井上竜、14年ぶりクライマックスシリーズ進出の可能性は?
時ならぬ興奮が竜党にやって来た。「ほぼ終戦か」と思われていたドラゴンズの2026年(令和8年)ペナントレース、お盆を前に14年ぶりクライマックスシリーズ進出への希望が一気に膨らんできた。(敬称略)
「この1勝はでかい!」

きっかけは、村松開人のサヨナラヒットだった。8月4日、本拠地バンテリンドームでの東京ヤクルトスワローズ戦、1点リードされて迎えた9回裏、ジェイソン・ボスラーのホームランで同点に追いつくと、なおも2死2、3塁のチャンスに、村松が見事にライト前に打ち返した。劣勢のゲームを9回に逆転しての勝利。ヒーローインタビューでの村松の言葉である。「この1勝はでかい!」。
見事な逆転勝ちに興奮
村松の咆哮を証明するかのように、この試合からドラゴンズは白星を積み重ねる。スワローズに3連勝、特筆すべきは、8月7日、京セラドーム大阪に戦いの場を移しての阪神タイガースとの1戦目である。先発の高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)が初回に佐藤輝明に2ランホームランを浴びて、0対2のまま迎えた9回表だった。
今季ここまでのドラゴンズなら、そのまま敗れてもおかしくなかった。しかし、1点を返した後、代打の阿部寿樹が逆転の2点タイムリー2ベースを放つ。こんな見事な、そして気持ちのいい逆転勝ちを見るのは久しぶりだった。
ようやく“打線”ができてきた
この時点で3位のスワローズとの差は3ゲーム差となった。翌日のゲームも大勝し、最大20あった借金も13まで減った。今季は開幕から低空飛行だった井上ドラゴンズに何が起きたのか。応援するファンとして思うのは、ようやくチームが落ち着いてきたことだろう。今季、日替わり打線と日替わり守備位置がくり返されてきたが、1番・福永裕基、2番・村松開人、3番・細川成也、4番のミゲル・サノー、そして5番・石川昂弥と、打順は固定されてきた。これによって“打つ線”すなわち“打線”になってきた。
代打と代走“切り札”の存在

もうひとつは、ゲーム終盤の“勝負手”が明確になったことだろう。代打と代走である。代打は、今季からドラゴンズに復帰した阿部寿樹が無類の勝負強さを発揮している。チャンスに打席に入ると「必ず打ってくれる」と期待してしまう。そして阿部は打つ。
代走については、樋口正修がケガから1軍復帰したことが大きい。これまでは勝負どころで盗塁もできない代走要員しかいなかったが、樋口の存在によって果敢に塁を奪うことができるようになった。これぞ“代走”である。スタメンの固定も大切だが、こうしたプロフェッショナルな役割の選手は、勝つためには欠かすことができない。
屈辱の零封負けで暗雲
タイガースにも連勝して、今季初の5連勝。しかし、このまま一気に走らせてくれるほど、143試合のペナントレースは甘くない。6連勝をめざした8月9日の試合は、惨憺たるものだった。タイガースの2安打に対してドラゴンズは10安打、しかし、残塁の山を築き、0対1で敗れて今季10度目の零封負けとなった。
ファンとして首を傾げる采配もあった。3回表に福永と村松の連続ヒットで迎えた1死1、2塁のチャンス、打席には細川。ここでなぜダブルスチールを敢行したのだろうか。福永は3塁でアウトとなり、チャンスは消えた。ドラゴンズにとって重盗という戦術は珍しい。ベンチが動きすぎると失敗する、今季ここまでくり返されてきた“悪夢”を目の当たりにした思いだった。「蟻の一穴」という言葉があるが、その後のゲーム運びを象徴する場面だった。
それでも、クライマックスシリーズ出場への可能性は十分にある。筆者もあらためて、10月のCS日程を確認した。球団創設90周年のシーズンはファンにとっても地団太を踏む、つらい日々だったが、残り40試合に意地を見せてほしい。もちろん来季に向けての希望も見たい。どうかもう裏切らないでほしい。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)ほか。











