トランプ政権で迎えた建国250年、アメリカの歴史と「独立宣言」精神の行方
アメリカ合衆国が、建国250周年を迎えた。2026年(令和8年)7月4日、米国内のお祝いムードとは裏腹に、それを見まもる世界は“疑心暗鬼”とも言える空気感に包まれている。
コロンブスによる新大陸
アメリカ大陸の発見については、誰もがこの人の名前を挙げる。クリストファー・コロンブス、探検家である。スペイン王室の支援を受けたコロンブスは、1492年10月12日に、カリブ海でひとつの島を見つけた。「サン・サルバドル島」と名づけたが、その島の近くには広大な大陸があった。それがアメリカ大陸だった。大陸周辺への到達は“新世界の発見”とされて、これが後に「コロンブスによるアメリカ大陸の発見」となった。日本は室町時代で、まもなく群雄割拠の戦国時代が始まろうとしていた。
「アメリカ」という名の由来
大陸には先住民族が暮らしていたので「発見」という表現には、「ヨーロッパ中心主義ではないか」という批判もある。コロンブスに続き、別の探検家アメリゴ・ヴェスプッチが、大陸を南下して、現在の南アメリカ大陸について「新大陸だ」と発表した、「アメリゴ」という名前は、ラテン語で「アメリクス」、このため「アメリカ」と名づけられたという説がある。いずれにせよ、北と南、2つの大陸の総称を「アメリカ」と呼ぶようになった。
イギリスへの抵抗
新大陸へ、ヨーロッパから次々と移住が始まった。17世紀に入ると、英国がその大陸を植民地とした。その後、フランスとの戦争などで、資金が必要になった英国は、アメリカの植民地に対して、税金をどんどん増やした。それに不満を持った植民地の人たちが、英国に対して宣戦布告した。それが1775年に始まった「独立戦争」である。
「独立宣言」に込めた精神

開戦翌年の1776年7月4日、13の植民地で作る大陸会議で「独立宣言」が採択された。トーマス・ジェファーソンが書き起こしたもので「すべての人は生まれながらにして平等」として「生命、自由、幸福を求める権利」を高らかに謳いあげたものである。8年間に及ぶ戦争の末、英国は独立を認めた。こうして「アメリカ合衆国」という新たな国が誕生した。
初代大統領ワシントン

歴史の話を続ける。初代の大統領に就任したのはジョージ・ワシントンだった。独立戦争では、植民地軍の総司令官を務めた。大統領就任の1789年、ヨーロッパではフランス革命が起きた年であり、世界史の上では重要な年となった。筆者がワシントンという名前を知ったのは、幼い頃に読んだ偉人伝だった。5歳だったワシントンは、父親が大切にしていた桜の木を折ってしまったが、正直に謝ったため「自分の過ちをよく認めた」と許される。そんなエピソードから「嘘はつかないように」と教えられた記憶がある。
超大国への歩み

独立後のアメリカでは内乱もあった。19世紀半ば、奴隷制をめぐっての「南北戦争」である。奴隷制は廃止されたが、黒人などに対する人種差別は根強く残った。移民の受け入れもあって、19世紀後半には、人口も5000万人を超えた。第一次世界大戦と第二次世界大戦、2つの大きな戦争を経て、米国は国際社会での地位を築き、大国へと成長していく。東西冷戦もあったが、片方のソビエト連邦が崩壊したことから“アメリカ一強”という超大国になった。最初は13の州から始まった国は、今や50州となり、人口も3億4000万人を超えた。
10年かけて準備した記念年
そして、2026年の建国250周年を迎えた。周年を進める記念委員会が作られたのは今から10年前、この法律に署名したのは、民主党からの大統領だったバラク・オバマ氏であり、“本番”を迎えるのは共和党のドナルド・トランプという現実は、歴史による皮肉な巡り合わせであろうか。10年間かけて準備が進められてきた、建国250周年の記念行事だが、トランプ大統領によってムードが一変した。
肖像入りのパスポート?
トランプ氏は、この建国250周年を自らの力を誇示する機会と考えているように動く。首都ワシントンに凱旋門建設、自らの署名が入ったドル紙幣の発行、そして、自らの肖像が入ったパスポートや記念コインの発行など、過去の現職大統領が思いつかなかったことを進めた。もっとも、このトランプ氏に反発するアーティストらが記念行事への出演を次々と辞退して、コンサートは中止に追い込まれるという事態もあった。そんな混沌(カオス)の中での記念イヤーなのである。
忘れたくない「独立宣言」精神

記念行事だけではない。アメリカ合衆国という国も、トランプ大統領の登場によって大きく変わった。トランプ氏が大統領の1期目から唱える「アメリカ・ファースト」という自国第一主義は、世界中に大きな影を落とした。触発される国やリーダーも出てきている。建国250周年の2026年も、1月のベネズエラ軍事侵攻から始まり、2月のイラン攻撃、それに伴う中東危機と、世界は米国の“振る舞い”によって混乱を続けている。かつての「独立宣言」にある「すべての人は生まれながらにして平等」そして「生命、自由、幸福を求める権利」という一文、当然ながら、現職大統領は読んでいると信じたい。
独立記念日を前に、米連邦最高裁は6月30日に、米国で生まれた子どもが自動的に米国籍を得る出生地主義を制限するというトランプ氏の大統領令は「違憲で無効」という判断を示した。250年前の「独立宣言」の魂が、米国の司法で生きていることを示した一幕となった。
【東西南北論説風(699) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】




