原爆投下から80年。核に対する日本のスタンスに苦言

8月6日午前8時より、広島市の平和記念公園にて平和記念式典が執り行なわれました。今年で、アメリカ軍による原爆投下からちょうど80年となります。式典には緊迫する国際情勢の中、過去最多となる120の国と地域の代表が参加しており、世界が広島に寄せる関心の高さが改めて示された形です。一方で、一部の国での核保有は黙認されている現状にやるせ無さを感じます。この日の『CBCラジオ #プラス!』では、CBC論説室の石塚元章特別解説委員と永岡歩アナウンサーが「世界と核」について意見を交わしました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴くアメリカの原爆への意見が変わりつつある
80年前の1945年8月6日8時15分、広島に原爆が投下されました。
日本原水爆被害者団体協議会はノーベル平和賞の受賞をきっかけに、発信をより一層強化しています。
被爆者が語る過酷な体験は、核兵器の「タブー」に対する意識を喚起し、現実の重みとして多くの人々に伝わります。
私たち日本人にとっては特にその現実が見えやすいのかもしれませんが、世界中の人々に対しても、原爆が「無関係な人々の命をこれほどまでに奪ったもの」であるという事実を、発信し続ける必要があります。
かつてアメリカでは「原爆投下は戦争を終わらせるために必要だった」とする認識が強くありました。
しかし近年の調査によれば、原爆投下に否定的な意見を持つアメリカ国民が3割を超えています。
永岡は「80年という長い歳月を経て、ようやく3割という現実に、無力さやもどかしさも感じますが」としつつも、確実に変化している兆しに希望を見出します。
核を拒絶する発信を日本がするべきなのに
一方で、日本の被爆者は年々減少しています。
今年3月末時点で、全国の被爆者は9万9130人と、初めて10万人を下回りました。
平均年齢も86歳を超え、ここ10年余りで被爆者数は10万人減少しています。
実際に体験者の「声」を直接聞く機会は、確実に減っているのが現状です。
だからこそ、「伝える」ことの重要性はますます高まります。
石塚はアメリカでは若い世代を中心に、「核があるから平和が保たれているわけではない」「広島や長崎への原爆投下は間違っていたのではないか」といった声が増えてきていることは、非常に意義深いと感じている一方で、そういった声が増えるようにしていかないといけないのは日本の役割ではないかと指摘しました。
例えば日本では、最近の選挙において「核武装は安上がりだ」と発言した政治家が多くの票を得て当選するという事態も起きています。
唯一の被爆国である日本において、そのような発言が現実の政治で力を持つことに石塚は「ちょっと嫌な感じ」と苦言を呈しました。
「核拡散はしないけど、保有は認める」とする日本
日本は唯一の被爆国にも関わらず、「核兵器禁止条約」への参加を見送っており、オブザーバーとしての参加すらしていません。
ドイツなどの先進国は、たとえ条約に正式参加していなくても、オブザーバーとして意思表示をしています。
日本はNPT(核拡散防止条約)には参加しており、「核を広げない」という立場は示していますが、石塚はこれを「何もやらないよりはいいっていう程度の話」と厳しい意見。
核を広げないと示すことは、核がある事実は認めていることと同じです。
つまり、アメリカやロシア、イギリスといった第2次世界大戦の戦勝国による核保有は良しとされているのです。
石塚「日本はアメリカの核の傘とか言われるから、大人の事情って大人の事情なのかもしれないけれど、それでいいんですかっていう」
最近では、イスラエルとイランの軍事的な緊張が高まり、アメリカがイランの核施設を攻撃しました。
イスラエルは核を保有しているとされながらも、それは黙認され、イランが核を持とうとすると非難されている現状に石塚は納得していません。
石塚「イスラエルが核持ってるのはなんとなく認めてるくせに、イランが核作ろうとしてるとそれはけしからんと攻撃するわけでしょ。言ってみれば二枚舌ですね」
伝えることと同時に行動を
現在、世界に存在する核弾頭は推定で1万2000発以上とも言われています。
80年が経過したにもかかわらず、世界が「変わってきた」と言える状況ではありません。
むしろ、核の脅威は形を変えて拡大しているのではないでしょうか。
さらに、被爆者の中には、母親の胎内にいたときに被爆した胎内被爆者の方もいます。
永岡「まだまだ我々が伝えていかなきゃいけないし、もっと言いますと、まだまだ僕たちが勉強して知らなきゃならないことっていうのがまだまだたくさんあると思います」
最後に永岡は1985年、世界的な指揮者レナード・バーンスタインさんの言葉を紹介しました。
「言葉はもう十分だ。足りないのは行動だ」
戦争の残酷さ、平和への願いを後世に伝えようと尽力しています。
その先にある「行動」をどう起こすべきか。
世界が動くそのタイミングを私たちは見極め、歩み出さなければなりません。
(ランチョンマット先輩)
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