小細工してもバレる!バンドスコアの模倣公開で賠償金
音楽バンドのボーカル、ギター、ドラムなど全ての演奏情報をまとめた楽譜「バンドスコア」が模倣され無料公開されたとして楽譜出版社が訴えた裁判で、今年6月、東京高裁は被告側に1億6900万円の賠償金を命じました。ミュージシャンでもあるつボイノリオ。楽譜を作るには熟練の技と知識が必要とか。11月13日の『CBCラジオ #プラス!』では、CBCアナウンサー永岡歩とつボイノリオがこの話題について掘り下げました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く楽譜はどうやって作られていく?
楽譜が模倣され無断転載されたこの話題、そもそもバンドの楽曲はどのように作り上げられていくのでしょうか。
ミュージシャンであるつボイの代表曲「金太の大冒険」は、前もって楽譜を用意したものではなく、収録スタジオのセッションで作り上げた楽曲だそうです。
つボイ「テンポをこうして、ここんところを…というのをやっていました」
このように楽譜があるというよりはコードだけ、流れだけで、収録現場で仕上げていくスタイルもあれば、一方で楽譜通りに演奏してほしい人もいるので、アーティスト次第だということです。
採譜は職人技
最近の楽譜は、収録現場で完成した楽曲が世に出た後、改めて制作されることが多いとのこと。
これには楽譜に書きおこす採譜者の、音の多彩な聞き分けができないことには実現できません。
採譜者は楽器同士の重なる音を聞き、どの楽器の何の音階かを前後の音から推測して補います。これは楽器の特性や音楽理論を熟知してやっとできる技です。
永岡「『この楽器はドの後にシは出せないだろう、気持ち悪くなるだろう』ていうのが、知識がある人だから推察できてやれるということなんですね」
多大な時間や労力を要する採譜の無断模倣が許されれば、制作者側の売り上げ減少やスコアの供給機会が閉ざされ、音楽出版業界が衰退しかねません。
東京高裁も「音楽文化の発展を阻害しかねない」との懸念を示しました。
稼いでいるシステム
この記事を見て、つボイは「いま時だ」と思ったそうです。
模倣した楽譜を自体はサイトで転載しただけで、他人に売るわけではありません。
ただしアフィリエイトを利用し、サイトを訪問した人が見ただけで広告料が入るシステムのため、「見た人からお金をとっているわけではないのが今風の構造だなと思いますね」と語りました。
永岡「儲かってるのは一緒だろというわけですね。売ってるわけではないですけど。無料公開だもの」
プログラマーの無断転載対策
今回の訴訟では、原告側の楽譜と被告側の楽譜の誤りの箇所が一致していたことが模倣の証拠となりました。
これに対し、つボイは「コンピュータのソフトによくあること」と解説。
昔のプログラマーがやっていたのが「remコマンド」。
remコマンドの後にどんな言葉を入れても、プログラム自体にバグは出ないので、関係ない言葉を入れておきます。
プログラムを模倣された時、この言葉によって判明していたのです。
つボイ「『いやここの文章ってなんですか?僕が適当に入れたやつなのに、どうして同じものが?』となるわけです」
永岡「『コロッケ大好き』みたいなものをローマ字で打ったとして、『なんでここにもコロッケ大好きがあるんだ!』ていう感じ」
不正防止、コピー防止として使われていたこの手法を楽譜にも採用し認知させれば、抑止力になるかもしれません。
AIで更なる不正模倣をされる危険性
しかし最近はAIでなんでもできる時代となりました。
永岡「『Mrs. GREEN APPLEの曲をバンドスコアにして』と言ったら生成AIでできちゃうとなるとね」
またつボイによると、音だけ聞かせたらコードを出力する機能のものもあるんだとか。
本来は楽曲制作に役立てる技術かもしれませんが、悪用により創作物の発展が危ぶまれていきます。
最後につボイは『学ぶ』という言葉は『真似る』からきていることを話しました。
つボイ「創作の多くは他人の模倣から始まると言えます。黒板の前で先生を真似ることで学問が広がっていくので、学ぶと真似るは一体のこと」
しかし『真似る』ことを『稼ぐ』ことにしてはなりません。
『学ぶ』の過程を経て自身の技術を磨いた先に『稼ぐ』があるのではないでしょうか。
(ランチョンマット先輩)