家庭で「防災対策」を実施した人は過去最高!その一方で悩ましいのは費用面

毎年9月1日の「防災の日」が近づくこの時期は、いざという時の備えについて考えてみる好機でもある。身近な家庭での防災対策が「進んでいる」という調査結果が発表された。
防災対策実施は過去最高
株式会社インテージは、全国15歳から79歳の男女5,000人を対象にした「防災意識」についての調査結果を発表した。それによると、家庭で何らかの防災対策を実施している人の割合は、51.8%で、過去最高の数字だった。2023年(令和5年)は47.1%、2024年(令和6年)は50.9%だったので、毎年着実に増えていることが分かる。
簡易トイレ購入が伸びる
具体的に、家庭でどんな防災対策を実施したのだろうか。前の年から伸びたものの1位は「簡易トイレ」だった。購入したという人は、前年比で2割以上増えた。2位は「避難場所を確認・家族で共有」と、いざという時に家族でどうするか、シミュレーションをしている家庭が増えていた。また、自治体などの防災訓練への参加も伸びている。2025年(令和7年)夏ならではの特徴としては「冷房がきいた施設で猛暑対策」と答えた人が、前の年より1割近く増えていて、今や猛暑が“災害”として受け止められていることも明らかになった。
対策をしたが自信がない

こうした家庭での防災対策が進む一方で、「防災対策ができている」と自信を持って答えた人は、わずか1.8%だった。「どちらかといえばできている」などの回答は増えていることから、“対策をしてはいるが不安は常に残る”という複雑な心理も浮き彫りになった。防災対策について「実感が湧かず優先度が低い」と理由を挙げた人が42%もいて、家庭において、一体どこまでの対策が必要なのかという、手探り状態で不安を持つ人が多いのであろう。
物価高が防災対策を直撃
今回の調査における厳しい現実は、費用面だった。防災対策に過去1年間にかけた予算は平均2,892円で、前の年よりわずかながら増えていた。しかし、「かけたい」と思う費用は5,473円とほぼ2倍になっていて、防災のためにお金を使いたいと思っていても、実際には使っていないことが調査から明らかになった。このところの著しい物価高も、防災対策に影響しているようだ。
手頃な防災商品も必要

調査を担当したインテージの市場アナリスト、依田亜矢香さんは「予算面でも費用面でも伸び悩みが続いている」という結果から「家計負担や日常の忙しさを背景に、防災の優先度を下げて後回しにしている」と現状を分析している。その上で、防災への継続的な啓発や支援制度の充実、さらに出口も見えない物価高の中、「手頃な価格で効果的な防災商品が購入できるような環境整備」も求めている。
阪神・淡路大震災から30年目、東日本大震災から14年目、能登半島地震からまもなく1年8か月、時間は経過しても、決して忘れてはならない記憶と教訓がある。近づく「防災の日」に向けて、ひとりひとりが防災について考えたい、そんな晩夏が過ぎようとしている。
【東西南北論説風(616) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】