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竜のドラフト10年史(7)~清宮ドラフトで竜の指名は即戦力右腕・2017年

竜のドラフト10年史(7)~清宮ドラフトで竜の指名は即戦力右腕・2017年

ドラフト会議には夢とドラマがある。1965年(昭和40年)に始まったプロ野球のドラフト会議は、2021年に57回目を迎える。球団創設85周年を迎えた中日ドラゴンズにも、ドラフトによって数多くの選手たちが入団し球団史のページを飾ってきた。2011年1位指名は高橋周平、そして2020年1位指名は高橋宏斗、奇しくも「高橋から高橋へ」となったドラゴンズ最近10年間のドラフト史をシリーズで探訪する。(敬称略)

高校生捕手か即戦力投手か

ドラゴンズは1位指名に揺れていた。どの球団もほしい即戦力の投手、本拠地に近い静岡県浜松市には鈴木博志(ヤマハ)という若き剛腕投手がいた。一方、なかなか固定できずに毎年の大きな課題であるキャッチャーには、夏の甲子園で大活躍した中村奨成(広陵高校)がいた。どちらにするか?1位入札は中村だった。直前の甲子園大会で、あの清原和博(PL学園高校)が持つ大会最多本塁打記録を更新する5本のホームラン、その印象が強烈だったのだろう。抽選では中村の地元である広島東洋カープに敗れ、鈴木を指名し直して獲得した。しかし、ドラフト会場で森繁和監督のインタビューを聞きながら、雄弁に鈴木の投球を分析する姿から、監督が本心から欲しかったのは、実は外れ1位だった鈴木の方だったのではと確信した。

和製キンブレルを夢見て

鈴木博志には、目標にしているメジャーリーガー投手がいる。クレイグ・キンブレル。2010年代を代表するクローザーで、ボストン・レッドソックス時代の2018年には史上最年少で300セーブを記録した。そんなキンブレルにあこがれて、希望した背番号は「46」。ドラフト1位指名の投手にしては、珍しく大きな数字だった。鈴木はルーキー年に中継ぎとして53試合に登板、翌2019年には新監督に就任した与田剛からクローザーを任された。キンブレルを真似た投球スタイルを披露しながら、前半だけで14セーブを挙げたものの、その後は失速。「和製キンブレル」確立は、残念ながら未だに成就していない。まだ24歳の若さ、自信を持って持ち前の剛球を投げ込む日を待っている。

2017年ドラフト総括

「清宮ドラフト」と呼ばれたように、このドラフト会議は、高校通算111本塁打を記録したスラッガー清宮幸太郎選手(早稲田実業高校)に何球団の指名があるのか、どのチームが獲得するのか、大きな注目が集まっていた。結果は7球団が1位指名をして、北海道日本ハムファイターズが抽選に勝った。「やっぱり日本ハムか」と記者席でも歓声が上がった。毎年果敢に指名に挑むファイターズに、野球の神様も微笑んだと思った。2004年はダルビッシュ有、2007年は中田翔選手、2010年は斎藤佑樹投手、2011年には讀賣ジャイアンツ希望の菅野智之投手を指名して入団を拒否された。それでも翌2012年、メジャー志向で各球団が敬遠した“二刀流”大谷翔平選手を指名して入団させた。その貫かれた姿勢にあらためて拍手を送ったドラフトだった。

竜指名選手の現在地は?

「中日ドラゴンズ2017年ドラフト指名選手一覧表」(C)CBCテレビ

1位で社会人の即戦力投手を獲ったドラゴンズは、2位以下で5人の有望な高校生選手を指名した。2位の石川翔、4位の清水達也、そして6位の山本拓実、この3投手への期待は高い。いずれも1軍マウンドを経験した。次はそのマウンドに定着してほしい。3位の高松渡は、当初はプロとしての体力不足も指摘されたが、その“足”には素晴らしいものがあった。2021年シーズンは開幕から1軍に定着して、ダイヤモンドを気持ちよさそうに駆け回っている。5位の伊藤康祐は地元の名門・中京大中京高校出身の外野手。後半戦は1軍ベンチ入りした。2017年ドラフトは、将来ある戦力を多く獲得した“種蒔きドラフト”と言えるだろう。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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