炭水化物>
炭水化物は糖でできている栄養成分のため、過剰に摂ると血糖値の急上昇を招きます。
そのため、ラーメンとチャーハンを一緒に食べるなど炭水化物を重ねて摂るのは、危険な食べ方なのだとか。ラーメンを食べる時はチャーハンではなく餃子にしたり、野菜がしっかりのったタンメンや五目麺などを選んだりすると良いそうです。
<(3)間食>
血糖値が高めの人は、少量のおやつであっても要注意。食後は血糖値が上がり、その後下がっていきます。各食事の間に時間が空いていれば血糖値がしっかりと下がりますが、おやつを食べると各食事の前に血糖値がしっかりと下がらず、より高い数値へ押し上げてしまう原因になるそうです。
<いつもの食事でできる!血糖値の上昇を緩やかにするコツ>
野菜があれば野菜から、またはたんぱく源のおかずを最初に食べます。その5分後からご飯・おかず・汁を順番に均等に食べる「三角食べ」をしましょう。野菜にふくまれる食物繊維や肉や魚といったたんぱく質を最初に摂ると、血糖値の上昇が緩やかになる効果が期待できるそうです。
他にもある!食事改善のコツ
<間食を食べても血糖値を上げない方法>
おやつをやめられない場合は、食事と食事の間ではなく、食事の時におやつを食べるとまとめて血糖値を下げてくれるのだとか。おやつを選択する際は、ナッツ類など糖質が少ないものを選ぶと血糖値が上がりにくいそうです。
<食べる回数を減らす方法>
ラーメンを食べる回数を減らしたいなど、特定の物の食べる回数を減らしたい場合は、まずどのくらい食べているかを把握し、食べる回数の目標を立てましょう。他にも特別なことをした時に食べるというご褒美制にするなど、一番やる気が出る方法で取り組んでいくと良いそうです。
糖尿病の学習入院(4)「運動療法」
運動教室では、理学療法士に糖分を効率的に消費する運動法を教えてもらいました。
<運動と血糖値の関係>
運動には、体内の糖といったエネルギー源を消費し、血糖値を下げる効果があります。しかし、運動習慣がないと消費しきれなかった糖分などが蓄積され、血糖値の上昇や肥満のもとになってしまうそうです。
<効果的に血糖値を下げる方法>
どの筋肉を使っても糖は消費されますが、筋肉が大きいほどたくさんの糖が消費されるそうです。身体のなかでも大きい筋肉が集中しているのが、太ももやお尻周りの下半身の筋肉。そのため、スクワット運動が最も効率的だそうです。
<糖分を消費しやすくなる効率的なスクワット運動>
▼肩幅に足を開き つま先は少し外側に向ける
▼おしりを後ろに下げるように屈伸をする
▼上記の動作を無理のない範囲で繰り返す
この運動で大切なのが、少ない回数でも良いので毎日続けること。毎日の習慣で自然と大きい筋肉が使われるようになり糖分を消費しやすくなるそうです。
<有酸素運動を組み合わせるとより効果的!>
スクワットなどの筋力トレーニングとウォーキングなどの有酸素運動を組み合わせると、血糖値を下げる効果がより期待できるそうです。
<血流アップも重要!>
運動効果をさらに上げるために大切なのが血流。身体の血流が良くなると、より筋肉へ糖を届けやすくなり効率よくエネルギーが消費されるそうです。そこで重要なのが、ふくらはぎ。ふくらはぎには、血液を全身へと循環させるポンプ作用があり、筋肉の柔軟性が重要だそうです。
<ふくらはぎの柔軟性を高めるストレッチ>
▼段差などにつま先をのせ ふくらはぎが伸びるように前に体重をかける
▼90秒間ふくらはぎを伸ばしたままキープする
▼同じストレッチを左右で行う
※無理のない範囲で行なってください
(2025年10月19日(日)放送 CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』より)
番組紹介

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