名古屋の街はこう姿を変える!名古屋駅と栄地区の再開発に見る“明日”

街は生きものである。静かに人々の暮らしを受け止める日々もあれば、大きく姿を変貌させる時も来る。2025年(令和7年)春、名古屋の街が未来に向けて変わろうとする胎動が聞こえ始めた。
名鉄による再開発計画
名古屋鉄道が発表した名古屋駅一帯の再開発計画、これによって“玄関口”である名古屋駅エリアは大きく変わっていく。もともと名鉄の再開発計画は、2017年(平成29年)に発表されていた。南北400メートルわたる1棟の長いビルを建設する構想で、リニア中央新幹線の開通も視野に、2022年度(令和4年度)に着工する予定だった。しかし、そこで起きたのが世界中を席巻した新型コロナウイルスの感染拡大だった。計画は凍結されて見直しが行われ、今回、新たな計画内容が発表された。
大通りを跨ぐ「空中回廊」
再開発の対象エリア、全体の南北400メートルという規模は同じである。北は現在の名鉄百貨店から、南は日本生命笹島ビルまで、ここに新たなビル群を建てて“ひとつながり”として連結させる。太閤通をはさんで南側にあった名鉄レジャックのビルは、すでに取り壊されているが、残りも2026年度中には姿を消すことになる。新たなビルは地上170メートル級、注目は「空中回廊」だ。太閤通をはさんで北と南に新ビルが建設されるため、この2つを空中で結ぶことになる。広小路通からつながる太閤通という大きな通りを跨ぐ「空中回廊」は、辺りの風景を一変させるだろう。
姿を消す百貨店たち

新しいビルには、ホテルやオフィス、バスターミナル、そして商業施設などが入る。2027年度に着工して、2033年度から順次開業、全体の完成は2040年代前半という壮大な計画である。新たなものが生まれれば、姿を消すものもある。名古屋市民だけでなく、東海3県の多くの人たちから親しまれてきた名鉄百貨店は、2026年2月で閉店する。その並びにあって、多くの若者でにぎわう近鉄百貨店(近鉄パッセ)も同じく閉店。60年の歴史を持つ名鉄グランドホテルも、百貨店より1か月後に営業を終了すると発表された。
どうなる?ナナちゃん人形
名古屋駅前といえば、待ち合わせスポットの代表格が「ナナちゃん人形」である。1973年(昭和48年)に、名鉄百貨店から南への通路に置かれた6メートル余りの巨大人形は、その形でのお菓子やキーホルダーも作られるほどの名物である。多くの人たちが、待ち合わせの場所に選んで親しんできた。水着、サンタクロース、中日ドラゴンズのユニホーム、そして映画のキャラクターなどの衣装で、折々“変身”する姿も、人々を楽しませてきた。名鉄では「今後も街のシンボルとして何らかの形で残したい」と話している。
栄に登場!巨大ランドマーク

名古屋駅と競うように、栄地区も変わりつつある。町を歩いていると、建設中の巨大なビルが目に入る。「ザ・ランドマーク名古屋栄」、地上41階のビルである。211メートルという高さは、中部電力 MIRAI TOWER(テレビ塔)を30メートルも上回る。2026年3月に完成して、夏には開業を迎える。商業施設やレストランの他、シネマコンプレックスも入る。かつては名古屋東映やエンゼル東宝など、栄地区には映画館があったが、再び映画の灯がともる。さらにヒルトンホテルの高級ブランドで、創業者のファーストネームをつけたホテル「コンラッド名古屋」も入る。ビルは地下街と結ばれるため、新しい観光スポットになる。
栄の南に「多目的ホール」
名古屋市は、栄を「歩きたい街」と位置づけて、再開発を進めている。中日ビルと名古屋三越の間には、地下と地上を結ぶ“吹き抜けスペース”を作り、現在は細い階段で結ばれている部分を、より開けた空間にする。さらに、その南の「エンゼル広場」にはオープンテラスのカフェなどを誘致して、イベントがない日でも人があふれることをめざすと共に、「光の広場」には多目的ホールの建設も検討している。久屋大通公園の南エリアも大きく変わっていく。
新交通システムも走る

そんな名古屋駅と栄を結ぶ、新たな交通システムも登場する。専用のバスレーンを走るバスで「SRT(Smart Roadway Transit)」と名づけられた。「スマートに道路を通行する」という意味で、名古屋市オリジナルの名前である。2つの車両が繋がった連接バスで、通常の市バスの1.5倍、120人を同時に乗せることができる。車体の床も低く、乗り降りもしやすいため、気軽に利用できそうだ。2025年度中には運行開始の予定で、地下鉄とバスに加え、新たな公共交通機関になる。
リニア中央新幹線の東京~名古屋間の開通が、当初の計画よりも大幅に遅れる中、2026年にはアジア競技大会が開催される。国内外から多くの人が名古屋を訪れる。街が大きく変わろうとする、そんな息吹きが満開の桜を揺らしながら、そよいでいる。
【東西南北論説風(573) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】