石垣よ、新天地で“細川”になれ!ドラゴンズの現役ドラフトへファンの思い
竜の好漢に、旅立ちの時がやって来た。プロ野球の現役ドラフトが行われ、中日ドラゴンズ8年目の内野手、26歳の石垣雅海が、千葉ロッテマリーンズへ移籍することになった。愛嬌のある笑顔、繰り出すダジャレ、思い切りのいいバッティング。ドラゴンズファンに愛されたキャラクターだった。(敬称略)
フルスイングに期待高まる
石垣は、2016年(平成28年)ドラフト3位で、山形県酒田南高校から入団した。森繁和監督の時代で、「打てる内野手」として大きな期待を背負った。入団2年目の2018年7月、青森県で開催されたフレッシュオールスターゲームでの豪快な一発が忘れられない。フルスイングから放たれた打球は、バックスクリーンに飛び込んだ。「竜の石垣ここにあり!」と全国にアピール、この試合のMVPを獲得した。ドラゴンズでは宇野勝さん以来の“豪打の内野手”誕生を予感させた。
石垣にとっての8年間
しかし、なかなか1軍には定着できなかった。「もっとチャンスを与えて、どんどん起用してほしい」と願うファンの声も多かった中、ドラゴンズでの8年間、森繁和、与田剛、そして立浪和義と、3人の監督がチームを率いながらも十分な活躍ができなかったのは、やはり石垣本人に足りない部分があったのだろう。昨今は打撃だけでなく、守備の成長が著しかった。今回の現役ドラフトが、石垣本人がステップアップする好機になることを願う。
サイドスローの24歳
ドラゴンズに仲間入りするのは、東北楽天ゴールデンイーグルスの投手である伊藤茉央(まお)である。福島県喜多方市出身の24歳、2022年ドラフト4位でイーグルスに入団した。その時の担当スカウトが、かつてドラゴンズで好守の外野手として活躍した益田大介さんだったということも、何やら縁深い。
サイドスローから繰り出すストレートとシンカーが武器の投手であり、1年前に現役ドラフトで移籍してきた梅野雄吾に続き、中継ぎとしての期待が高まる。大学卒の2年目なので、プロとしてはまだまだ初々しい。「投手王国」と言われてきたドラゴンズだが、その看板も“薄氷”の上に立つほど、今は投手がほしい。立浪監督時代に内野手を多く獲得してきたチーム事情からも、「内野手を出して投手を取る」という今回の戦略は、理にかなったものだった。
“模範生”細川は2年連続の活躍
ドラゴンズファンにとって「現役ドラフト」という言葉に、どこか好感を持てるのは、細川成也のおかげである。第1回の現役ドラフトで、横浜DeNAベイスターズから移籍すると1年目から140試合に出場して、ホームラン24本、打点78を挙げる大活躍。2年目の2024年シーズンは全試合に出場して、夏場を中心に4番に座り続けた。
所属チームでの出場機会に恵まれない選手に活躍の場を、という目的をまさに具現化し、阪神タイガースの投手・大竹耕太郎と共に“現役ドラフトの模範生”と言われる。それがファンとしては心地よい。
鈴木博は新天地で頑張った
戦力外通告や相手が決まっているトレードとは少し違って、現役ドラフトでチームを離れた選手の“その後”は、どこか気になる複雑な心境だ。細川が入団した現役ドラフトで、ドラゴンズを離れた笠原祥太郎投手は、残念ながら思うような活躍ができなかったが、オリックス・バファローズに移籍した鈴木博志は、1年目の2024年シーズン、32試合に登板し貴重な中継ぎとして活躍した。ドラゴンズ時代にピンチを背負うと見せた弱気な表情も影を潜めた。来季は登録名を「博志」に替えて、パ・リーグでの2年目に向かう。
初めての2巡目指名もあり、合わせて13人の選手が移籍することになった2024年の現役ドラフト。来季のセ・パ交流戦、ドラゴンズはマリーンズと、名古屋の本拠地バンテリンドームで戦う。相手のスタメン内野手に石垣の姿があり、打席ではマウンドに立った伊藤が見事に石垣を抑える。竜党としては、早くもそんな夢を見てしまう。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。CBCラジオ『ドラ魂キング』『#プラス!』出演中。