荒木雅博の意思を継いだ進化!電光石火の神走塁を高松渡の本人解説で振り返る!
「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム
プロ野球の面白さの一つは年間に143試合をも行って優勝を決めることにある。それ故に負けても価値のある試合、勝っても苦境に立たされる試合があるから複雑で人間味があって面白い。それでもファンとしては、一つの負けが耐えられない日だってある。そんな日はドラゴンズあるあるでも取り上げられるように、癒しを求めて過去の栄光であるアライバコンビプレーなどを見返してしまいがちだ。そんな悔しい夜を過ごしたファンなら必ず見たことのある荒木雅博の神走塁の動画が、なんと一つの勝ち試合さらには未来のドラゴンズの希望に繋がっていたのだ。あの辛い夜に未来の希望の伏線を見せられていたなんて、どれだけ感情を動かされればいいの?そんなわけで今週のサンドラコラムでは、光を紡いで眩しい未来を見せてくれた高松渡選手の特集を振り返ります!
異次元の神走塁を高松渡の本人解説でディテールまでくまなく振り返る!
4月22日のベイスターズ戦、今シーズンの特別ルールにより延長なしの最終回となる9回表0-0で迎えた場面2アウトで出塁した平田良介の代走として送られたのが高松渡だった。その一塁ベース上、緊張感の高まるチャンスでの心境はこうだ。
「ピッチャーのクイックも早かったし、なかなかスタートは切れないと思ったのでミスとか隙を逃さずにいこうという考えはありました。」
その後2ボール2ストライクと追い込まれた状況で、木下拓哉が放ったのはセンターに抜けそうなあたりの難しい位置のショートゴロだった。
「ショートがボールを離したときくらいに、低いなと思ったのでー度に走っていく準備はしていました。」
高松の読み通り、一塁に送球されたボールはグラブから転々とこぼれていった。
「確実にボールがそれたのだけはわかっていたので、(ホームまで)行くしかないという考えで行きました。最後は、絶対セーフになって1点取るという気持ちがあったので英智コーチが回しているのを信じて突っ込んで行きました。」
一塁手が何とか追いついて本塁にボールは投げられた、ボールかランナーかどちらが先に到達するか緊張感や高揚感が一気に高まった瞬間。
「キャッチャーがベースよりファースト側にいたので、キャッチャーの後ろに瞬間的にスライディングしていきました。手って自由に動くじゃないですか。なんで頭からの方がセーフになるだろうと思って。」
その一瞬、一番冷静だったのは高松だっただろう。そして次の一瞬にファンの歓声とともに全てが解き放たれた。
「ホームベースにスライディングした時に叫んじゃったと思うんですけどそれくらい嬉しくて。今年まで全然一軍で出る機会がなかったんですけど、ようやく一軍でチームを勝利に導けるようなプレーができたのかなと思いました。」
雄叫びで目覚めさせられた鮮やかなワンプレーにデジャブなような感覚と、未知の期待感を両方感じてしまった。
高松渡、入団時の苦心からここまでの道のり
2017年滝川第二高校からドラフト3位で「もうとにかく足です。」と中田スカウトや、所属していた野球部の監督にも圧倒的な支持を得る脚力が魅力の選手だ。高校時代50m5秒8の俊足と巧みなバットコントロールで滝二のイチローと呼ばれた。入団時にはまずは体づくりを目標にそのポテンシャルを温めていた。抱えていた腰痛などもありプロ入りから3年間で一軍出場は代走で2試合のみであった。
「ずっと一年目から体力がないと言われているんですけど、体力がないと練習量も他の選手より劣ることになっちゃって技術面もなかなか向上できないところがあったり自分としても悔しい思いはいっぱいありました。」
そんな高松に目をかけてくれたのが当時二軍にいた荒木コーチ。早出練習に付き合って体力づくりを習慣づけさせることや、OBの証言によれば高松にお茶漬けを買ってきて何とか食事量を確保できるように目をかけていたという。荒木コーチがそこまでして高松を育てたかった理由は、他の人にはない脚力のポテンシャルを誰よりも発揮してほしいと願っていたからだ。
4年目の転機、機動力野球で与えられた最大のチャンス
身体も徐々に大きくなりファームでも結果を残しつつあったなか、転機は訪れた。与田監督が機動力野球をテーマに掲げて、高松の活躍する舞台は目の前に用意されたのだった。
「1番の僕の武器が足なのでこのチャンスを逃したらヤバいというかダメだと思っていました。」
キャンプ終盤に一軍に昇格した高松は目にかけてもらっていた荒木コーチとともに徹底的に走塁を磨いた。その甲斐もあり4年目にして初めての開幕一軍入りを果たした。開幕戦でのプロ初盗塁をマークした。
「緊張感があったのでいい形で自分の世界に入れたのかなと思います。ヒットを打つより自分としては嬉しかったですね。」
また4月10日のスワローズ戦でキャッチャーフライでのタッチアップを見せた。これに対して通算381盗塁を記録した足のスペシャリスト赤星氏はこう絶賛する。
「自分の判断で行っている。コーチがどうのこうのではなく。センスがありますよね。」
その時の走塁を高松自身はこう語る。
「これに関しては僕が荒木コーチの神走塁の映像を見て、フライが上がった時に荒木コーチの走塁が頭をよぎってこれはいけるんじゃないかと思ってそれが活かされました。」
高松のこのプレーは、荒木コーチが残した記憶の中で輝く過去をしっかりと繋ぎながらも新しい1ページをまた描き始めていた。高松自身の塁上で見せる振り切った覚悟と、それをもとに走り出すエンジンで颯爽と魅了していってくれるだろう。
「自分としては後がないと思っているので、攻めるしかない、攻めていけという感じです。将来的には荒木さんみたいになれたらいいですね。」
谷繁氏が高松に期待する「自分の特徴を活かす」というのも高松自身の生まれ持ったキャラクター、積み重ねた経験や気持ち全てを溶かし込んだ高松の足で魅了してほしい!ドラゴンズの歴史を紡ぎ、さらにまだ見たことのない境地へ高松は連れて行ってくれるだろう!荒木コーチと二人三脚で得た初速から、電光石火のごとく加速して未来を駆け抜けろ高松渡!
澤村桃