未解決事件『名古屋市西区主婦殺害事件から20年~当時の手帳に綴られた夫の思い~』

未解決事件『名古屋市西区主婦殺害事件から20年~当時の手帳に綴られた夫の思い~』

サマリーSummary

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1999年11月13日、名古屋市西区で当時32歳だった主婦が何者かに刃物で刺されて殺害された事件は発生から20年が経ちます。「捜査の役に立てば」と現場となったアパートの部屋を20年間借り続ける夫、当時の手帳には妻への思いが綴られていました。

20年間、現場の部屋を借り続けている夫

突然奪われた家族の日常

1999年11月13日、名古屋市西区稲生町(いのうちょう)のアパートで高羽奈美子(たかば・なみこ)さん当時32歳が何者かに刃物で刺され殺害されました。現場には犯人のものと見られるB型の血液が残され、目撃証言などから警察は当時40代くらいの女が犯人とみて、延べおよそ7万人を投入し捜査してきました。

遺された家族はその後引っ越しましたが、奈美子さんの夫の高羽悟(さとる)さん(63)は20年経った今も、現場となった部屋を月5万円で借り続けています。

当時のまま残る現場の部屋

玄関には犯人のものと思われる血の痕が生々しく残っています。
高羽さんは「逮捕への手がかりになるかもしれない」という思いを込めて、部屋を残しているのです。

今も残る犯人の血の痕

高羽悟さん(63)
「これは航平(長男)のおもちゃ。このあたりが奈美子の料理本です。料理は自分で得意と言っていただけあって、『またきょう同じおかずか』というのは全く無かったです」

この部屋には忌まわしい記憶とともに家族の思い出も残っているのです。

職場の上司と部下だった高羽さんと奈美子さん。結婚生活はわずか4年でした。

わずか4年の結婚生活

当時を物語る夫の「手帳」

今回初めて見せてもらった高羽さんの手帳

高羽悟さん
「これが私の会社の手帳ですね。ただ、事件の年の手帳がどこかにいってしまったので約17年分」

今回、高羽さんの手帳を初めて見せてもらいました。
高羽さんは事件の2か月後には仕事に復帰していましたが、その合間に事件のあった名古屋市西区稲生町のアパートへ何度も通っています。

高羽悟さん(63)
「一週間に2、3度寄ったりして、『片づけないと』と思って、『きょうはここから片付けよう』と思って手にとると、片付けられなくて、ため息ついて、一時間ぐらいいて、『また今度にしよう』と元に戻して部屋を出て、仕事に向って…」

昼食をコンビニで買い、部屋で一人食べていたこともあるという

当時2歳だった長男は来年、社会人に

奈美子さんは手作りの離乳食を心がけていた

事件当時2歳だった長男の航平さんは2年後に幼稚園に入園しました。高羽さんはお遊戯会や参観日などに積極的に参加し父親として出来ることはしてきました。

息子の成長を見られなかった奈美子さん。2年間だけ綴られた育児日記は、息子と過ごした喜びであふれていました。

奈美子さんは母親としての喜びも奪われた

母親のいない子育て。思い悩むこともあったという高羽さん。

高羽悟さん(63)
「(息子の面倒を見ていた自分の)母親が泣いて帰ってきたことがありました。近所の人と世間話をしていた時に『母親のいない子は非行に走りやすい』と言われたみたいで。泣きながら帰ってきた時の母親を見て、こちらまで泣けましたので…。絶対そういうことは無いように、と思っていました。」

小学生になると航平さんは父親とともに事件の情報提供を求めるビラ配りに参加。
実は母親が殺害された時、2歳だった航平さんは母親の遺体のすぐそばで発見されました。

ビラ配りを手伝う航平さん(画像は当時12歳)

高羽悟さん
「航平は(テーブルの)ここか、ここに、座っていた」
航平さん
Q当時の記憶はある?
「全くない」

当時の記憶は全く無い航平さん。犯人に対しては…

航平さん
「母親に対する記憶が一切ないので、憎しみは強くない。もし自分がそれ(真実)を知って、記憶が戻ったりすると怖いというのはある。今から記憶を背負っていくのは重すぎる。」

長男・航平さんは今年で22歳、大学4年生になりました。来年4月からは新社会人、東京で一人暮らしです。今は友人たちと最後の学生生活を謳歌しているようですが…

航平さん
「多分、母親が生きていたらむちゃくちゃ怒られていると思う。これだけ好き勝手遊んでばかりだと怒られるんじゃないかな。『ちゃんと立派な大人になります』って言いたい」

22歳になった長男・航平さん。来年からは社会人

元捜査員の「執念」

当時の手帳には刑事の名前が

まだ見ぬ犯人を追い続けてきた高羽さん。
手帳には事件解決のため共に戦ってきた捜査員の名前も記されています。

元愛知県警捜査一課の岡部栄徳さん(61)は去年の3月に退職するまで未解決事件を扱う特命捜査係の班長として7年間この事件を捜査してきました。

『特命捜査係』として去年3月まで捜査してきた元捜査員

元愛知県警捜査一課 岡部栄徳さん
「高羽さんがいまだにこの部屋を借りている思いを考えると、一日も早く犯人を捕まえて見合った刑罰を受けて欲しい」

元愛知県警捜査一課 岡部栄徳さん
「高羽さんがいまだにこの部屋を借りている思いを考えると、一日も早く犯人を捕まえて見合った刑罰を受けて欲しい」

捜査の重要なカギとなったのが…

元愛知県警捜査一課 岡部栄徳さん
「ポツ、ポツという状態ですね。何メートルかおいて一滴、また何メートルかおいて一滴というように」

遺された家族はその後現場のアパートからおよそ500メートルに渡って残されていたという犯人の血の痕です。
足取りを掴むための重要な手がかりでしたが突然、途絶えていました。引っ越しましたが、奈美子さんの夫の高羽悟(さとる)さん(63)は20年経った今も、現場となった部屋を月5万円で借り続けています。

元愛知県警捜査一課 岡部栄徳さん
「一番単純に考えると、犯人がうまく止血した。落ちていた袋、新たなタオルを駆使して止血した。犯人が巧みに人通りの少ないところを利用して逃げている、というのが一番難しい。『逃げ得』『やり得』というのはありえない。どこかで結末をつけて終わらせてほしい。」

県警は「どんな些細な情報でも寄せて欲しい」と話している

手帳に綴られた夫の思い

2000年の手帳に残されたメモ

事件の翌年の手帳。高羽さんの当時の思いが吐露されていました。

高羽悟さん
「20年前の自分を思うと、何であれくらい不安だったんだろうと思うくらい不安だった。心配することない、周りが助けてくれると言ってあげたい。奈美子にかける言葉はなんだろ…。『犯人は誰よ、教えてくれよ、どんな奴に殺されたの』と言いたいですね」

20年前、突然断たれた妻との記憶。この部屋の日常を奪った犯人は今も逃げ続けています。

『犯人が捕まり真実が明らかにならない限り、
遺族はスタート地点にも立てない』と高羽さんは話す

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