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立浪“鬼”采配は星野監督を越えた?ドラゴンズ開幕1か月の通信簿

立浪“鬼”采配は星野監督を越えた?ドラゴンズ開幕1か月の通信簿

立浪和義監督が率いる新生・中日ドラゴンズ、2022年シーズンも開幕から1か月が過ぎた。ここまで22試合を戦い、12勝10敗、貯金2、現在リーグ3位。ファンの立場から見れば、まずは上々の序盤戦だと拍手を送りたい。

立浪采配のきびしさに息を飲む

ライト側の外野スタンドで、スタメン発表の場内アナウンスを聞いて驚いた。4月22日のバンテリンドーム、本拠地で初の讀賣ジャイアンツ戦。「2番、ショート、堂上直倫」。場内が少しどよめいた。開幕からショートを守ってきた京田陽太選手のスタメン落ち。自らの誕生日だった直前の試合で活躍し、お立ち台にも立った京田選手。しかし、打率は1割台と低迷していた。根尾昂選手のショート再コンバートとタイミングも重なり、この日に2軍から上げた堂上選手をいきなりスタメンで起用するという、立浪監督による厳しい叱咤の表れだった。さらにこの試合で、ダブルスチールを許して得点を与えた木下拓哉捕手は、翌23日にスタメン落ち。3安打を打ったにもかかわらず、重盗ミスが重要視された。ゲームを観戦したファンですら、立浪監督のきびしい采配に驚くのだから、ベンチには相当な緊張感が走ったことだろう。「勝つために妥協はしない」監督就任会見での言葉は着実に実行されている。立浪監督にとってのプロ最初の監督、“闘将”星野仙一さんの姿が脳裏をよぎった。

そんな立浪ドラゴンズのここまでの戦いを、「投手」「打撃」「新戦力」3つのポイントからチェックする。ただしペナントレースは始まったばかり、100点満点で何点など、数字での採点はしないのでご容赦いただきたい。(成績は2022年4月25日現在)

「サンデードラゴンズ」より高橋宏斗投手(C)CBCテレビ

躍動する19歳への期待~投手編~

12球団トップクラスと言われる投手陣。岩崎翔投手のけが、小笠原慎之介投手の新型コロナ陽性という誤算もあったが、それをカバーしながらの戦いは、概ね、順調と言えよう。チーム防御率は3.57、リーグ4位。まずまずだが、中でも印象に残る2人の投手を挙げたい。まず高橋宏斗投手。プロ初登板初先発こそ負け投手になったものの、4月7日の神宮球場では2度目の登板で6回を投げて初勝利。4月20日にも初勝利の相手だった東京ヤクルトスワローズ相手に2勝目を挙げた。何よりその投げっぷりがいい。ここしばらくドラゴンズに現れなかった10代の若き剛球投手である。もうひとりは、ジャリエル・ロドリゲス投手。高橋投手が先発陣に加わったため、今季は中継ぎに配置転換された。これが大当たりである。10試合を投げて8ホールド、ここまで無失点。1987年(昭和62年)から指揮を取った星野仙一監督が、郭源治投手を先発からリリーフに回して大成功したことを懐かしく思い出す。

「サンデードラゴンズ」より阿部寿樹選手(C)CBCテレビ

ミラクルエイトに沸くファン~打撃編~

ここ数年の大きな課題である打撃陣。2021年シーズンは、チーム打率リーグ最下位、ホームラン数と得点はリーグ最下位どころか12球団最下位だった。立浪監督は就任会見で「打つ方は必ず何とかします」と力強く語ったが、「必ず」という決意は形として表れている。監督自ら直接、各選手に打撃指導をする姿もすっかりおなじみになった。ここまでチーム打率.254と得点数83はリーグ3位、ホームラン数16本は4位。数字もそうなのだが、何より「打っている」という印象が残る。4月24日のジャイアンツ戦も序盤3回での5点差をはね返した。特に「ミラクルエイト」という言葉がいつしかファンの間でも浸透してきたように、終盤の8回に点を取っている。全83得点中、8回に挙げたのは20点と、粘り強い野球を見せている。レギュラーを期待された高橋周平選手がけがで出遅れたが、その代わりにセカンドに入った阿部寿樹選手の打撃が好調だ。勝負強さを含めて、ここまでの立て役者と言える。「あと1本が出ない」と嘆いた昨季までとは違う手応えを、ファンとしても感じている。やっぱり「打って点が入る野球」は観ていて楽しい。

「サンデードラゴンズ」より石川昂弥選手(C)CBCテレビ

将来の4番いよいよ覚醒へ~新戦力編~

「チームは変わらないといけない。スタメンには新しい顔を使う」という立浪監督の言葉通り、開幕以来、先発メンバーには新しい顔が並び続けている。20歳の岡林勇希選手と石川昂弥選手、そしてルーキー鵜飼航丞(こうすけ)選手。中でも石川選手は、次第に「将来の4番」候補の片りんを見せ始めている。本拠地での初ホームランをドーム観戦で目の当たりにしたが、あの力強い弾道は、まさに竜の新時代への“祝砲”のようだった。ここ数年、いやそれどころか、2011年の落合博満監督の下でリーグ優勝して以降、10年以上もファンが待ち続けた“新しい風”が、ようやく竜打線にも吹き始めた。この風がさらに勢いを増すことに期待したい。

バンテリンドーム(C)CBCテレビ

ここまで、勝っても負けてもワクワクする熱いゲームが続いている。ひとつ残念なのは、未だ収まらないコロナ禍もあってか、本拠地バンテリンドームのスタンドにまだまだ空席が目立つこと。ドラゴンズの野球自体は、しっかり芯が通った納得できるものになりつつある。今こそ球団そしてドーム関係者も一丸となっていろいろなアイデアを出し、集客アップへ魅力を増すことに注力してほしいと願う。立浪ドラゴンズの野球には、満員のバンテリンドームが似合う。                                  

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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