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竜のドラフト10年史(5)~甲子園優勝左腕その名は小笠原慎之介・2015年

竜のドラフト10年史(5)~甲子園優勝左腕その名は小笠原慎之介・2015年

ドラフト会議には夢とドラマがある。1965年(昭和40年)に始まったプロ野球のドラフト会議は、2021年に57回目を迎える。球団創設85周年を迎えた中日ドラゴンズにも、ドラフトによって数多くの選手たちが入団し球団史のページを飾ってきた。2011年1位指名は高橋周平、そして2020年1位指名は高橋宏斗、奇しくも「高橋から高橋へ」となったドラゴンズ最近10年間のドラフト史をシリーズで探訪する。(敬称略)

1位指名は甲子園の優勝左腕

ドラゴンズが1位指名で獲得したのは、夏の甲子園、その優勝投手である左腕・小笠原慎之介(東海大相模高校)だった。最初の1位入札は、県立岐阜商業高校の投手である高橋純平だった。ドラゴンズ地元の岐阜県出身、大型右腕として球団も早くから注目していた。
しかし、高橋には、福岡ソフトバンクホークス、北海道日本ハムファイターズと3球団が競合。抽選の結果、ホークスが高橋の指名権を得る。2度目の抽選でも、ドラゴンズとファイターズが小笠原で再び競合するというドラマチックな展開となった。その結果、ドラゴンズは小笠原の指名権を得た。前年のドラフトが大学生や社会人中心だったことからすると、高校生投手の1位指名は、球団が新しい一歩を踏み出した予感に包まれた。

背番号「11」悩める日々

小笠原慎之介には背番号「11」が贈られた。その真新しいユニホームを着て、春季キャンプ初日の沖縄県北谷町の球場に現れた小笠原を見た時、その太腿の大きさと太さに驚かされた。高校生にしてプロらしい身体の基本はでき上っていた。小笠原はシーズン早々の5月に先発デビュー。勝ち投手の権利を得てマウンドを託したが、先輩投手が打たれて勝ち星はつかなかった。とても残念だった、ゴールデンルーキーの第一歩だけに、うまくスムーズに白星で歩み出させたかった。翌2017年、2018年と連続で5勝を挙げるが、負け数がそれを上回った。「エース候補」は「候補」のまま、しかし、2021年シーズンは開幕からローテーションの一角を守り続けた。

2015年ドラフト総括

この年のドラフトは、選手獲得の戦略にも各球団それぞれ特徴があった。このため、ひとりの選手に指名が殺到することもなかった。そんな中、高山俊(明治大学)の1位指名には、阪神タイガースと東京ヤクルトスワローズが競合。抽選くじを開けた瞬間、スワローズの真中満監督が大喜びしたことから「ヤクルトが指名権」と思われたが、くじの確認ミスと判り、高山は阪神へ。翌年からくじも誤解されないようなプリント内容に改善された。その他、オリックスバファローズが吉田正尚(青山学院大学)を単独指名した。「将来の4番」と宣言しての1位獲得だったが、その後の活躍を見るにつけ、スカウティングの見事さが証明された。

竜指名選手の現在地は?

「中日ドラゴンズ2015年ドラフト指名選手一覧表」(C)CBCテレビ

前年とは対照的に、2015年ドラフトでドラゴンズ入りした選手たちの活躍は続く。
2位の佐藤優、3位の木下拓哉、4位の福敬登、5位の阿部寿樹そして6位の石岡諒太とけがのため一度は育成選手となり再びカムバックした石岡以外は、1軍でもおなじみの顔ぶれである。さらに育成指名には、三ツ間卓也に渡辺勝。“一本足打法”の渡辺はスタメンに名を連ねるまでに覚醒した。“当たり年”ドラフトと言えるだろう。その筆頭とも言える小笠原慎之介の投球は、2021年に大きく飛躍した。我慢強い投球ができるようになった。打線が点を取れずに勝ち投手を逃す試合が続いたが、本来ならば10勝を大きく超えていてもおかしくない。背番号「11」いよいよ本格的な舞台がやって来た。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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