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セントレア開港21年目へのテイクオフ!期待と課題は待望の第二滑走路

セントレア開港21年目へのテイクオフ!期待と課題は待望の第二滑走路
CBCテレビ:画像『写真AC』より「中部国際空港の滑走路」

二十歳の誕生日を迎えた中部国際空港(セントレア)では、ディズニーのポップアップ(期間限定)店や「20」をキーワードにした飲食店の特別メニューなど、いつも以上に華やかで楽しいムードに包まれている。伊勢湾に浮かぶ海上空港は、2025年(令和7年)2月17日に開港20周年を迎えた。

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実は珍しい海上空港

名古屋市の中心部から南へおよそ35キロ、知多半島の常滑市の沖にある中部国際空港は、3,500メートルの滑走路を持つ、24時間空港である。世界には、定期便が発着する空港が3,600ほどあるが、この内、海上空港はわずか9つしかない。“島国ニッポン”というわけではないのだろうが、5つが日本にある。中部国際空港は5つの内の1つ。愛称の「セントレア」は、中部地方の「central(セントラル)」と空港の「airport(エアポート)」を合わせたものである。

万博を追い風に建設

きっかけは、昭和40年代の半ばだった。中部経済連合会(中経連)が「大規模な国際貨物空港がほしい」という構想を発表した。昭和50年代に入り、当時の“空の玄関”だった愛知県豊山町の名古屋空港では手狭であり、「高速で大量輸送の時代、さらに国際化の時代には十分に対応できない」と、地元経済界や自治体から「新しい空港が必要」という気運が高まった。その熱意が国を動かし、平成に入った1991年(平成3年)に国の「第6次空港整備計画」に、初めて「中部国際空港」の名前が登場し、実現へ歩み出した。2005年(平成17年)の万博「愛・地球博」の開催が決まったことを追い風に、2000年(平成12年)8月に着工、建設がスタートした。

中部財界の力を結集

画像「開港20周年記念フェア」:筆者撮影

空港会社の株主構成には、この地方ならではの特徴がある。成田空港や関西国際空港が、国による100%出資なのに対し、セントレアは40%に留まっている。その一方で、民間が50%、自治体が10%を出資している。この“民間”には、三菱UFJ銀行、トヨタ自動車、中部電力、JR東海、名古屋鉄道、さらに、東邦ガス、デンソー、日本ガイシと、この地方を牽引する企業が顔を揃えている。空港会社のトップは、歴代すべてトヨタの出身だ。

空港建設の総事業費は、当初およそ7,680億円だったが、最終的には6,000億円を下回った。「トヨタ方式」とも言える徹底的な合理化によって、資材コストや作業工程の細やかな見直しを行った結果だった。開港後の経営にも、民間の活力を活かそうと、空だけでなく陸にも地元の力を結集し、ターミナルビルの飲食店にも中部地方で人気のお店が出店して、旅行客を喜ばせている。20周年フェアも各店舗が工夫を凝らしている。

新型コロナで大きな影響

開港以来、航空機の発着数も旅行客数も順調に伸びた。2019年(令和元年)には、国際線が世界42都市と結び週486便、国内線が19か所と結び、1日97便の離発着で、年間の空港利用者数も、国際線620万人、国内線640万人と、合わせて1,260万人で過去最高を記録した。しかし、そこで起きたのが世界中を席巻した新型コロナウイルスの感染拡大だった。国際線は一時ゼロとなり、翌2020年の年間利用者数は20万人にまで落ち込み、空港の経営は赤字に転落した。感染が節目を迎えて、2023年度3月期の決算は4年ぶりの黒字になり、2024年度は利用者数も1,000万人台に回復する見通しだ。

待望の2本目滑走路

画像「中部国際空港」:筆者撮影

21年目へ向かうセントレア、課題は「滑走路が1本しかないこと」だった。羽田の東京国際空港は4本、関西国際空港、北海道の新千歳空港、沖縄の那覇空港なども2本ずつある。中部圏の規模からして、2本目の滑走路は必需である。現状は「24時間空港」とは言え、深夜や早朝に離発着の合間を利用して、滑走路のメンテナンスを行っている。20年の歳月が経ち、しっかりした補修も必要だ。国土交通省は、セントレアが“二十歳の誕生日”を迎えた当日の2月17日に、新しい滑走路の着工を許可した。新年度からいよいよ建設が始まる。

欧米路線が戻ってくるか

2本目の滑走路は、新たな埋め立ては必要なく、現在の滑走路の東側にある誘導路を改修して建設される。長さ3,290メートル、2027年度には使用をスタートすることになる。最初は「代替滑走路」として、やがては2本の滑走路によって“完全な24時間空港”が実現する。国際貨物便やLCCも増便となる。空港会社では、2030年には、空港利用者数2,000万人を目標としている。かつては、英国、フランス、ドイツ、オーストリアなどのヨーロッパ、そして北米などへの直行便があった。そんな多くの国際路線を復活することができるか、利用者数を増やすための試金石となる。

同時に、人件費や資材の高騰、さらに、1年前に羽田で起きた日本航空機と海上保安庁機の衝突事故を受けた安全対策費などで、第2滑走路の事業費が、当初の145億円から226億円へと、一気に1.5倍に膨れ上がることが明らかになった。20年前の開港当時のように、コスト削減に向けて、再び地元の知恵を結集しなければならない時かもしれない。セントレア、21年目へのテイクオフは、夢と共に、数々の課題を搭載してのフライトとなる。       

【東西南北論説風(559)  by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

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