日本の「伝統的酒造り」が無形文化遺産に登録予定。その背景にある危機
国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、日本酒や本格焼酎などの「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録するよう勧告しました。文化庁が5日に発表したもので、来月2日から7日にパラグアイで開かれるユネスコ政府間委員会で正式に決定される見通しで、登録されれば国内で23件目となります。11月27日放送『CBCラジオ #プラス!』では、ジャーナリストの北辻利寿さんが無形文化遺産とは何か、伝統的酒造りに関する評価のポイントなどについて解説しました。聞き手は永岡歩アナウンサーと三浦優奈です。
関連リンク
この記事をradiko(ラジコ)で聴く無形文化遺産とは?
無形文化遺産とは、工芸技術やお祭り行事など多岐にわたりますが、その土地の文化や風習と深く関わっている、形のない文化が対象となります。
時代とともに衰退したり消滅してしまうため、2006年に保護を目的として登録が始まりました。
毎年各国から1件ずつ申請をもらい、60件ほどを対象にして審査を行ない登録されます。
昨年までに140か国730件が登録され、その中にはスペインのフラメンコやインドのヨガ、イタリア・シチリア島の人形劇、シンガポールの屋台、フィンランドのサウナ文化などがあります。
日本で最初に登録されたのが2008年の人形浄瑠璃文楽・歌舞伎で、2010年には茨城県の結城紬、2011年に広島・壬生の花田植という賑やかな田植え行事が登録されました。
また、2013年に和食が登録されたことも話題となりました。
東海地方では高山祭の屋台行事や古川祭の起し太鼓、尾張津島天王祭の車楽舟行事が無形文化遺産に登録されています。
選ばれた理由
そして今回、登録される見込みとされているのがの本の伝統的酒造り。
カビの一種である麹菌を使って米などの原料を発酵させる日本古来の酒造技術によって、日本酒や本格焼酎、泡盛が製造されています。
また、もち米と焼酎を使った本みりんも対象となります。
この日本の伝統的な酒造技術は、世界でも独自の製法と評価されています。
例えば日本酒については3段階の工程があります。
そのひとつ目は米などの原料を蒸して処理をすること。
ふたつ目は蒸した米に麹菌を繁殖させて、杜氏と呼ばれる職人が高度な技術で温度や湿度の調節などをすることで風味を出していること。
そして3つ目は発酵。
米などに含まれるでんぷんを麹菌の働きで糖に変え、さらに酵母を加えてアルコールに発酵させる、という2つの作業を1つの容器で同時に進めるというのが独自の方法ということです。
こうした酒造りは個人、地域、国と3つのレベルで伝承されているという文化です。
さらに神事、冠婚葬祭と密接に関係があるという点で、地域の人々の結束を固め、風習と強く結びついていることも無形文化遺産の評価の対象となっているとのことです。
日本酒の復興なるか
先にも書いたように、無形文化遺産は保護のために登録されるものです。
今なお日本酒には人気はありますが、伝統的な酒造りの技術は衰退や消滅の危機にあるということです。
50年目と比べて、国内の出荷量は4分の1にまで落ち込み、杜氏の人数も最盛期の5分の1ほどにまで減っており、技の伝承が難しくなってきているのは事実です。
今回の無形文化遺産の登録をきっかけに、国内の需要が増えたり、インバウンドや輸出により再度注目を集めると、また復興できるのかもしれません。
(岡本)