名古屋城が木造天守閣へ動く
【CBCテレビ イッポウ金曜論説室】
名古屋城の木造天守閣復元に向けて、現在の天守への入場が5月7日から禁止されました。木造の新天守閣の完成は4年後の2022年に予定されており、それまで観光客は天守に上ることができなくなりました。入場可能な最終日の6日は大勢の人たちがつめかけ、早朝から長い列ができました。
名古屋城の天守閣の歴史を振り返ってみましょう。天下分け目と言われた関ヶ原の戦いから10年後、江戸幕府の誕生から7年後の1610年、名古屋城は尾張徳川家の居城として築城が始まり、その2年後の1612年に完成しました。
月日は流れ、1930年、城は国から名古屋市に所有が移りました。と同時に天守閣は本丸御殿などと共に、城郭としては初めて国宝に指定されました。
しかし、太平洋戦争中の1945年、天守閣は空襲によって焼失、今の天守閣が再建されたのはその14年後、1959年のことでした。
そして今回、60年近くたった現在のコンクリート天守閣が木造天守閣へと動き出します。
木造復元を進めるにあたっての資料、実は豊富に残されています。
間取りや柱の位置などが詳しく書かれている「金城温古録」、国宝に指定された時に名古屋市が行なった実測調査をまとめた「昭和実測図」、そして700枚を超える「ガラス乾板写真」など、名古屋市によりますとこれだけの資料が残されているのは珍しいということです。
来年2019年6月には今の天守閣周辺が囲われ、現在の姿は見ることができなくなります。そしてその年の9月には本体の取り壊しが始まります。着工は東京五輪が開催される2020年の夏、完成はその2年後の2022年暮れの予定です。
今後の課題は?
一方で課題も残されています。
今回の木造復元の総事業費は505億円、名古屋市は入場料収入と寄付で賄うと話していますが、具体的な内容はまだすべて明らかになっていません。
また現在あるエレベーターを木造天守閣になっても設置するかどうかのバリアフリー問題は、先日ようやく有識者会議ができて検討が始まったばかりです。
そして石垣作りの名手と言われた加藤清正が手がけるなどした貴重な石垣の保全。こちらも細心の注意を払っての工事方法を検討するとしていますが調査には着手しておらず、こうした課題に結論が出ないまま木造復元へ歩んでいくことになります。
名古屋城が熱い!
名古屋城は、ことし3月にオープンした「金シャチ横丁」が観光客の人気を集めており、また来月の6月8日にはついに「本丸御殿」が完成して公開されるなど、今名古屋で注目の観光スポットです。
「尾張名古屋は城で持つ」と言われますが、残された課題がどう決着するのか含めて、木造天守閣復元への今後をしっかり見守っていかねばなりません。