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QRコードの海で溺れそう…旅館でレストランで、次々と出合う“今どき接客”

QRコードの海で溺れそう…旅館でレストランで、次々と出合う“今どき接客”
CBCテレビ:画像『写真AC』より「QRコード読み取り」

熱海の温泉旅館に宿泊した。到着する日を前に、予約した宿からスマートフォンにメールが送られてきた。そこからQRコードを取得してチェックインしてほしいとのことだった。旅への楽しみに、少しだけ違和感と緊張感が加わった。

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日本生まれの「QRコード」

「QRコード」は「Quick Response」の頭文字を取った名前である。まさに、その英語名が象徴するように“素早く反応”という意味である。この「QRコード」は、1994年(平成6年)に日本で生まれた。最初は商品の管理や出荷に使われることが中心だったが、そこから使用方法が一気に多様化した。店頭で取得できる商品情報、コンサートやイベントの電子チケット、また鉄道などの乗車券など、今や世界的に広がった。たしかにスマホを持つ人間にとっては便利である。しかし・・・。

温泉旅館で驚きチェックイン

CBCテレビ:画像『写真AC』より「予約はQRコードから」

熱海の宿に到着して、ドアを開けて最初に“出合った”のは「QRコード」の読み取り機だった。そこへ旅館のスタッフ1名がやって来て、操作方法を丁寧に教えてくれた。部屋に入ると、館内の案内を見るための「QRコード」が表示してあった。大浴場には岩盤浴の施設があり、その予約もスマホから。朝食の時間予約もスマホから。夕食の料理も大変美味しく、ベッドも寝心地が良く、心地よいひと晩を過ごした。翌日のチェックアウトは、再び読み取り機に「QRコード」をかざして滞在は終了した。領収書は、直後にメールで送られてきた。

メニュー全体が見たい!

名古屋市内のスペイン料理店。メニューは「QRコード」を読み取って、スマホで見るシステムだった。ただし、注文はスタッフに口頭で告げるのだ。アクセスは簡単で、スマホ画面には料理や飲み物のページが現れた。しかし、いかんせん画面が小さい。同時に見ることができるメニューの数は限られていて、何度もスクロールしながら行ったり来たりする。一緒にいるグループの仲間にも見せなくてはいけない。メニューを決めて、スタッフに注文して一息つく。

料理も飲み物も美味しかったが、帰る時に店頭の大きなメニュー表を見て、好物のハモン・セラーノ(生ハム)を頼み忘れたことに気づく。スマホの小さな画面では、こんな見落としもある。後日、LINEにお店からの案内が届く。「QRコード」でメニューを読み込んだだけなのに、こうしてパーソナル情報が利用されていく現実に直面した。LINEは消去した。

麺の注文もタブレット

名古屋市内のうどん店。注文はテーブルの上にあるタブレットからとなっている。ところが「お茶に加えて水がほしい」「ごはんは少な目に」そして「エプロンがほしい」など、画面にない細かい注文は、結局、店のスタッフを呼んで、口頭でお願いすることになった。近くのテーブルでは、麺の中に入ってくる玉子の硬さをリクエストしている客もいた。もちろんタブレットにそんな特別項目はない。すべて口頭でのことである。

酔いも醒める?バーでの場面

ある夜に二次会で行った名古屋市内のバー。ウイスキーやカクテルなど沢山のメニューが書かれたメニュー表をテーブルに持ってきてくれたスタッフから、こう告げられた。

「ご注文はQRコードからお願いいたします」

一緒にいた友人がすかさず尋ねる。

「直接あなたに伝えてはいけませんか?」

「もちろん大丈夫です」

ホッとした。1軒目の店での酔いが、操作の緊張によって醒めなくて良かった。

「QRコード」の時代は進む

CBCテレビ:画像『写真AC』より「QRコード決済」

「接客」という言葉がある。読んで字のごとくであり、すべての商売の基本とされてきた。しかし、そこに「QRコード」という新たなツールが登場して、人手不足や物価高に伴う経費節約もあり、一気に利用が増えつつある。総務省の「情報通信白書」によれば、20代と30代の「QRコード」決済利用状況は6割を超え、全体でも半数を超えている。一方で、60歳以上の利用率はまだ30%台なのだが、勢いは止まらないだろう。慣れて使いこなすしかないのだろうか。しかし「接客」とは一体何なのだろうか。あらためて意味を噛みしめる機会になった。

久しぶりにツアーの団体旅行に参加した。同行する添乗員さんから、旅の前日にスマホに連絡があり、最終確認と共に、「明日からよろしくお願いいたします」と挨拶があった。“人の肉声”を聞きながらホッとする。翌日からの旅がますます楽しみになった気がした。

【東西南北論説風(562)  by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

※「QRコード」は、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

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