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最近「マッチ」で火を点けましたか?趣味で箱を集める人もいた暮らしの必需品

最近「マッチ」で火を点けましたか?趣味で箱を集める人もいた暮らしの必需品
CBCテレビ:画像『写真AC』より「マッチ」

マッチの使い方を知らない子どもが多いそうだ。かつて家の中にはいろいろな場所に、探す必要もないほど「マッチ」の箱があった。しかし、その姿はめっきり少なくなった。マッチというものが“火を点ける道具”だと、知らない世代が出てきても当然だろう。

驚き!マッチの登場

「マッチ」は、19世紀の初めに、英国で誕生した。リンという成分の付いた木の棒の先を、箱の側面にある紙ヤスリ状の面でこすると、その摩擦熱によって発火する。「マッチを擦る」という言葉通りである。火打ち石やキリをこすって火をつけていたことを考えれば、容易に火が点くマッチは、画期的な発明だった。その技術が日本にも伝わり、国産のマッチが製造されるようになって、暮らしの中で必需品となった。

家庭の必需品だった

家庭の中で、最もよく火を使う場所は台所である。料理を作るため、ガスコンロに火を点けることは、マッチの大きな役割だった。まだ自動点火装置などがない時代のことである。大きなマッチ箱が置いてあり、一日三度の食事の度に大活躍だった。家族にタバコを吸う人がいると、そこにもマッチ箱があった。一般的に知られる小さな箱で、タバコの箱と“一対”だった。

子ども時代はドキドキ

CBCテレビ:画像『写真AC』より「マッチに火を点ける」

子どもの頃は、マッチを擦って火を点けることは、正直とても怖いことだった。初めて、自分が持ったマッチ棒の先に炎が登場した時は、そのまま手に持っていていいものか、慌てた記憶がある。棒の先から炎が手元に広がってくるからだ。大人たちは、いとも簡単にマッチを擦って、火を点けていた。タバコにマッチで火を点けることに手慣れていたスモーカーも多かった。「マッチを格好よく擦る」これが“大人の条件”なのかとも思った。

喫茶店などのマッチ箱

マッチの箱は、家庭だけでなく、喫茶店のテーブルには、灰皿と共に必ず置いてあった。それには、お店の名前や電話番号が書かれていた。デザインにもカラフルなものが多かった。言わば“宣伝ツール”だったのだ。最近では、ポケットティッシュがその役割を担っていたこともあったが、それだけマッチという存在が、日常生活に入り込んでいる証しだった。喫茶店から持ち帰って使い続ける人も多く、その人がどこの店の常連なのか、マッチは人の行動パターンを知るヒントにもなった。喫茶店だけではなく、レストラン、ホテルや旅館など、広告用のマッチ箱は大活躍だった。

マッチ箱のコレクション

浮世絵師である安藤広重の「東海道五十三次」シリーズを描いたマッチ箱が登場した。銀行が顧客サービス用にと作り、店頭などで配っていた。日本の印刷事業が発展したきっかけは、実はマッチ箱のデザイン印刷であるとも言われている。この「東海道五十三次」シリーズを代表的なものとして、様々なマッチ箱を“コレクション”として集める人も多かった。ひとつひとつアルバムに貼って、収集する趣味を楽しむ魅力もあった。

学校で“活躍した”マッチ

マッチは火を点ける道具以外で、学校の授業でも活躍した。図画工作の授業では、たくさんのマッチ棒を使って、城や建物、さらに富士山などの模型などを作った。学校と言えばもうひとつ、マッチ箱の何ともユニークな使い方として“検便のケース”があった。戦後しばらくして昭和40年代に入る頃までだろうか、学校の健康診断では、検査のために大便を持参する必要があったが、それをマッチの空箱に入れていった。当時、専用の検査キットなど存在しない時代のことである。これを体験した世代も、随分、少なくなったことだろう。

現在は線香に火を点ける

CBCテレビ:画像『写真AC』より「仏壇でロウソクに火を点ける」

日本でもガスライターが作られるようになり、1970年代に入ると、使い捨てできる「100円ライター」が登場した。マッチに代わる手軽な点火道具として一気に広がった。また、台所の調理器具にも自動点火装置が付くなど、マッチの役割は減っていった。最近、マッチを擦ったのはいつのことだろうか。お墓参りに行って、線香用のローソクに火を点けた時だった。墓参、そして仏壇、ここではマッチが活躍するが、それほど「マッチを擦る」機会は少なくなった。

『スパイ大作戦』(原題: Mission:Impossible)という米国のテレビドラマがあった。日本でも昭和40年代に放送され、その後、トム・クルーズ主演の映画シリーズでもお馴染みだ。テレビでは毎回の冒頭シーンで、暗闇でマッチが擦られ、その火が“導火線”的に画面を横切って、ストーリーをダイジェストで紹介した。実にワクワク感を煽ってくれた。初めてマッチで火を点けた日の興奮にどこか通じる、懐かしい場面である。

          
【東西南北論説風(478)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※『北辻利寿のニッポン記憶遺産』
昭和、平成、令和と時代が移りゆく中で、姿を消したもの、数が少なくなったもの、形を変えたもの、でも、心に留めておきたいものを、独自の視点で「ニッポン記憶遺産」として紹介するコラムです。
CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』内のコーナー(毎週水曜日)でもご紹介しています。

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