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竜のドラフト10年史(6)~柳裕也と京田陽太そして綺羅星たち・2016年

竜のドラフト10年史(6)~柳裕也と京田陽太そして綺羅星たち・2016年

ドラフト会議には夢とドラマがある。1965年(昭和40年)に始まったプロ野球のドラフト会議は、2021年に57回目を迎える。球団創設85周年を迎えた中日ドラゴンズにも、ドラフトによって数多くの選手たちが入団し球団史のページを飾ってきた。2011年1位指名は高橋周平、そして2020年1位指名は高橋宏斗、奇しくも「高橋から高橋へ」となったドラゴンズ最近10年間のドラフト史をシリーズで探訪する。(敬称略)

明治大学の主将エース獲得

ドラゴンズとしては、即戦力を期待しての指名だった。明治大学のエースにして主将の柳裕也である。1位入札では横浜DeNAベイスターズとの一騎打ちとなったが、森繁和監督が当たりくじを引いた。「明治大学」「エース」「主将」と言えば、ドラゴンズには、星野仙一、そして川上憲伸という名投手がいた。さらにさかのぼれば“フォークの神様”杉下茂が君臨した。柳には“竜のエース道”が引かれていると、ファンとしては確信した。春季キャンプ地の沖縄で会ったTBSスポーツ局の幹部から、「ドラゴンズは良い選手を取った。人格も力量も素晴らしい」と柳のことを褒められた。嬉しかった。背番号「17」を背負った柳は着実に歩みを続けている。2021年シーズンは開幕からローテーションの柱として、安定したピッチングを続けている。奪三振王などタイトルも必ず獲ってほしい。

力強さとスピードの京田

2位までよく残っていてくれた。ドラフト会議を見ながら、ファンとしても喜んだのが、京田陽太(日本大学)だった。走攻守三拍子そろった遊撃手。もうひとり、地元には吉川尚輝(中京学院大学)という素晴らしい内野手がいたが、讀賣ジャイアンツが1位で指名した。背番号「51」を背負った京田は、前のシーズンにショートのレギュラーを取った堂上直倫から、そのポジションを奪うほどの力を発揮した。開幕戦にもスタメンで初出場し、初安打も記録した。京田陽太のスピードと力強さには目を見張った。グラウンドを駆け抜ける姿は久しくドラゴンズになかった“躍動感”だった。ルーキー年は、長嶋茂雄さんの新人記録に迫る149安打を打ち、23盗塁と共に大活躍し、新人王となった。残念なことはルーキー年をピークに成績が下がっていることである。大いなる奮起に期待したい。

2016年ドラフト総括

創価大学の剛腕投手・田中正義に注目が集まった。広島東洋カープ、讀賣ジャイアンツ、北海道日本ハムファイターズ、福岡ソフトバンクホークスそして千葉ロッテマリーンズの5球団が1位指名して、抽選の末、ホークスが指名権を獲得した。驚いたのは外れ1位の抽選である。桜美林大学の佐々木千隼投手をめぐって、ホークス以外の4球団に加え、柳の抽選に敗れた横浜DeNAベイスターズが参画し、外れ1位も5球団による抽選になった。佐々木は首都大学リーグのエース、最初の1位入札でもおかしくないほどの実力の持ち主だった。結果、マリーンズが獲得した。もうひとつ、このドラフトで注目されたのは阪神タイガースが、吉川そして京田の指名を見送り、白鴎大学の大山悠輔を単独指名したことだった。タイガースの4番を打つなど、現在までの大山の活躍を見るにつけ、虎の好指名が印象に残っている。

竜指名選手の現在地は?

「中日ドラゴンズ2016年ドラフト指名選手一覧表」(C)CBCテレビ

2015年に続いて、その後の歳月からふり返っても、ドラゴンズにとっては大成功のドラフトだった。「綺羅星のごとく」と言えるだろう。3位の石垣雅海は、もうとっくに1軍で活躍してもおかしくないスラッガー。4位の笠原祥太郎は、開幕投手をつとめるほどに成長した左腕。5位では地元愛知の東邦高校のエースで4番だった藤嶋健人、今やなくてはならない中継ぎ陣のひとりである。
1位の柳、2位の京田と共に、現在のドラゴンズの中核を成す選手たちを獲得できたドラフトだった。そんな中で残念なのは、育成選手として指名されて入団した木下雄介さんである。後に支配下選手登録されて、将来を嘱望されていた右腕は、2021年シーズン中に急逝した。ドラゴンズブルーの空の上から、同期たちの活躍を見ていてほしい。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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