新たな背番号に活躍を誓う福永、松木平そして根尾~愛しのドラゴンズ!2025
井上一樹新監督を迎えたドラゴンズ、年が明けて、いよいよ新しいシーズンを迎える。来年には球団創設90周年という節目を迎える中、チームは3年連続最下位と、かつてない低迷期にある。ファン誰もが待ち続ける優勝ペナント奪還なるのか。年の初めの『愛しのドラゴンズ!2025』は、新しい背番号を背負う投打の3人にスポットを当てる。(敬称略)
新監督による背番号シャッフル
久しぶりの背番号シャッフルだった。就任まもなく、一部の選手について既存の背番号を変更する考えを明らかにしていた井上新監督だったが、年の瀬に発表された背番号の変更は、ここ数年ではなかった数の多さだった。
「背番号は選手の顔」と言われ、選手たち本人にとっても、応援するファンにとっても、ユニホームの背中に背負う数字は、大切なものである。活躍すれば、その数字は輝き、スタンドで同じ背番号を付けて応援するファンの数も増える。逆に目立たなければ、その背番号はくすんでしまう。最下位脱出に既存メンバーのさらなる覚醒が必要なだけに、今回のシャッフルに期待したい。
背番号「7」福永裕基
春季キャンプでは、背番号のキーホルダーやタオルなどのグッズが販売されて、毎年ファンの人気を集める。まもなくキャンプが行われる沖縄の地で、買い求める人が殺到しそうなのが「7」ではないだろうか。3年目を迎える福永裕基が背負うことになった。2022年(令和4年)ドラフトではドラゴンズから7位指名、実は12球団の最後となる69番目の指名でもあった。そして、69より1つだけ若い数字「68」の背番号で2年間プレーした。
専修大学でキャプテンを務め、日本新薬に進んで4年目26歳でのプロ入り、いわゆる“遅咲き”だった。しかし、攻守ともに気迫あふれるプレーは、チームに欠かせないものとなった。勝負弱さが目立つ打線にあって、ここぞという時のヒットは印象に残っている。
内野レギュラーと打線の中核へ
入団2年目の2024年シーズンは、開幕1軍を逃したものの、ウエスタン・リーグでしっかり実績を残し、いつのまにか1軍のレギュラーを手にしていた。自身初の「4番」も経験した。111試合に出場し、規定打席にこそ到達しなかったものの、通算打率3割6厘は立派なものである。まさに2年間の活躍によって勝ち取った一桁背番号と言えよう。背番号「7」の内野手と言えば、ホームラン王にもなった宇野勝さんや、韓国からのスーパースターだった李鍾範(イ・ジョンボム)さんが思い浮かぶ。井上新監督の指示もあって、セカンドの守備練習も行っている福永には、2025年シーズン、竜の内野陣としてしっかりレギュラーを確保し、パンチ力もある打撃によって打線の中核を担ってほしい。
背番号「29」松木平優太
「背番号29、できれば日本人の投手につけてほしいなあ」こう私につぶやいたのは鈴木孝政さんだった。3年前のことである。1974年(昭和49年)20年ぶりのリーグ優勝のシーズン、快速球によってすい星のように登場し、抑えとしても先発としても数々のタイトルを手にした“タカマサ”が背負った背番号「29」。鈴木さんの言葉を聞いた当時、「29」の背番号はキューバ人投手の背中にあり、その後、彼は米メジャー入りをするために、亡命という事態を経てドラゴンズを去った。
2024年は、内野手ルーキーだった辻本倫太郎が「29」をつけたが、今季から期待の投手である松木平優太が背負うことになった。タカマサさんもきっと喜んでいることだろう。
先発ローテーションを取れ!
1年前は、まだ育成選手だった松木平だが、シーズン半ばに支配下登録され、背番号「69」を与えられた。ウエスタン・リーグでは最多勝を走っていただけに、ファンは1軍でのデビューを今か今かと待っていた。そんな期待に応えて、松木平は1軍でも好投を見せた。“おばあちゃん子”だった松木平、プロ初勝利のお立ち台で語った祖母への感謝と嬉し涙は、多くのドラゴンズファンの心を打った。
その後も力のあるストレートにコントロールされた変化球を駆使して、松木平は“ゲームを作る”ピッチングを続けた。入団同期である高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)、さらに、ドラフト1位と2位で入団した金丸夢斗と吉田聖弥と共に、23歳の“同い年カルテット”として先発ローテーションに君臨してほしい。
背番号「30」根尾昂
入団7年目を迎える根尾昂が、背番号「7」に別れを告げた。甲子園の春夏連覇を果たし、ドラフトでの4球団競合の末、ドラゴンズに入団した根尾も、内野手に外野手に投手にと、立場は二転三転し、入団当時にファンが期待した待望の“全国区のスター選手”の道は遠かった。そんな根尾に対して、井上新監督が提案したのは背番号の変更だった。たしかに「7」を背負う投手は珍しい。新たな背番号は「30」と決まった。
球場の空気を変える選手
正直な感想を言うと、根尾と背番号「30」の組み合わせは、まだピンとこない。讀賣ジャイアンツのエースだった江川卓さんの「30」を例に持ち出す声もあったが、ドラゴンズの歴代背番号「30」は、3年連続の首位打者を取ったアロンゾ・パウエルさんの印象が強い。投手では郭源治さんも背負ったが、郭さんはその後の「33」のイメージが強い。背番号「30」を根尾が自分のものとできるかどうか、おそらく井上監督も、それを期待しての背番号変更だろう。
2024年シーズンは先発投手として歩んだ根尾だったが、できれば全試合ベンチに入っていてほしい。それは“リリーフ投手として”である。根尾は“球場の空気を変えることができる”貴重な選手である。だからこそ、その強みを発揮できるポジションに期待したい。
今回の背番号シャッフルを受けて、新たな数字を早く自分の「顔」にできる選手が多ければ多いほど、井上ドラゴンズの上昇気流は高まっていく。まずは2月1日、キャンプインでの新背番号ユニホームお披露目が楽しみである。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。CBCラジオ『ドラ魂キング』『#プラス!』出演中。