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崩れた“4番・石川”そして“二・三遊間”構想の誤算~井上竜2025総括(野手編)

崩れた“4番・石川”そして“二・三遊間”構想の誤算~井上竜2025総括(野手編)
井上一樹監督(C)CBCテレビ

3年連続最下位という、球団史上でも最悪の低迷状態からの逆襲をめざす中日ドラゴンズ。新たに井上一樹監督が指揮を取った2025年(令和7年)ペナントレースが終わった。結果は4位と最下位は脱出したが、多くの課題が浮き彫りにもなった。新生・井上竜1年目の戦いをふり返る。今回はケガ人が相次いだ「野手編」。(敬称略)

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大誤算だった3人の内野手

新監督の1年目シーズン、打線を中心とした野手陣は、誤算に見舞われた。最も大きな誤算は、井上新監督が、春季キャンプから思い描き、期待していた“二遊間”と“三遊間”の崩壊である。セカンド・福永裕基、サード・石川昂弥、そして、ショート・村松開人。ファースト、外野手、そしてキャッチャーなど、青写真の段階だった中、この3人は、監督の頭の中で「レギュラー」として位置づけられていたはずだ。ところが、福永は二度にわたるケガ、石川は打撃不振とケガ、村松も打撃に迷いが出て、3人の姿は“勝負どころ”の夏には、1軍ベンチにいなかった。

福永は2度にわたるケガ

福永裕基選手(C)CBCテレビ

新たな背番号「7」を付けて、2塁の守備練習に打ち込み、新生・井上竜にとっては最大の“売り物”のはずだった「3番・セカンド」の福永。しかし、オープン戦で右ひざの靭帯を傷め、開幕には間に合わなかった。さらに、快復して復帰した試合で、今度は本塁突入の際に左手関節を骨折する大けがをした。悪いことは重なるものである。3年目の福永にとって、最も過酷なシーズンとなった。

石川は期待の「4番」から脱落

石川昂弥選手(C)CBCテレビ

福永の欠場以上に大きかった誤算は、「4番」を期待された石川である。細川成也という大砲がいながら、井上監督は石川に、新生チームの中軸を託した。しかし、開幕戦から一向に調子が上がってこない。ファン待望のホームランどころか、ヒットも出ない。打撃の不調は、守備にも影響した。明らかな失策もだが、ファールフライを譲ってしまうなど、目に見えないエラーも重なった。開幕から13試合で、石川は「4番」を離れて、2軍落ちした。終盤に1軍に復帰して、今季1号のホームランを打ったものの、脇腹を傷めて再び戦列を離れた。中心選手に続出した負傷者、チーム全体での対策は必須である。

村松の後半戦は2軍暮らし

村松開人選手(C)CBCテレビ

開幕前に、筆者が最も期待していた野手である村松も、7月末に2軍に落ちて、そのまま1軍に戻ることはなかった。明治大学野球部時代にはキャプテンをつとめていた村松。3年目の今季は、そのキャプテンシーを発揮して、ドラゴンズのリードオフマンになってほしかったが、残念なシーズンになった。

そしてもうひとり、「2年で年棒6億円」(推定)という契約で移籍2年目を迎えた中田翔は、結局2年目も“主砲”の仕事をまっとうできず、今季限りで現役を引退した。

上林の覚醒に竜党湧く

上林誠知選手(C)CBCテレビ

こんな誤算だらけの打線だったが、一方で活躍した選手も多かった。その筆頭は、福岡ソフトバンクホークスから移籍2年目の上林誠知である。井上監督から「もっとアピールを」と言われて、“直伝の”ピンク色サポーターを腕に巻いて、ヒットを量産した。ヒットだけではなく、ホームランも打てる。さらに盗塁もできる。オールスターゲームにも選出される活躍ぶりでシーズンを駆け抜けた。134試合に出場して、打率.270、ホームラン17本、盗塁27は立派な成績だった。

岡林は2度目の最多安打

岡林勇希選手(C)CBCテレビ

岡林勇希も躍動した。野手でただひとり、全試合全イニングに出場して、見事168本で最多安打のタイトルを取った。ドラフト3位のルーキー捕手である石伊雄太も、新人らしからぬ活躍で、後半戦はほとんどスタメンマスクをかぶった。肩は強く、打撃も勝負強い。ドラゴンズ待望の“正捕手”誕生だろう。

新外国人のジェイソン・ボスラーも、チャンスに好打を放った。数々のホームランも印象に残っている。中堅では、移籍2年目の山本泰寛が、村松に代わってショートに入り、攻走守にわたって味のある仕事ぶりを見せたことも忘れられない。ケガから復帰した細川成也も「4番」に座り、讀賣ジャイアンツに移籍した元・同僚、ライデル・マルティネスから2度も起死回生のホームランを打って、竜党を狂喜乱舞させた。

打線の課題は克服されず

昨季までよりは、よく打っているような印象だが、実は、打線に課題は多い。チーム通算打率は2割3分2厘でリーグ6位、総得点は403点でこちらも6位、ホームラン数は83本で5位と、最下位だった前年とそれほど変わっていない。

来季から、本拠地バンテリンドームは、外野に「ホームランウイング(仮称)」が新設されて、フェンスは現在の4.8メートルから3.6メートルへ低くなり、本塁から右中間・左中間への距離も現在の116メートルから110メートルへと短くなる。ホームランは間違いなく出やすくなる。ドラゴンズの野球が大きく変わる。

井上監督は2軍監督からの昇格だった。2軍の指揮官が1軍の指揮を取るケースは、他球団でも増えている。自分の目で見て、自分で指導してきた若手を1軍で抜擢するという、思わぬ“発掘”が期待されたが、監督1年目は“過去の遺産”で戦ってきた印象だ。たたき上げのリーダー、井上一樹ならではの“若竜”育成が、来季への大きな課題である。
                                                           
  
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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