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焼肉店そして洋菓子店が過去最多の倒産、飲食店に何が起きているのか?

焼肉店そして洋菓子店が過去最多の倒産、飲食店に何が起きているのか?
CBCテレビ:画像『写真AC』より「ホルモン炭火焼き」

松阪牛の本場で食べるホルモン焼きは至極の味だった。焼き方は、もちろん七輪の炭火焼き。「松阪牛」というブランド牛のモツだから、味は保証済みである。モウモウと立ち込める煙の中で、ジュウジュウと焼けるホルモンを食べるために、わざわざ電車に乗って三重県松阪市まで通うだけの価値はあった。しかし、そんな行きつけの焼肉店が、店を閉めてしまった。

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過去最多の倒産件数

焼肉店の倒産が増えている。民間の調査会社である帝国データバンクが、2025年(令和7年)4月に発表した速報値によると、2024年度の1年間で倒産した焼肉店は55件に及んだ。前の年は27件だったので、その数は倍増である。そして、これは過去最多だと言う。調査対象は負債1,000万円以上の店のため、規模が小さな個人営業店などを加えれば、55件どころではない焼肉店が店を閉めたと見られるとのことだ。

輸入牛肉も野菜も高騰

松阪市で食べる牛肉は別として、帝国データバンクによれば、円安による輸入牛肉の値上げ、さらに“貴重な脇役”である野菜の高騰が、真っ先に理由として挙がる。輸入牛肉の内、比較的適正な価格だったアメリカ産の牛肉も高くなった。野菜はキャベツを筆頭に、この半年間は値上がりし続けた。さらに人件費、そして光熱費の値上がりもあり、店を維持運営していくハードルが一気に高まったと言える。

他方、食べ放題メニューを中心に展開するチェーンの焼肉店は人気を維持していて、倒産していくのは変革に着手できない、小規模な焼肉店であるようだ。帝国データバンクでは「倒産は2025年度も高水準での推移が続く可能性がある」と分析している。

飲食店全体もピンチ

CBCテレビ:画像『写真AC』より「飲食店でビールを注ぐ店員」

こうした焼肉店も含む飲食店全体の倒産件数が増えている。2024年度は、前の年から16%余りも増えて、こちらも「過去最多を記録した」と帝国データバンクが発表した。2024年度は894件が倒産し、これは新型コロナ禍の2020年の件数を上回っているというから深刻だ。倒産で最も多いのは「酒場・ビヤホール」、次いで「中華料理店や東洋料理店」となっている。韓国風の焼肉店も含まれている。

新型コロナ禍の後遺症

理由としては、新型コロナ禍の後遺症が挙げられる。融資や支援策がコロナ禍の後半である2023年頃に終わって、経営の負担という問題に直面せざるを得なかったのだろう。食材の高騰、人件費の高騰、そして店を運営する光熱費の高騰と、小さい店であればあるほど数々の“高騰との向き合い”に苦戦を強いられた。「より一層の節約」と言っても限度があることは現実であろう。

ケーキ店にも厳しい風

CBCテレビ:画像『写真AC』より「洋菓子店のショーケース」

さらに驚いたのは、洋菓子店の倒産も急増しているという調査結果だった。数年前までは、コンビニエンスストアが繰り出す安価で美味しいスイーツの影響によって、店を閉める街の洋菓子店もあったが、それを乗り越えた今、新たな危機が訪れている。輸入に頼る小麦粉、鳥インフルエンザなどの影響を受ける鶏卵、カカオ不足で産地も嘆くチョコレート、ケーキに欠かせない砂糖やバター、これらすべての原価が高騰していることによる経営困難と言える。コストがかかる分をそのままケーキ代に反映させるわけにもいかない。ぎりぎりの凌ぎ合いの中で、店を閉めざるを得なくなるのだ。2024年度は51件、前の年から1.6倍に増えて、こちらも過去最多となった。

家族や友人と出かける外食は楽しい。日常の食生活の中での“ひとときの潤い”でもある。しかし、そんな外食産業を襲っている“複合要因”的な物価高。帝国データバンクでは、洋菓子店についても「倒産の増加は続く可能性がある」と分析している。昨今の値上げ尽くしで、家庭の台所事情は厳しいが、そんな中“ひと息つこう”という外食の楽しみにも、ますます厳しい風が吹き続けている。

【東西南北論説風(575)  by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

<参考>株式会社帝国データバンク:「焼肉店」の倒産動向(2024年度、速報)など

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