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高市早苗新総裁誕生。連立相手は国民民主か維新か。公明党は異例の懸念表明

高市早苗新総裁誕生。連立相手は国民民主か維新か。公明党は異例の懸念表明

自民党の新総裁に高市早苗氏が選出されました。決選投票で小泉進次郎氏を僅差で破り、自民党初の女性総裁が誕生。臨時国会で首班指名されれば、日本初の女性総理大臣となります。10月6日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、CBC論説室の石塚元章特別解説委員が、高市新総裁の勝因から連立交渉、経済・外交政策、人事まで幅広く解説しました。

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予想覆した地方票の圧倒的支持

自民党総裁選は5人が立候補し、1回目の投票では過半数を得た候補がいませんでした。そのため、上位2人による決選投票が行なわれ、高市氏が新総裁に選出されました。

石塚は今回の結果について、「予想以上に高市氏が強かった」と分析します。

特に都道府県票(地方票)で高市氏が想定を上回る支持を集めたことが大きな要因でした。当初は小泉氏の優勢が予想されていましたが、ふたを開けてみると地方票では高市氏への人気が際立っていたのです。

議員票が高市氏へ流れた理由

決選投票では議員票の割合が高くなります。もともと議員の間では、「高市氏と小泉氏が残った場合は小泉氏有利」との見方が強かったといいます。しかし、1回目の投票で地方票が高市氏に集中したことで、多くの議員が高市氏支持に回りました。

これは表向きには「党員の声を無視しませんよ」という形ではあります。一方で、地元に戻って「誰に投票したのか」と聞かれたとき、「小泉氏に投票した」とは言いにくい雰囲気があったことも背景にあるようです。

さらに、今後のポジションを見据えて、風向きを読んで高市氏側についた議員も少なくなかったという分析です。

維新か国民民主か、連立相手の選択

高市氏は、少数与党という現実を踏まえ、野党との本格的な連携・連立を目指しています。

連携相手として名前が挙がっているのは、維新の会と国民民主党です。石破茂前総裁が法案ごとに協力相手を変える「部分連携」を志向していたのに対し、高市氏はより強固な枠組みを求めています。

分部連携では賛成していた党が次の法案では反対に回ることがあるため不安定ですが、連立を組めば「嫌でも賛成しなければならない」という縛りが生まれます。

国民民主が有力、維新には障壁

小泉氏は維新とのパイプを持っていましたが、高市氏にとって維新との連携には複数の障壁があります。維新は公明党と大阪で競合関係にあり、高市氏の地元・奈良でも知事選で自民党が維新に敗北した経緯があり、連携は容易ではありません。

政策面でも国民民主党の方が自民党との親和性が高く、現時点では国民民主党と組む可能性が高いとみられていますが、まだ具体的な動きには至っていません。

高市氏は総裁選中、「臨時国会での首班指名までに連立を完成させる」と発言していました。しかし、実際にはトーンがやや下がっており、連立交渉の難しさが表れているようです。

公明党が異例の懸念表明

公明党の斉藤鉄夫代表は、高市新総裁に対して異例ともいえる懸念を公に表明しました。外国人問題、外交問題、靖国神社参拝、歴史認識などの問題で、高市氏の考え方が公明党とは異なることを指摘し、釘を刺しています。

石塚は「斉藤氏がそこまで公的に発言するのはかなりのこと」と、公明党側の強い懸念を読み取ります。

自民党にはハト派からタカ派まで幅広い議員がいますが、高市氏はタカ派とみられており、公明党としてはその色が強く出ることを警戒しているのです。

経済政策が現実路線へシフト

物価高やガソリン税の暫定税率についても議論の対象となっています。高市氏も最優先課題として取り組む姿勢を示していますが、具体策はこれから明らかになる見込みです。連携する野党によって、実現できる政策も変わってきます。

当初は赤字国債発行による積極財政を主張していましたが、次第にトーンダウンしています。

消費税減税についても、最初は積極的だったものの、現在は「否定はしないがタイミングではない」という慎重な姿勢に変わってきました。

韓国・中国が警戒、アメリカも釘刺す

韓国と中国は、高市新総裁の誕生に警戒感を示しています。

特に韓国については、現在の日韓関係が改善傾向にある中で、高市氏が靖国神社参拝や歴史認識問題で強硬な姿勢を取れば、再び関係が冷え込む可能性があります。韓国側も国内世論を抱えているため、日本側の動きには敏感にならざるを得ません。

さらに注目されるのはアメリカの視線です。アメリカはこれまでも日本に対し、「タカ派的な発言で韓国や中国との関係を悪化させるな」と強く伝えてきました。アジアにおける日韓関係は極めて重要で、日本の立場を尊重しつつも、歴史問題などを巡って関係が悪化することはアジア全体の安定にとって望ましくないというのがアメリカの基本姿勢です。

トランプ政権もこの点では同様の考えを持っています。

メローニ首相型の現実路線化の可能性

タカ派といわれてきた高市氏ですが、総裁・首相就任後は現実的な路線に転換する可能性もあります。ただし、その場合は自民党内の岩盤支持層がどう反応するかという別の課題が生じます。

石塚は興味深い例として、イタリアのメローニ首相を挙げました。メローニ氏は極右政党のトップで、首相就任時にはイタリアがEUから離脱するのではないかと懸念されていました。

しかし実際には、保守派でタカ派ではあるものの、交渉可能で穏健な指導者として評価されるようになったのです。

トランプ大統領との早期会談へ

10月下旬にはドナルド・トランプ大統領の来日が予定されており、日米首脳会談が真っ先に行なわれる見通しです。

高市氏は安倍晋三元首相の後継的な位置づけとみられており、安倍氏が信頼していたこともあって、トランプ大統領とのパイプ役としては悪くないと石塚は評価します。

ただし石塚は、トランプ氏が「変わったことを急に思いつきのように言う」性質があると指摘。安倍氏との個人的な関係とは別に、トランプ政権に振り回される可能性があるとみています。高市氏がこうした状況にうまく対応できるかは、単なる仲の良し悪しとは異なる能力が問われます。

さらに、今月下旬には日米首脳会談のほか、APECやASEANなどの首脳会議も控えており、高市新総裁の外交手腕が早速試されることになります。

裏金議員の起用が焦点

党役員人事では、幹事長に鈴木俊一総務会長の起用が取り沙汰されています。麻生太郎副総裁の義弟にあたる鈴木氏の起用は、麻生派への論功行賞とみられます。

また、茂木派の木原誠二氏の名前も挙がっており、麻生派以外の派閥は解消されたはずですが、実際には旧派閥の影響が残っていることも石塚は指摘しています。

最大の焦点は、いわゆる「裏金議員」の処遇です。高市氏は「能力がある人には働いてもらう」と発言しており、萩生田光一氏など旧安倍派の裏金問題に関わった議員も、それなりのポジションで起用される可能性が高いとみられます。しかし、これは野党に攻撃材料を与えることになりかねません。

さらに、総裁選を共に戦った他の候補者の処遇も注目されます。小林鷹之氏は高市氏と政策が近く、若手のため起用しやすいとみられます。一方で、林芳正氏や小泉進次郎氏をどのようなポジションで起用するかが焦点となります。
(minto)
 

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