IGアリーナで大相撲を観た!現地で体感した新スポットの魅力と課題

まさに、この夏のホットスポットだろう。名古屋城の北側にオープンしたIGアリーナ(愛知国際アリーナ)で、“こけら落とし”として大相撲名古屋場所(7月場所)が幕を開けた。幼馴染の友人が希少チケットを入手してくれたおかげで、早々の2日目に新アリーナに駆けつけた。
魅力の新アリーナ誕生
IGアリーナは、収容人数1万7,000人、横浜アリーナに匹敵する国内最大級の施設である。名古屋市北区の名城公園内に建設された。スポーツイベントや音楽ライブなどの開催が予定されるが、2025年(令和7年)大相撲名古屋場所が正式なお披露目の場となった。60年近く場所が開催されてきた愛知県体育館から、新たな会場に移ったことと、新アリーナへの興味、さらに、第75代の横綱に昇進した大の里のお披露目場所とあって、15日間のチケットは事前に完売する人気ぶりだ。
地下鉄アクセスは便利

名古屋市営地下鉄「名城公園」駅に降りた時、ホームの混雑に驚いた。時刻はまだ13時半、大相撲の観戦としては一般的に早い時間だが、客足も早い。ホームから改札口へ、さらにアリーナに向かう4番出口への通路も、明るくきれいに整備されていた。以前はもう少し淋しい印象の駅だったが、それが一新されていた。「名城公園駅から徒歩0分」という案内があったように、地上の4番出口を出たら、そこがIGアリーナの入場口だった。階段に加えエスカレーターも、さらにエレベーターも2基あって、スムーズにたどり着く。愛知県体育館へは、駅から炎天下を汗だくで歩いただけに、アクセスの便利さは感激だった。
アリーナへ入場した!
入場口は大きな階段を上がった2階部分にある。建築家・隈研吾さんがデザインした施設の外観は、たくさんの木を組み合わせた斬新なもので、夏空にそれが勇壮に映えていた。受付には相撲協会の親方が座り、チケットを切る。館内の通路は広い。新会場ということもあって、赤いジャンパーを着たスタッフが大勢配置されていて、席への案内をしてくれる。席に着く前に、まず新施設の館内を探訪した。
館内を探訪してみた
アリーナ部分への出入り口も多く、さらにトイレ施設の数も多い。内部も広く、使い勝手は良かった。手洗い所にペーパータオルが置かれている配慮が嬉しい。相撲グッズの販売は1階のサブアリーナのため、入場した2階から階段を下りて歩く。力士の写真ポスターと共に、サブアリーナへの誘導路が壁に表示されていた。ただ、施設が広い上に、通路などの作りが均一なため、行きと帰りとで使った階段を見間違えてしまった。グッズ販売には、予想通り長蛇の列だった。お目当ての品を選んだ後、会計の窓口まで待つ人の列は途絶えることはなかった。
マス席も広がりゆったりと
席に着く前に、生ビールを購入した。アリーナ内は一律900円だった。飲食店は全部で20店舗あるが、すべてキャッシュレスで現金は使えない。クレジットカードや電子マネーなどで機械によって注文する。戸惑う人の姿もあったが、店舗スタッフの数も多く、使用方法の説明を受けていた。ビールを片手に場内へと向かう。最初の印象は会場の広さだった。前年までの愛知県体育館と同じ7,800席が用意されたが、全体的に縦横に広がって、ゆったりとしていた。今回座ったマス席も前後に幅18センチ、全体で1.3倍に広くなったそうだが、そのおかげで4人が座ってもスペースには以前より余裕があった。上方の椅子席の数は倍増されて、これも新たな会場の魅力だろう。
空調も快適、取り組みは熱戦
席に着いてしばらく後に、十両力士の土俵入りが行われた。この時点で、すでに場内は8割近く埋まっていた。まだ14時台である。観客の出足は相当に早い。館内の空調は快適だった。扇子やハンディファンも持参したが、移動中にかいた汗はすぐに引き、その後は暑さや涼しさをそれぞれ感じることもない館内温度だった。土俵の上に下がっていた「満員御礼」の垂れ幕は、最初の頃、大きく揺れていたので、空調はしっかり稼働しているのであろう。新横綱・大の里を迎えて、豊昇龍と共に、4年ぶりに番付で東西の横綱が揃った場所。両横綱それぞれの土俵入りには大歓声が沸いた。土俵上の熱戦は言うに及ばず、あっという間に18時前の打ち出しを迎えてしまった印象だ。
退場時の導線で迷う

帰りは「規制退場」があるという案内があったが、ドームなどのライブで体験するように「席によって順次」というものではなく、アリーナから外へ出る通路での規制に遭遇した。1階から外に出ると、歩道に沿ってしばらく歩かないと敷地外へは出られない。このため地下鉄を利用しようとするならば、入場した時と同じ2階の大階段を下りる必要があった。臨時のタクシー乗り場は、去年までの愛知県体育館方面に少し歩いた離れたところに設けられ、かつ17時半から19時までは、会場周辺ではタクシーアプリによる配車が停止されていた。階段を下りた先にある地下鉄の出入り口付近では、まもなく投票を迎える参議院選挙の立候補者が、家路を急ぐ人たちに支持を訴えていた。この夏ならではの風景だろう。
歩み出したIGアリーナ。実際に稼働してみての課題も少なくないはずだ。ただ、こうした施設の数が不足していた名古屋にとっては、魅力たっぷりの嬉しい一歩である。アリーナの外に立てられた力士の「のぼり旗」が、夕闇に心地よくはためいていた。
【東西南北論説風(602) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】