「些細なことで怒る」認知症一歩手前かも?…「認知症グレーゾーン」から回復する方法

身近な健康問題とその改善法を、様々なテーマで紹介する番組『健康カプセル!ゲンキの時間』。
メインMCに石丸幹二さん、サブMCは坂下千里子さんです。
ドクターは、医療法人社団 創知会 メモリークリニックお茶の水 理事長・院長 医学博士 朝田隆先生です。
今回のテーマは「〜認知症グレーゾーンからの回復〜経験者から学ぶUターンする方法」
「財布の中が小銭でいっぱい」「食事を出来合いのお惣菜で済ます」「些細なことで怒る」に当てはまる場合は、認知症グレーゾーンの可能性があるそうです。認知症グレーゾーンとは、認知症一歩手前の段階のこと。現在65歳以上の高齢者で6人に1人、約558万人もいると推定されています。その内の約40%が5年以内に本当の認知症になっていくと言われているそうですが、早い段階で気づき治療を始めることで健康な脳に戻れる可能性があるのだとか。そこで今回は、認知症グレーゾーンから回復する方法などを専門医に教えてもらいました。
認知症グレーゾーンの基礎知識

<認知症グレーゾーンとは?>
認知症グレーゾーンは、正式には「軽度認知障害(MCI)」と呼ばれます。認知機能が正常とは言えないものの、日常生活に支障がない状態を指すそうです。
<グレーゾーンの状態ならUターンできる?>
先生によると、グレーゾーンの期間が分かれ道。完全に認知症になると後戻りはできないのだとか。逆にグレーゾーンのうちに気づいて対策すると、健康な脳に戻れる可能性が高まるそうです。
「アルツハイマー型認知症」の初期症状
先生によると認知症にはいくつかの種類があり、最も多いのが「アルツハイマー型認知症」。アミロイド-βと呼ばれるたんぱく質が蓄積することで脳が萎縮し、記憶の中枢である海馬の働きが低下。物忘れが増えてしまうそうです。
<初期症状:記憶力の低下>
うっかり忘れることは誰にでもありますが、気をつけようと思ったことを繰り返し忘れてしまうのはアルツハイマー型認知症の入口でよく見られる症状だそうです。
「レビー小体型認知症」の初期症状
アルツハイマー型、脳血管性型に続いて3番目に多い認知症が「レビー小体型認知症」。レビー小体と呼ばれる異常なたんぱく質の塊が神経細胞に増えることで発症。視覚を処理する後頭葉の機能低下が起こりやすく、幻視症状に繋がりやすいそうです。
<初期症状:幻視>
幻視とは、実際には存在していない物が見える症状のこと。幻視で一般的なのは、子どもの姿だそうですが、人によって異なるのだとか。進行すると物忘れが起こる場合もありますが、初期症状では記憶障害が目立たないのもレビー小体型認知症の特徴だそうです。
認知症の初期症状「無気力症状」
アルツハイマー型、レビー小体型などに共通した認知症の初期症状の1つが「無気力症状」。集中力や感情などを司る前頭葉の機能低下が原因だそうです。料理を作ることやお会計の際に小銭を出すのが面倒になる人も多いのだとか。60歳以上で、今まで熱心だったことや趣味に対して関心がなくなったり、面倒くさいと言い出したりした場合は要注意だそうです。
認知症グレーゾーンからの回復

<Uターンする方法(1)運動>
先生によると、大切なのは運動。有酸素運動・筋トレ・バランス運動などによって、人間は、身体を動かすことで脳が刺激されるそうです。
<運動が認知症改善に良いメカニズムとは?>
人は身体を動かす際、脳の指令が運動神経を通して筋肉に伝えられます。そして、筋肉が動くとその刺激が感覚神経を通して脳へと送り返されます。しかし、認知症グレーゾーンの人はこの感覚神経が衰えていることが多いそうです。感覚神経が衰えていると、例えば筋トレをしても筋肉に疲れや痛みを感じないということもあるのだとか。この状態を放っておくと、脳の衰えが進んでしまいます。逆に、運動をすることは、感覚神経を回復させ、認知機能の上昇につながるそうです。
<感覚神経を回復させるトレーニング>
※無理のない範囲で行いましょう
▼椅子に座り片足をまっすぐ伸ばす
▼伸ばした片足を上げられる所まで上げる
<ポイント>
ポイントは、足を上げた時の筋肉の痛みを意識して行うことだそうです。目安は10回を1セット。痛みを感じなければ週3回は行い、感覚神経を回復させましょう。
<Uターンする方法(2)食事>
食事は魚中心、なかでも青魚がおすすめ。青魚に含まれる「DHA」は、体内で合成できない不飽和脂肪酸の1つで、脳の健康を維持するのに良いそうです。
<認知症予防に効果がある食材>
最近、認知症予防に効果があると判明した食材が「カマンベールチーズ」。グレーゾーンの人が食べると「BDNF」という栄養因子が増加したことで急遽注目されているのだとか。「BDNF」とは、脳の中にある神経細胞の成長や維持などを促進させる脳由来の神経栄養因子。軽度認知障害と判断された高齢女性71人が、カマンベールチーズを1日2ピース、3か月間食べた場合、他のチーズと比べて血中BDNF濃度が高くなったというデータがあり、記憶や学習などの効率が良くなる可能性があるそうです。
<感情を豊かにすることも大切>
ワクワクやトキメキなど感情を刺激することは、認知機能向上に大いに役立つそうです。先生おすすめの方法の1つが料理。料理は前頭葉を使う作業で2つ以上のことを同時に進めるとても優れた脳トレなのだとか。さらに、先生のおすすめが人とのコミュニケーション。話を耳で聞いて、脳で理解し、適切な返事を考え、声に出して伝える必要があるため、かなりの脳トレになるそうです。他にも、恋愛ドラマを観て感情移入したり、推しタレントを作って応援したりするのも良いとのこと。認知症予防のためにも新しいことに挑戦し、楽しんで生活しましょう。
家族が認知症に!?病院で受診させる方法
先生によると、家族や周りの人が認知症だと思っても、本人が認知症と認めたくないケースは多いそうです。そういう時に病院を受診させるには、配偶者やパートナーが「自分の認知機能が心配だから」と病院に誘うと良いのだとか。ついでにという理由で一緒に受診して医者に診てもらうようにするときっかけが作りやすいそうです。
認知症に効果的な新薬「レカネマブ」「ドナネマブ」
2023年12月に「レカネマブ」、2024年11月に「ドナネマブ」が新薬として認証されました。点滴で接種し、アルツハイマー型認知症の原因と言われるアミロイド-βに直接働きかけるこの2つの薬は、認知症治療に新たな可能性が生まれたと注目されているそうです。
<2つの薬の違いは?>
「レカネマブ」は、塊になる前の毒性の強い小さなアミロイド-βを除去します。一方、「ドナネマブ」は塊になったアミロイド-βを標的に除去。どちらの薬も、認知症の進行を、7〜8ヶ月ほど遅らせる効果が期待できるそうです。
<新薬の注意点>
先生によると、2つの新薬を使用できるのは、アルツハイマー型認知症のグレーゾーンから軽度の人のみ。そのため、認知症グレーゾーンにいち早く気づき、おかしいなと思ったらすぐに病院へ行くことが大切だそうです(※精神科や心療内科などで受診できます)。
(2025年4月27日(日)放送 CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』より)
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