ミュージカル『キャッツ』と立浪ドラゴンズの不思議で素敵な関係とは?

ミュージカル『キャッツ』と立浪ドラゴンズの不思議で素敵な関係とは?

名古屋の街で“ネコたち”の躍動が始まった。2022年夏、劇団四季の人気ミュージカル『キャッツ』のロングラン公演。名古屋でのステージは21年ぶり、3度目になるのだが、この『キャッツ』、中日ドラゴンズの歴史にも大きく関わっている。

『キャッツ』が名古屋へ帰ってきた!

劇団四季『キャッツ』(撮影)堀 勝志古

『キャッツ』は劇団四季にとって大切なミュージカル演目で、1983年(昭和58年)の初演から全国各地でロングランを続けてきた。

上演のために専用の劇場まで作ってしまうこともあり、その「キャッツ・シアター」の壁に描かれた黄色い猫の目は、開演当時から印象的だった。

都会のゴミ捨て場を舞台に、24匹の猫たちがそれぞれの“人生”を個性豊かに発揮していく。舞台のクライマックスでは天に昇るただ1匹が選ばれ、名曲『メモリー』と共に締めくくられる感動の舞台。

そんな『キャッツ』が初めて名古屋にやって来たのは、1988年(昭和63年)だった。

ドラゴンズファンならば、すぐに思い出すはずだ。そう、その年は故・星野仙一監督がチームを率いての2年目で、ドラゴンズがリーグ優勝を果たした年である。

「サンデードラゴンズ」より星野仙一義監督©CBCテレビ

第1回公演とドラゴンズ優勝(1988年)

1988年のドラゴンズ、そのステージに鮮やかに登場したのが、高卒ルーキーだった立浪和義選手だった。

PL学園高校で甲子園春夏連覇をキャプテンとして成し遂げた立浪選手は、ドラフト1位でドラゴンズに入団すると、開幕戦に「2番ショート」でいきなりスタメン出場した。セ・リーグでは実に29年ぶりとなる、高卒新人選手の開幕スタメンだった。

そんな新戦力に加えて、移籍2年目を迎えた主砲・落合博満選手、“抑えの切り札”郭源治投手、アメリカ留学から帰国した山本昌投手らが活躍し、8月に優勝マジックが点灯した。

『キャッツ』11月の初日を待つことなく、10月早々には星野監督が胴上げされて宙に舞っていた。

その優勝の余韻の中、名古屋駅近くの旧国鉄笹島駅跡地に作られたテント式劇場で、『キャッツ』は1年間のロングランの幕を開けた。舞台の合間に“猫たち”がナゴヤ球場に応援にやって来た風景もなつかしい。たしか始球式もあった。

第2回公演とドラゴンズ優勝(1999年)

次に『キャッツ』が名古屋にやって来たのは、11年後の1999年(平成11年)だった。名古屋駅から東へ、納屋橋近くの堀川沿いに建設されたばかりの新名古屋ミュージカル劇場での公演だった。

劇団四季『キャッツ』(撮影)堀 勝志古

1999年のドラゴンズ、いったんユニホームを脱いでいた星野仙一さんが監督に復帰しての4年目を迎えていた。

開幕投手をつとめたエース川上憲伸投手を筆頭に、左の山本昌と野口茂樹の両投手、そこに中継ぎとしてルーキー岩瀬仁紀、落合英二、サムソン・リーの3人がいて抑えには“韓国の至宝”と呼ばれた宣銅烈投手。

盤石の“投手王国”に加えて、レオ・ゴメス、山﨑武司、関川浩一、立浪和義、そしてルーキー福留孝介といった強力な野手陣。

開幕から実に11連勝を記録して、シーズンを駆け抜けた。歓喜のゴールは1988年に続くリーグ優勝だった。

2度目の『キャッツ』名古屋公演は、年を2つまたいで2001年まで1年半のロングランだった。ちょうど、20世紀から21世紀へ時代が代わる節目であったこともあり、『キャッツ』は名古屋の人たちに、より強い印象を残した。

第3回公演は立浪監督と共に

「サンデードラゴンズ」よりバンテリンドーム©CBCテレビ

1988年と1999年、『キャッツ』の名古屋公演と共にいずれもドラゴンズが優勝。

最初の公演の年に新人王に輝いた立浪選手は、2度目の公演の年には、優勝決定の瞬間にセカンドを守ってウイニングボールをつかんでいた。

そして3度目の公演が名古屋で幕を開けた2022年夏、その立浪選手は監督としてドラゴンズを率いている。

野球選手の多くがジンクスを信じるように、ファンも時に因縁にこだわってみたい時がある。ましてや、その立浪ドラゴンズが苦戦を続けている今だからこそ、である。

ミュージカル『キャッツ』が、竜に何らかのパワーを運んできてくれるのか。公演中の都市にあるプロ野球チームが優勝するという「優勝招き猫伝説」もある。

神頼みはしたくないが、猫との不思議な縁にちょっぴり期待してみたい、そんな2022年の盛夏である。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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