“交差点の番人”信号機の日本での大進化、LED登場で省エネと長寿も実現!

“交差点の番人”信号機の日本での大進化、LED登場で省エネと長寿も実現!

ライトが点灯する世界で最初の「信号機」は、19世紀半ばに英国ロンドンで登場した。車ではなく、馬車の交通整理のためだったというから、いかにも時代を映し出している。ロンドンの名物“ガス灯”と同じように、燃料にはガスを使い、赤と緑の2色だったが、まもなくガス爆発を起こして退場したと言う。20世紀に入って、今度は米国で、電気を使った信号機が作られ、現在に通じる3色になったと記録されている。

そんな道路用の「信号機」が日本にやって来たのは、関東大震災(1923年)の後だった。大きな被害を受けた東京の町を復興していく中で、米国から「自動式信号機」が輸入された。日本で最初の信号機は、1930年(昭和5年)に東京の日比谷交差点に設置された。それは縦型で、上から、赤・黄・緑と3色が並んだ。翌年には銀座などにも設置され、10年後には東京都内の信号機は370基にも増えて、同じように日本全国に広がっていった。

CBCテレビ:画像『写真AC』より「押しボタン」

米国からやって来た「信号機」は、ニッポン独自の開発によって進化していく。1934年(昭和9年)には「押しボタン式信号機」が登場した。横断する人が少ない交差点では車を優先させるために、道路を渡る人がボタンを押して信号を切り替えるシステムが導入された。1955年(昭和30年)には「音響信号機」が登場。目の不自由な人も横断歩道を安心して渡ることができるように、青信号では音が鳴るが、最近は、夜間の騒音問題が指摘されるようにもなってしまった。そして1963年(昭和38年)には、信号待ちの車を自動的に感知する「感応式信号機」が登場した。いかにもクルマ社会の日本ならではのアイデアだった。大阪で最初の万博が開催された1970年(昭和45年)は、交通死者数が1万6000人を超えて「交通戦争」とまで呼ばれる社会問題になり、信号機の整備にもさらに拍車がかかった。

「LED式信号機」提供:CBCテレビ

時代が平成になって登場したのは「LED(発光ダイオード)式信号機」。1994年に愛知県と徳島県に全国で初めて設置された。スリムで、ライトの上の“ひさし”がない。しかし太陽の逆光に強く、光のムラもなく見やすい。ライトの寿命も従来の電球が6か月から1年だったが、LEDは6年から8年と長くなった。最近はさらに小型で薄型の信号機が主流で、電灯部分の直径も5センチ小さくなり25センチになった。強い風を受けにくく、台風などの災害にも強い。交通信号機は全国に20万基ほどあるが、その6割がLED式に切り替わっている。

交差点に近づくまで色が分からない信号機があることにお気づきだろうか?直線の道路で次の信号機の色まで見えてしまうと、青か赤か、手前の信号をつい見落としてしまう恐れがあり、それを防ぐため。また、直前まで色が分からないことによって、運転している人が「青だろうか?赤だろうか?」と注意しながら慎重に運転するため。こんな狙いから、ライト部分にスリットを付けた工夫である。交通事故を防ぐための、いかにも日本的な細やかな発想と言えそうだ。

CBCテレビ:画像『写真AC』より「雪国の信号機」

ところで、信号機の形を横型にしたのも日本独自のアイデアである。最初に米国から持ち込まれた信号機は縦型だったが、やがて京都市の交差点に横型の信号機が設置された。全国有数の観光地である京都は、道路標識、看板、そして街路樹も多かったため、縦型の場合、一番上の赤信号が見づらかった。そのために3色を横並びにしたのだが、その後、この横型が日本全国の主流になった。しかし雪が多い地方では、横型だと雪が積もる面積が広いため、ライトが雪で隠れてしまったり、雪の重さで支柱が折れてしまったりする問題も起きた。このため、今でも縦型が採用されているという地域事情もある。

交通死亡事故の6割ほどが「交差点とその周辺」で起きていて、原因としての「信号無視」は後を絶たない。「あせってる 今があなたの 赤信号」。こんな交通標語もあるように、信号機は、交通整理をしながら人々の命を守っている。「信号機はじめて物語」のページには、日本の文化の歩み、その確かな1ページが“安全運転という名の青信号で”しっかりと刻まれている。
          
【東西南北論説風(384)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』内のコーナー「北辻利寿の日本はじめて物語」(毎週水曜日)で紹介したテーマをコラムとして執筆しました。

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