20年前の繰り返し。部活動における暴力はなぜなくならないのか。

甲子園球場で開催されている第107回全国高等学校野球選手権大会。広島県代表の広陵高等学校は、複数の野球部員が下級生に暴力を振るったこと等をめぐる問題を理由に、出場辞退を表明しました。この件はSNSを中心に大きな問題となり、一部では実名や写真が公表されるなどの事態にまでなっています。8月11日放送のCBCラジオ『つボイノリオの聞けば聞くほど』では、若狭敬一アナウンサーと小高直子アナウンサーがこの件を取り上げます。実は過去にも別の高校で全く同じようなことが起こっていたといいます。
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今回の暴力問題に関しては、SNSで非常に大きな騒ぎとなったことが特徴です。
出場辞退に至った理由は、寮が爆破予告される、広陵高校の野球部でない生徒が追いかけまわされる、誹謗中傷が発生するなどの事態にまで発展したため。
リスナーからも多くの投稿が寄せられました。
「私はいじめ、暴力があった時点で県大会から辞退するべきだったと思います」(Aさん)
「自分が野球部に所属していた頃、監督から部員への暴力行為を何度も目の当たりしたことがあります。実際に自分が殴られて鼓膜が破れたこともありました。
当時は当たり前の指導と思っていましたが、いま思えば部活動でミスをしただけで殴られるなんて異常です。いまだに日本の部活動では暴力が後を立ちません。いい加減に暴力を使った指導はなくなって欲しいものです」(Bさん)
行き過ぎた正義
そもそもなぜSNSで「炎上」してしまったのか。その理由を「正義の暴走」だと見る若狭。
若狭「犯罪に対して批判すべきだ、と思うことは間違いではないですが、一方で自分が正しいと思い込んだ人間は歯止めが利かなくなり、ルール違反に対してルール違反をしてしまう」
いわば犯罪に対して犯罪で返すという状態になっていることを、一連の流れで非常に強く感じているのだとか。
若狭「SNSには秘匿性もある、集団だから大丈夫だという心理も働く、さらにいいねや閲覧数が増えることで自己承認欲求も満たされる」
まさにSNSは正義を暴走させるのにぴったりな構造をしているのです。
20年前にも…
また、こんな意見も届いていました。
「広陵高校だけでなく、他の高校でもいくらでもこういったことがありそうですね」(Cさん)
実はまったく同じような事件が20年前の高知県で起こっていました。
2005年、夏の甲子園に高知県代表の明徳義塾高校の出場が決定しましたが、開幕の2日前に辞退しているのです。
若狭「高知県大会が始まる前に下級生が喫煙をしたことに対し、上級生が暴力を加えながら"指導"をしているんです。今回の事件の始まりと全く一緒なんです」
今回の場合はSNSで広がりましたが、当時発覚したのは、甲子園が始まる前に高野連宛てに匿名の通報が入ったことがきっかけだったとか。
若狭「邪推すると、被害者本人か被害者の関係者だと思うんですけど」
明徳義塾高校は暴力問題を高野連に報告していなかったため、非常に驚いた高野連側が学校を調査した結果、通告がすべて正しいことがわかり、2日前に出場辞退となったのでした。
「伝統」の良し悪し
若狭「私が今回一番残念だと思っているのは、同じことが繰り返されたということなんです」
今回事件を起こした広陵高校の監督が、当時の明徳義塾高校の事態を他山の石として反省せず「他人の振り見て我が振り直せ、と至らなかったのが非常に残念」と語る若狭。
若狭「構造が全く一緒で、20年前から進化していないんです」
小高「この問題の背景には、部活動においての伝統的な徒弟制度やその密閉性の問題、またそれに対する学校や高野連側の大人の対応が問題だったこともありますよね」
その「伝統」が悪い意味で変わらず、SNSという時代のツールを介して、20年前と比べて非常に大きな影響を及ぼすこととなりました。
さまざまな「伝統」の在り方を見直す時が来ているのかもしれません。
(吉村)
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