惜別 山井大介と藤井淳志が残したもの、未来に向け打撃課題へ立浪和義・井端弘和の提言
「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム
10月に入り自力優勝の可能性が絶え、シーズンの終わりが目前に迫ってきた。そうするとドラフトをはじめとした来季に向けてのイベントが動き出す。それでも、終わりは始まりに紐づいてチームはまた新たなドラゴンズとして出発する。そのチームを更新する動きの中でチーム、ひいては球界を退く選手との別れがある。今週のサンドラでは、長年にわたりドラゴンズで印象的な活躍をした山井大介投手、藤井淳志選手の軌跡をめぐり、来季に向けての展望を立浪、井端が提言する構想を特集する。
完全試合、ノーヒットノーラン記憶に残る山井大介投手引退
「本当に最後になるかもしれないし、そのつもりでチームの勝利に貢献できればと思います。」
こう語る山井大介は今シーズンでユニフォームを脱ぐ。2001年に河合楽器の廃部に伴い久本祐一とともに入団。プロ一年目から31試合に登板し6勝を挙げ即戦力としての活躍を見せ先発リリーフと様々な場面で活躍、2014年には最多勝、最高勝率の二冠を手にする。近年で最も印象的な試合であろう、完全試合リレーによる日本一決定の試合を8回まで投げたのも山井であった。2013年には自身でノーヒットノーランも達成している。調子が噛み合った時にはそれを期待してしまうようなキマったピッチングで試合を作ってくれる投手だった。
そんな山井が、解説者となった吉見一起と今年のキャンプでこんな会話をしていた。
山井 「(引退してから)野球やりたくなってこない?」
吉見 「いや全く思わないです。」
山井 「思わない?!」
吉見 「はい!」
山井 「ウソや。」
吉見 「まったく思わないです!」
山井 「やり切ったな。」
今シーズン二軍成績、19試合7勝5敗防御率3.94 チームトップの勝利数を誇った。しっかりと二軍の試合を投げ続けた中で、山井は20年の現役生活の幕を閉じ引退を決意した。山井は来年のキャンプで、どう感じると想像して決断したのだろうか。
地元豊橋での活躍、流れを我がものにするパワーを持つ藤井淳志選手引退
藤井淳志は2005年大学・社会人ドラフト3位でドラゴンズに入団。一年目から開幕スタメンを勝ち取り、身体能力の高さを生かした大胆なプレーで魅了した。2009年には114試合に出場し打率.299と成績を残し、通算で1093試合出場634安打273打点45本塁打という成績を残した。
2014年には地元豊橋市民球場でプロ入り初のサヨナラホームランを放ち、翌年も逆転3ランホームランで試合を決め、特殊能力のように豊橋で覚醒する力を見せつけた。そのお立ち台では「豊橋大好きです!」と叫び、地元に愛されているという不思議な空気感をファンにもチームにも与えられる数字だけで見る成績以上に心に刻まれる選手であった。
山井大介投手、藤井淳志選手の引退セレモニーは10月13日スワローズ戦で行われる。見ているファンに与えてくれた感動を、大きな拍手でしっかりと二人の選手に返して見送りたい。
立浪和義、井端弘和が未来のドラゴンズに向け提言
「このサンドラという番組もそうですけど、ちょっと優しいんでね。いいとこ探してやろうとするでしょ。悪い時は叱咤激励も大事だと思う。」
こう語る立浪が向ける矛先は、今年のドラゴンズの得点371、打率.238、本塁打67とすべてリーグワーストの成績だ。これを打開していくために、井端とともに『打線の強化』と『若手の起用』の課題について提言する。
課題1『打線の強化』
先の通りの成績で育成も必要だが、新たに入る選手で起こる変化に期待を寄せてしまう。その要素も汲みながらチームに必要な選手を議論する。
―ドラフト指名はこんな選手を!
井端
「内野手も外野手も打てる選手をとってほしい。」
立浪
「長打を打てる可能性を秘めた選手をとってほしいですよね。」
―強化すべきポイントは?
井端
「ポジションで絞るのではなく、打てる選手なら獲得してからポジションを変えたりして守れるようにしていけばいい。」
立浪
「2、3年後に一軍で活躍する、スワローズの村上宗隆のようになる可能性を秘めた選手を獲っておかないといけない。根尾昂や石川昂弥など可能性を秘めた選手をここ数年獲得しはじめた。強かったときのドラゴンズは高校生野手をほとんど獲得しなかったのでその皺寄せが今来ている。」
―助っ人外国人はこんな選手を!
立浪
「ドラゴンズの現状を考えると、レフトかライトでクリーンアップを打てる長打力のある選手」
井端
「ブランコやT・ウッズくらいのパワーは欲しい。ホームランを30~40本打つ打者が4番にいてビシエドが5番6番とかにいたら迫力ある打線だなと思いますよね。」
立浪もベイスターズのオースティンを例に挙げ、的確に捉えられて長打力もある選手を評価した。
―1999年の優勝にも貢献した李鍾範(リー・ジョンボム)さんの息子、韓国プロ野球で歴代最多179安打を記録した李政厚(イ・ジョンフ)選手について
井端
「いい選手ですね。日本のエース、オリックスの山本投手からフェンス直撃のヒットも打ちましたし。」
立浪
「お父さんより良いよね?」
井端
「(入ってくれたら)ライトのレギュラー不在問題が解消される。」
まとめるとドラフトで長打力が見込める選手を獲得し育成しつつ、ライトに長打力のある助っ人を獲得できればベストという考えだ。
課題2『若手の起用』
今シーズンはタイガーズ佐藤輝明、ベイスターズ牧秀悟、カープ栗林良吏と一年目から活躍する選手が目立った。しかしドラゴンズでは、ルーキーはもちろん若手でレギュラーを掴んだものはいなかった。ファームで鍛えるべき課題は前提としてあり、そこをクリアした上で一軍での若手起用について議論する。
―来シーズン使うべき若手は?
立浪
「魅力があるのは石川昂。ただずっとケガをしてるのが大きな問題で、ケガをする選手はいい選手とは呼べないですから。(井端は)デッドボールで骨折したことないでしょ?自分らはもちろんホームラン打つバッターじゃないからそこまで厳しい内角攻めはなかったけど、石川もそうですけど今の野球そんなに攻めが厳しくないですから。自分らのときはまだ当てられましたもん。(横浜時代の)谷繁さんが足元に構えてましたよ。ケガしたら、競争の中にも入れない。ただ、ボールを遠くに飛ばす力はありますし、打つポイントを覚えたらすごく可能性を秘めている選手だと思います。ドラゴンズの4番打者でホームラン30本以上ですよね。」
井端
「根尾選手と土田選手には競争してほしい。(根尾選手は内野?)本人が内野やりたいと言ってますんで、内野をやった方がいいと思う。」
―今シーズン一軍・二軍の入れ替えについて
井端
「レギュラーが不調になったら、ベンチ(控え)ではない。二軍行って試合に出る必要がある。ダメだったら、ベンチにいても良くはならないと思うんで、二軍で試合に出た方が状態が上がる可能性がある。」
立浪
「選手のやりくりは大変だったと思うが、『これから楽しみだな』とか『レギュラーを取れる可能性があるな』という選手はもうちょっと使い続けて欲しかった。最低10~20試合はね。調子が悪くなった時にどうなるのか、そこを見ないとレギュラーとして使えるか判断できない。選手も首脳陣に『今はダメだけど使っていたらモノになる』と感じさせないと使ってもらえない。」
―若手を起用する理想のオーダー
井端のオーダー
1番ショート 京田
2番センター 岡林
3番サード 高橋
4番ライト 石川
5番ファースト ビシエド
6番レフト 大島or郡司
7番セカンド 根尾or土田
8番キャッチャー 木下
井端
「郡司選手は外野でもありじゃないかなと。打撃が良いし、ボールへの対応が上手い。ライト石川は迷ったんですよ、イメージはカープ鈴木誠也でタイプ的にはそんなふうになってくれたら良いという願望もあって。4番バッターになって欲しいということで、ポジションは後からでいい。ここに外国人選手が入ってきたら厚みも出てくる。」
立浪のオーダー
1番センター 大島
2番ショート 京田
3番サード 高橋
4番ファースト ビシエド
5番レフト A・マルティネス
6番キャッチャー木下
7番セカンド 石川
8番ライト 三好or岡林or根尾or伊藤
立浪
「5番は新しい外国人でも良いが、A・マルティネスもまだまだ良くなると思う。伊藤康祐も良い選手だと思います。打ち方もしっかりしているし右方向にも打てる、使っていたら井端さんのような2番打者になれる可能性がある。岡林選手はセンスが良い、足も速いし、肩も強い。三好選手は今年キャンプで評判良かったが少し苦しんでいる。でも、足が密かにチームで一番速い。この辺の若手が頑張って2番に入ってくる可能性もある。」
そう評価しつつも、まだレギュラーではなく期待されている状態であることに苦し紛れですよ!と笑いながらも苦言を呈する立浪。そんな現状を個々の課題を乗り越えた上で、起用したいと思わせる魅力を発揮して、残り少ない貴重な公式戦で経験を得て来年に向けたフェニックスリーグやキャンプなどでその力を伸ばしてほしい。課題はあるが、引退する藤井選手がファームで一緒に戦う中で活躍を期待する若手としてあげていた、伊藤、土田という選手が一軍の試合を経て新たな課題を見つけている。苦しい時ほど、向き合えば大きなものが得られると信じて闘うしかない。引退する山井大介、藤井淳志も戦い続ける姿勢をしっかり見せてきただろう、その報いが次世代の選手たちから受けられることを見守りつつ応援したい。
澤村桃