45種類のブレンド泡盛もその日を待つ!沖縄・首里城“復興の道”は今
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3年ぶりに首里城を訪れた。火災によって正殿などが焼失して6年目となる。2025年(令和7年)2月上旬、沖縄の人ですら「寒い」と口にする、そんな珍しい冷え込みの中、それでも首里城は、海外から観光に訪れた人を含む大勢の見学客でにぎわっていた。
倉庫に描かれた「正殿」
守礼門をくぐって緩やかな坂道を歩き、城へのメインの入り口である「奉神門(ほうしんもん)」を抜ける。前回訪れた時は、その先の広場に、火災で焼け落ちた瓦礫や瓦などが展示されていたが、目の前に色鮮やかな“正殿”が現れた。一瞬驚いたが、それは、壁の表面にある“正殿の絵”だった。広場には復元工事に使う木材の倉庫が設置されていて、その倉庫の壁に、完成したイメージの“正殿”が描かれていた。なるほど、復元されると、この角度からこういう眺めになるのだと、よく理解できた。それも「見せる復興」のひとつなのだ。
「見せる復興」を目にして
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首里城が進めてきた「見せる復興」。2019年(令和元年)10月31日の未明に起きた火事は、正殿など7棟を全焼し、2棟の一部を焼失した。琉球文化の歴史や文化を語る貴重な美術工芸品など400点も、火の中に消えた。首里城が焼け落ちたことに心を痛めた多くの人からの寄付金があっという間に集まり、首里城の再建がスタートした。そこで始まったのは、復元工事など城がよみがえる様子を、日々多くの人に見てもらおうという「見せる復興」だった。復活への歩みを通して、琉球の歴史や文化を再認識してほしいという願いだった。工事の過程をすべて見せるという画期的な試みは人気を集め、実際の「城はない」のに、連日、多くの人が訪れている。
素屋根に覆われた「正殿」
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全長140メートルという見学デッキ、前回は右側に工事の過程がパネル展示されていたが、今回は「平成の復元」と言われた前回1992年(平成4年)への復元工事イラストが作業ごとに描かれていた。焼け落ちる前の場所には、すでに正殿の建物ができていて、その周囲が「素屋根」と呼ばれる簡易的なプレハブによって囲まれている。横の階段を上り下りすると、それぞれの高さによって、正殿復元の現状がガラス越しに見学できる。沖縄県内の工場で作られた赤瓦6万枚を葺く作業は、ほぼ終わっていた。現在は、建物に漆を塗る作業が行われている。塗っては乾かし、また塗ってと、幾重にも色を重ねていく丁寧な作業である。
いよいよ夏には姿を見せる
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頬に当たる気持ちのいい海風を受けながら、眼下に広がる首里の街を一望できる高台「東のアザナ」まで足を運ぶ。すると、つい先ほど横を歩いてきた「素屋根」の壁にも“正殿”の絵が描かれていた。この「素屋根」は、2025年夏には取り外されるという。そうなると、いよいよ絵ではなく、本物の“正殿”の姿がお目見えすることになる。
二度と繰り返さぬ火災
新たな首里城には、防火設備も完備される。火災の原因は明らかになっていないが、これまではなかったスプリンクラーも設置される。さらに、万が一の出火に備えて、十分な送水管や貯水池も作られる。火災が起きた同じ2019年には、遠く離れたフランスのパリで、世界遺産であるノートルダム大聖堂でも火災があった。首里城の広報担当の話では、その後、パリ消防局との情報交換も行われたそうだ。貴重な文化遺産を守るため、そんな国際的な連携も生まれている。
乾杯を待つブレンド泡盛
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公園の休憩所で巨大な甕(かめ)に出合った。首里城の復興を祈願して、沖縄県内の45の酒造所から集められた泡盛が、この中に注がれたという。首里城が再建されたあかつきには、甕が開けられて、中の“ブレンド泡盛”が人々に振る舞われるそうだ。沖縄の人たちの熱い思いがこもった、間違いなく美味しい一献。ぜひ、それを味わってみたいと心から思った。復元された首里城の公開は、いよいよ来年、2026年秋の予定である。復興を祝う乾杯の時が、今から待ち遠しい。
【東西南北論説風(559) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】