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ドラゴンズファン至福のGW観戦記~ドーム5階席から立浪竜に送ったエール

ドラゴンズファン至福のGW観戦記~ドーム5階席から立浪竜に送ったエール

地下鉄車内にその声が流れた時、向かい側の席に座っていた父子連れの小学生らしい男の子の笑顔が弾けた。

「中日ドラゴンズの立浪です。バンテリンドームナゴヤはこちらです」

名古屋市営地下鉄で2022年5月から始まった車内アナウンス。立浪和義監督自らの声にファン心が高ぶる中、「ナゴヤドーム前矢田」駅のホームに列車は滑り込んだ。2022年5月7日の午後、阪神タイガースとの試合開始まで1時間を切っていた。

大野雄大“激投”の余韻

「サンデードラゴンズ」より大野雄大投手(C)CBCテレビ

ドームが近づくにつれて、いつもとは違う空気を肌が感じる。これまで数え切れないほど通っている球場なのに、どこか沸き立っている。それは大型連休で多くの観客がつめかけていることもあるのだが、何より前夜の余韻なのだろう。17時間ほど前に、エース大野雄大投手が見せた120球の熱投。延長10回2死まで29人の打者をパーフェクトに抑えた圧巻の投球の余熱だった。一夜明けてもそれはとても消せないほどの熱さだった。エースの投球はそのゲームだけでなく、間違いなくチーム全体を鼓舞する。若き主砲候補の石川昂弥選手のサヨナラヒットも加わって、球場内の興奮は続いていた。今年初めての配布となった新デザインの昇竜ユニホームに袖を通して、5階席に陣取る。さあプレーボールだ。

これぞ竜のクリーンアップ!

バンテリンドーム(C)CBCテレビ

ゲームはいきなり動いた。1回裏ツーアウトから、前夜の立て役者のひとり石川選手がセンター前ヒットで出塁すると、15打席ヒットがなかった4番ダヤン・ビシエド選手も続き、そして5番の阿部寿樹選手が鮮やかにタイムリーを放った。2死からクリーンアップの3連続ヒットによる先制点は、この日3年ぶりに「満員御礼」となったドームの竜党にも一気に火を点けた。同点に追いつかれた後の3回にも、前夜の2ベースが記憶に新しい三ツ俣大樹選手がヒットで出塁すると、ビシエド選手のバット一閃、力強いレフト線2ベースで、三ツ俣選手がホームイン。それもヘッドスライディング。元気なプレーこそが勝利への執念。こうした攻撃を俯瞰で楽しめるのは5階席の魅力だろう。

5イニング限定の効果は?

「サンデードラゴンズ」より松葉貴大投手(C)CBCテレビ

先発は松葉貴大投手。実は松葉投手は、立浪和義監督から“珍しい”ミッションを与えられている。「ドーム球場限定で5回まで」。指揮官によって「5イニング限定」と指定されたのだ。それは毎回のように好投していても6回以降に点を取られるという松葉投手の投球によるものなのだが、この日も5回表の阪神タイガースの攻撃を三者凡退であっさりと退けた。スコアボードに目をやると、ここまで63球。立浪監督は本当に替えるのだろうか?そう、本当に替えた。5回裏の攻撃は松葉投手からの打順だったが、代打に郡司裕也選手が送られた。周囲のドラゴンズファンの何とも不思議な歓声が、マスク越しに漏れてきた。

1点差を守り抜く竜の野球

「サンデードラゴンズ」より清水達也投手(C)CBCテレビ

その後の4イニングは、「これぞドラゴンズ野球」と言えるような圧巻のリリーフ投手ショーだった。中継ぎになって進境著しい清水達也投手、防御率0.00を続けている祖父江大輔投手、そして投球練習から150キロ超えの剛球を投げ込むジャリエル・ロドリゲス投手、それぞれが1イニングずつを完璧に抑え込む。まったく危なげがなく、その投球を心穏やかに楽しむ。そして9回表、場内にその名前がコールされる前に、ドーム自慢の106大型ビジョンに、背番号「92」ライデル・マルティネス投手のド迫力映像が流された。これを観るのは初めてだったが、なかなかの演出だ。そしてマウンドに上がったマルティネス投手は3人の打者をあっさりと抑えた。「VICTORY(ビクトリー!)」という力強いアナウンスが、満員のドームに響き渡った。

ドーム天井に描かれたのは?

バンテリンドーム(C)CBCテレビ

この日、バンテリンドームでは、めったに見られない特別なショーがあった。「スカイロールオープンショー」と名づけられたイベントは、普段は閉じられているドームの天井の一部を開けて、外光を採り入れる。その上で今度は少しずつ閉じながら、ある模様を描くというものだ。松葉投手とビシエド選手のヒーローインタビューに拍手を送った後、しばらく席で待機して、5階席からショーを楽しんだ。およそ6分間という紹介があったが、最初の3分間で天井が開く。ドーム全体に光が差し込んだ。その後は少しずつ天窓が締まり始める。そこでどんな模様が描かれるのかが楽しみのひとつ。試合中グラウンドを見下ろしていたファンが、今はドーム天井を見上げるという不思議で楽しい風景。そして、この日、ドーム天井に描かれたのは「錨(いかり)」だった。

翌日のゲームでは、鵜飼航丞と石川昂弥という若き右の長距離砲がアベックホームラン。名古屋から離れた甲子園球場では、ショートのレギュラーを狙う根尾昂選手が、プロ初の“二刀流”を披露した。「錨(いかり)」を上げて船出した“立浪丸”は大きく帆を張って新たな航海を続けている。その旅を共有するために、今季は度々ドームに足を運ぶことになりそうだ。                                 

【東西南北論説風(339)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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