患者の生の声から学ぶ認知症

2021年5月16日(日)放送 【第456回】
患者の生の声から学ぶ認知症

サマリーSummary

ゲンキスチューデント:中村嶺亜
ゲンキリサーチャー:ハマカーン
ドクター:メモリークリニック お茶の水 院長 医学博士 朝田隆
2025年に認知症を発症していると推定される65歳以上の割合は、5人に1人といわれています。また、65歳未満で発症する場合は若年性認知症と呼ばれ40代、50代で起こる事も。誰もが認知症になり得る時代だからこそ、大切なのは早期発見。そこで今回は、早期発見のポイントや認知症との向き合い方を専門医に教えてもらいました。

認知症の基礎知識

・認知症患者の約7割を占める「アルツハイマー型認知症」
認知症にはいくつかの種類があり、そのおよそ7割を占めるのがアルツハイマー型認知症。アミロイド-βと呼ばれるたんぱく質が蓄積する事で脳が萎縮する認知障害です。

・3番目に多い認知症「レビー小体型認知症」
レビー小体型認知症は、アルツハイマー型、脳梗塞や脳出血が原因の脳血管性型に次いで3番目に多い認知症です。レビー小体と呼ばれるたんぱく質が神経細胞に増える事で発症。1976年に日本の医師が発見した認知症です。

・認知症のリスクを上げてしまう原因
先生によると、認知症のリスクを上げる原因には、高血圧や糖尿病などの生活習慣病や難聴などが挙げられるそうです。例えば糖尿病の場合、過剰な血糖により脳内の血管で動脈硬化を引き起こし、血流障害などの影響で認知症のリスクが約2倍高まるといわれているのだとか。また、加齢によって起こる難聴は、人との交流を取りにくくする原因となり脳への刺激が減少。こちらも認知症のリスクが約2倍高まるというデータがあるそうです。

認知症早期発見のポイント①「最近の物事が思い出せない」

誰にでも起こる物忘れですが、ただの物忘れとの違いは、エピソード自体が抜けて落ちてしまう事。例えば、買い物にためにメモを取ったにも関わらず、メモの存在自体を忘れてしまう場合や、約束した内容ではなく、約束した事自体を忘れるような場合は要注意。記憶の中枢である海馬の働きが落ちてしまい、最近の物事が思い出せなくなっている可能性があるそうです。

認知症早期発見のポイント②「今までできていた作業ができなくなる」

作り慣れた料理なのに、やたらと時間がかかってしまったり、手順がわからなくなったりしてしまう場合は、要注意。段取りや要領などを組み立てる前頭葉の働きが低下してしまい、作業を進めるための能力が落ちてしまっている可能性があるそうです。

認知症早期発見のポイント③「居るはずのないものが見える幻視」

レビー小体型認知症の場合、視覚を処理する後頭葉の機能低下が起こりやすく、幻視症状につながる場合があるそうです。医学的に解明されていませんが、一番多いのは子どもが見えるケース。他にも、動物や虫、絵などが見える場合もあるそうです。

認知症早期発見のポイント④「趣味に興味がなくなる、無気力になる」

好きだった趣味に全く興味がなくなる場合や無気力になった場合は要注意。レビー小体型認知症の初期症状として多く見られるので、一度認知症の専門病院でチェックしてみると良いそうです。

認知症早期発見のポイント⑤「家族や周囲が異変に気づく」

認知症の患者さん曰く、認知症になった本人は、自分が認知症かもしれないとは言わないと思うとの事。そのため、家族や親しい人の様子に気を配る事が大切。異変に気づいたら一刻も早く専門医に相談しましょう。

ドクターおすすめ!簡単認知症予防体操

<スリスリトントン体操>
▼右手は太ももなどをスリスリとさする動作、左手はトントンと叩く動作を行う
▼ハイ!という掛け声とともに左右の動作をチェンジする
▼左右の動作チェンジを繰り返す
≪ポイント≫
先生によると、この体操は上手にできなくてもOK!混乱する事が脳への刺激となり、認知症予防が期待できるそうです。そのため、上手くできなくても1日1回5分程度、楽しみながら行いましょう。

認知症の進行を遅らせるためにおすすめの方法

・散歩
散歩には、健康のもととなる脚力を維持し、季節の移り変わりなどを感じる事で脳を刺激。認知症の進行を遅らせる事ができると考えられているそうです。

・人と関わる
人と関わるなかで、人間を築くために考え行動する事が、脳の活性化につながると考えられているそうです。

・音楽活動
仲間との音楽活動は、歌う事と人との呼吸を合わせるという作業を同時に行うため、脳の活性化につながるそうです。

・オンラインゲーム
いつでも手軽にできる上、ゲームをする事によって注意力や記憶力などが刺激されます。ボイスチャットでコミュニケーションを取りながら行うと、脳を活性化させる効果がより高いと考えられるそうです。

認知症の最新治療

現在、認知症の主な治療法は薬によるもの。ただし、症状の緩和までにとどまり根本治療に至るまでの薬はまだ開発できていません。そんななか、東北大学病院では、超音波を用いたアルツハイマー型認知症の治療法が研究されています。

<超音波を当てるだけの認知症治療>
脳に超音波を当てて、血流を改善してくれる一酸化窒素ガス(NO)の発生を促す事で、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイド-βの生成を抑える事につながると考えられるそうです。マウスを使った実験で、アルツハイマー型認知症の進行を抑える効果が認められ、現在ヒトでの治験を行っている最中。5年以内の実用化を目指しているそうです。将来的には認知症の根治へとつながる治療法にしたい、と先生たちの研究は続いています。

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