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「令和の築城」どうなる?名古屋城天守閣木造復元の行方

「令和の築城」どうなる?名古屋城天守閣木造復元の行方
画像『写真AC』より名古屋城

名古屋城の天守閣に暗雲が立ち込めている。名古屋市が3年後の2022年暮れの完成をめざしている天守閣の木造復元スケジュールが大幅に遅れる見通しになった。

前へ進めなくなった木造化計画

天守閣の木造復元化は、鉄筋コンクリートで作られた天守閣に耐震面での問題が持ち上がったことから、河村たかし名古屋市長の肝いりで進められてきた。
総事業費など基本計画は2年前に名古屋市議会で可決され、現在の天守閣も2018年5月に入場を禁止されて、解体そして木造着工と進むはずだったのだが・・・。
そこに文化財の専門家らで組織される名古屋市の有識者会議「石垣部会」がストップをかけた。工事によって天守台となっている石垣への影響が懸念されるため、さらなる調査を求めたのである。国の特別史跡であるため、工事には文化庁の許可が必要である。
名古屋市は木造化の基本計画提出を見送り、「先にとにかく解体を」と天守閣の解体工事のみの許可を求めたのだが、2019年6月21日に開かれた文化審議会は「継続審議」として結論を出さなかった。これによって木造復元化計画は前へ進めなくなってしまった。市がめざしてきた2022年暮れの完成は極めて困難な情勢となった。

奇策は通じなかったのか?

名古屋市議会の委員会でも指摘があったが、そもそも「木造化」と「天守閣の解体」は一体であるべきものだ。それを次の一歩の承認なきままに壊してしまおうというのは、強引さを否めない。名古屋城から天守閣が姿を消してしまえば、「早く建て直そう」という声が出始めて「追い風」になることを期待したのであろうか。戦国時代さながらの“奇策”で城を落とすことはできなかったということか。

買ってしまった木材どうする?

復元化のスケジュールが延びたことで、深刻な課題が持ち上がった。
名古屋市は新しい天守閣のための木材をすでに購入し始めている。調達予算94億円余りの請負契約を可決、2018年度に全体の3割にあたる725本を調達し費用も支払っている。木材は時間と共に傷んでいく。
さらに買った木材を保管する施設を、城の北側にある名城公園に建設するための予算も開会中の市議会に上程された。しかし解体許可が見送られたことを受けて、保管庫についての予算も取り下げへ。文化庁の結論が出なかったことは、このように名古屋市の行政全体に大きな影響を及ぼしていくことになる。

藤前干潟からの教訓

今から20年前、名古屋市はひとつの大きな決断をした。名古屋港の藤前干潟を埋め立ててごみ処分場を作る計画を断念したのである。
「野鳥の楽園」として環境面からの反対の声が大きくなっていた。しかし18年かけて準備してきた計画を白紙にしたことは、当時の行政としては異例なことだった。お役所は一度決めたことは大切にする性格を持つ。処分場計画をあきらめた名古屋市は「ごみ非常事態宣言」を出し、市民挙げての分別収集などごみ減量に取り組み成果を挙げた。名古屋市政の歴史の1ページには、こうした柔軟な対応の過去もある。

愛される名古屋城への道

当初の予定が大幅に狂い始めた名古屋城天守閣の木造復元計画だが、一方でそれは、時間に追われることなく計画にきちんと取り組むことができる機会でもある。名古屋市民だけでなく、全国そして海外も含めた多くの人から愛される名古屋城天守閣にしてほしい。
そのための時間と思えばいい。
「尾張名古屋は城で持つ」まさに「令和の築城」は大きな節目を迎えている。

【東西南北論説風(112) by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

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