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「二軍では敵を圧倒してこそ」仁村徹二軍監督が語るファーム育成論と石川昂弥への期待

「二軍では敵を圧倒してこそ」仁村徹二軍監督が語るファーム育成論と石川昂弥への期待
「サンデードラゴンズ」より石川昂弥選手(C)CBCテレビ

「首位とは言っても、小手先の勝利ではダメ。二軍では、敵を圧倒してこそ、初めて一軍で通用する。そう戦っている」

開幕から39試合を経過して貯金が11、ウエスタンリーグ首位と快進撃を続けるファームのドラゴンズの指揮官、仁村徹二軍監督は語る。

ならば、と多くのドラゴンズファンは期待してしまう。「石川昂弥選手は、今季まだ一軍に上げないのか。二軍の指導者は、ドラフト一位選手をどう育てているのか…」

これにも、仁村監督はきっぱりと答えてくれた。

「昂弥(タカヤ)も、二軍なら相手投手を圧倒するだけのものを残さなければ、一軍に上がってもレギュラーは獲れない。確かに彼は、そのための器、雰囲気を持っている。ファーム公式戦でも、アイツが打てなければ仕方がないと周りに漂わせ、仲間をギスギスさせない魅力はある。学生の頃から、競争の中で圧倒してきた力だろう。そして、ドラフト1位が抱きがちなプライドやスマートさがありながらも、そればかりが先に立つのではなく、泥んこになって不細工にできるか、ドライチだけが持つ魅力でこそ、相手を圧倒できるものもありますしね」

そして、試合前練習を見守る指揮官の前を、ちょうど走り抜ける男の名前を挙げた。

「良いお手本がいますよ。藤井淳志です。明らかに現役の晩年、ここまでずっと二軍でも、過去のキャリアを全部捨てて、取り組めている。あそこまで自分を落として、一生懸命できるものかというくらい。プロは見栄を張ることも必要です。ただ、見栄とは、自分は悪くないのにという思い込みではなく、自分のミスを認めてこそ、本当の見栄を張れる。つまり、プロのアピールができる」

仁村監督は、小手先だけの結果を求めている姿なんて一目瞭然だ、と続ける。

「セコイことを考えてばかりでは、チームは強くならない。アイツには負けたくない。だからオレもやらないと、真の競争をさせる環境作りを整えました。良いところをなるべく伸ばしてあげられる環境。逆に、今の子は、悪いことを言うとすぐ潰れますから。そっちは簡単なもんです」

仁村監督の評価基準

「サンデードラゴンズ」よりプロ初のサヨナラ安打を放つ石川昂弥選手(C)CBCテレビ

仁村監督が貫く二軍での環境作りは、試合中の戦術にもはっきりと現れている。
なんと、公式戦において、余程のことがない限り、送りバントのサインは、ゼロ。ファームでは、1打席のでも多くの打席機会を作ってあげたいからと。つまり、相手がいいピッチャーであればあるほど、送りバントではなく、絶好の打撃チャンスだから。そうでなければ、一軍ではレギュラーになれない。もちろん、犠打をさせる必要のある選手や投手の打席を除いてだが。

守りでは、敬遠四球はゼロ、皆無。投手は、ピンチでこそ良い打者と勝負できなくてどうするのか、そここそ乗り切らないと、一軍では戦えない。極めて明快だ。

「その代わりボクは、ベンチから、打者が狙って打った内野ゴロ進塁打を最も評価します」と初めて笑顔を見せて語った。

例えば、無死満塁の大チャンス。ただ、最初の打者次第では、かえって点が入りにくいともいわれる。相手が、1失点は止む無しのシフトをとってくれているにも関わらず。一軍では、プレッシャーの中、内野ゴロをきっちり転がすことすら、難しいからだ。二軍ならできる、では意味がない。そして仁村監督は断言した。

「ゴロの良い当たりならオッケーとします。逆に、良い当たりでも、ライナーは絶対ダメ。プロなら、できなきゃ。それに、チーム全体の雰囲気を壊します」

さすがは、現役時代、右打ち巧打で鳴らした仁村徹さん。名曲「燃えよドラゴンズ」でも♪6番、徹の勝負運♪と唄われた。これは、♪4番、落合ホ~ムラン~♪に匹敵するであろう、ここぞでの強さだった。

ただ、このブレないビジョンについても、仁村監督は、「役割の違い、ですよ」と続けた。普段、打撃担当コーチの仕事は、選手に理想のフォームでクリーンヒットを打たせること。一方、監督の仕事は、打率の下がる内野ゴロでの1得点に拍手し、評価をすること。「オレは見ているぞ」と。

とにかく、一軍で活躍し、チームが勝つための競争をさせる環境を作った。目先の勝利をファームで求めてはいないのだ。

二軍で投げることの意味

「サンデードラゴンズ」より梅津晃大投手(C)CBCテレビ

その上で、リーグ首位というのはベストだが、ピッチングコーチからすると勝ち過ぎるのも問題だという。

「今日の試合も負けられない、というムードが強すぎると、かえって若い投手の成長を妨げます。かわすピッチングで勝っても、意味がないので」

理想形として挙げられるのは、先日一軍に昇格した梅津晃大投手。MLB大谷翔平投手に近いシルエットやポテンシャルは、ファンからの人気も絶大。しかし、故障と背中合わせの一面も。

春先、そんな梅津投手を支えたのは、まさに女房役である大野奨太捕手だと、仁村監督は語る。フォークボールという決め球がある中、初回から意表を突くような右打者の内角へのストレート攻めで、極めてスムーズに、ムダ球なく、課題の立ち上がりを乗り越えた。

「全体のリードも良かったし、梅津の場合は、球数を掛けずにイニングを重ねないと、一軍では通用しない、勝てない。奨太は、そこも踏まえてくれましたね」

このファームでの組織作りと戦術の一貫性、競争こそが、首位の源かもしれない。見渡せば育成から這い上がる山下斐紹、守備も昇格のカギとされる石川昂弥に岡林、投手では岡野に松葉ら。一軍昇格を目指すならば、ファームでの戦いで敵を圧倒することが必要だ。仁村監督の話を聞いて確信した。若竜たちの快進撃はこれからも続き、未来は眩しいほど輝いているのだと。燃えよ!ドラゴンズ!

【CBCアナウンサー 宮部和裕 CBCラジオ「ドラ魂キング」水曜、テレビ・ラジオのスポーツ実況担当。元少年ドラゴンズ会員。早大アナ研仕込の体当たりで、6度目の優勝ビール掛け中継を願う。「月刊ドラゴンズ」連載中】

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